-第42話-
「ほら、山口くん出番ですよ」
「あ、ほんとうだ」
結奈との話にすっかり夢中になっていて、自分のパートを歌うのを忘れていた。
梨花さんから促されるように俺は机に置いていたマイクを持ち、歌い始めた。
歌上手い訳では無いからここまでみんなの流れに乗って歌うのは少し恥ずかしさを覚える。
俺はそのまま自分のパートを頑張って歌いきり、梨花さんにバトンを繋いだり、一緒にハモらせて歌ったりとデュエットと呼べる程度のことはしたと言えるだろう。
「お兄ちゃん次一緒に歌おうよー」
俺が歌い終わったことを確認した結奈は安芸さんの隣からすかさず俺の方へと向かってきて、誘いの言葉をかけてきた。
俺はそんな連戦するようなやる気も元気もないから出来ることなら避けたいところである。
「山口くんお疲れ様。結奈ちゃん一緒に歌わない?」
そんな結奈に対し安芸さんは俺へ労いの言葉をかけた上で、結奈を俺と梨花さんがやったようにデュエットに誘っていた。
「いいですね。やりましょ」
結奈は少し嫌そうな顔を浮かべていたが、すぐに天使様フェイスのような可愛い笑顔を浮かべ安芸さんの要求に応えた。
「よし、じゃあ結奈ちゃん曲決めていいよ」
「はーい安芸先輩」
結奈は安芸さんの方へ呼ばれたため帰って行った。
安芸さんがすっかり結奈を手元に置いときたいと思っているのが伝わってくる。
結奈はよくできた妹だけど庇護欲が働くのはよく分かる。
「山口くんさっきは付き合わせちゃってすみません」
結奈が居なくなったのを見計らってか梨花さんが俺の方へ近づいてきた。
「隣いいですか?」
「ああ、構わないぞ。さっきのも全然な」
「そうですかりなら良かったです。やっぱり慣れてないので頼っちゃって」
梨花さんは申し訳なさそうに顔を俯けながらそっと呟いた。
「俺も正直1人で歌うのもなんだったし助かったぞ」
「あはは、そうですか。優しいですね。」
梨花さんは苦笑いのようなかわいた笑顔を浮かべながら言った。
困っときはお互い様だと思うんだけどな。
「お兄ちゃんちゃんと私の歌聞いててよ」
「そうですよ。山口くん」
梨花さんとの話に花が咲いていたようなところで結奈や安芸さんが注意してくる。
確かにわざわざカラオケきたのに人の歌っている所を聞かないのは失礼なのかもしれない。
「ああ、ごめん。梨花さん、まあさっきは俺も助かったから」
「ああ、はい」
「ほら、2人の聞こうよ」
俺は結奈たちの視線が痛かったので梨花さんを元の所へ早く戻るように促した。
梨花さんがどこか名残惜しそうにしていたが、俺には理由は分からなかった。
「ふう、結奈ちゃん上手だったよ」
「安芸先輩こそさすがですね」
その後俺らは静かに2人の曲を聞いた。
歌い終わった後の二人を見たらまるで共闘したライバルのようにお互いを褒めあっていた。
2人とも上手いのだから当然といえば当然だが。




