-第46話-
結奈は俺と安芸さんが仲良くし始めた時に不安そうな顔を浮かべていた。
あの時はなんでこんな表情をしていたのか分からなかったけど、今ならわかる気がする。
あれは俺が安芸さんと仲良くすることで結奈の元から離れていってしまうのではないかと心配したのではないかと。
結奈と俺は昔から一緒にいることが多かったから、尚更俺が離れていくと考えたらショックが大きかったはずだ。
そうなると1番の前半部分の生きる希望を見いだせていない所は結奈の小学校時代を、次の部分は俺が遊びに誘ったりしたところを、2番は中学からの結奈の現状を、そこから先は俺が結奈から安芸さんの所へと行ってしまうのではないかという不安と重ねることが出来るはずだ。
ただの推論だが、それにしては弁が立ちすぎている。
結奈に確認してみるしか道はないのか......。
これで結奈に話に行って全く違かったらただの痛いやつになってしまう。
結奈との今の気まずい空気がずっとそのままになってしまう可能性だってあるはずだ。
でも結奈が本当にこの推測通りに辛くなっているのだとしたら兄として助けてあげたいという感情が働くのは自然の摂理だ。
ええい――どうにでもなれ。と俺は意を決してベッドから飛び降り、
自分の部屋のドアを勢いよく開けた。
そのまま家の中の短い廊下を早足で歩んでいく。
結奈の部屋に着いてしまった。同じ家に住んでいて同じ階に部屋があるのだから当たり前の話なのだが、俺の中で一世一代の話をするとなると気が重くなってしまうのも事実だ。
――でもせっかく来たんだ。話さなくてどうする。
「結奈ちょっといいか」
俺は自分の中で今にも爆発しそうな引き返したいという男らしさの欠けらも無い感情を必死に抑えながら、結奈の部屋の扉をゆっくり3度叩きながら言った。
「お兄ちゃん......何か用?」
10秒程だったのだろうか。
緊張で誇張しているだけかもしれないが、確かにしばらく間が空いた後、結奈からいつも通りのトーンで返事がきた。
「いや、ちょっと思ったことがあってな」
「中......入って」
「ああ、失礼するな」
結奈のボソッとした返事をしっかり聞き取った俺はゆっくりとドアを開けて中に1歩踏み込んだ。
「結奈今日は楽しかったか?」
「まあ、うん。その話さっきもしたよね」
結奈は俺に隣に座るように目線で促してくる。
まずは適当に話を合わせようとしたのだが、バッサリと切られてしまった。
「それで、どうしたの?」
「ああ.......」
結奈は早く本題を切り出せと言わんばかりに迫ってくる。
「結奈......ごめんな。俺の配慮が足りなかった」
俺の話を聞いた結奈は意外そうに目をぱちぱちさせている。
「俺は結奈の元から離れたりしないからな」
少し臭い台詞だが俺は尻込みすることなく真っ直ぐに言った。
「え?」
結奈は不思議そうに俺の目をずっと見つめてくる。
「ほら、俺はずっと結奈の味方なんだよ」
俺の言葉の意味が分からないのかと思い、俺はもう一度言い直した。




