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-第38話-パシリ

「急に俺と取りに行こうなんてどうしたんだ?」


「別に?私一人じゃコップ5個も持てないってだけだよ」


姫芽さんはエレベーターへ続く廊下を俺の少し前を歩きながら言った。


「それにしても1階にしかサーバーないなんて酷いね」


「まあ、そんなもんだろ」


8階建てのビルの中で1階にしかドリンクバーが無いのは確かにケチくさいとも言える。


8階の人とか毎回1階に降りなきゃ行けないもんな。大変だ。


「みんな何飲むかな?」


「そう言えば聞いてくるの忘れたな。結奈はカルピスとか入れとけばいいと思う」


突然姫芽さんに呼び出されて戸惑っていたためか忘れていた。


この10種類くらいある飲み物の中から個々の好きな最適解を当てていくのは不可能に等しいだろう。


「さすが兄妹だね。2人は適当にジンジャーエールでも入れとけばいいかな」


姫芽さんは慣れた手つきでコップに飲み物を次々と注いでいく。


「そうだ。山口くん、お嬢様と次行く時はジンジャーエール入れてあげてね。覚えといてね」


恐らく俺が安芸さんを幸せにするために必要だと思ったのだろう。


姫芽さんが付け加えるように言ってきた。


そんな飲み物ひとつで幸せになるほど人間は単純な生き物じゃないと思うんだけどな。


まあ地雷を踏まないようにという意味では非常に助かる言葉だろう。


「ほら、このふたつ持って。私はこっち持ってくから」


姫芽さんからカルピスとジンジャーエールの入ったコップを目線で指された。姫芽さんか少し大変そうにコップふたつを両手に持って、余った指で3つ目を支えている。


「ああ、もう一個持とうか?」


「いや大丈夫だよ。それより早く行こうよ」


すぐに断られてしまった。


姫芽さんもすぐにカラオケに戻って混じりたのだろう。


姫芽さんがあの3人の中だったらいちばん普通の女子高生って感じだし、カラオケとかも好きなんだろう。


俺らは行きと同じようにエレベーターに乗り込み4階のボタンを押した。


「ねえ、山口くん。結奈ちゃんと仲良いの?」


姫芽さんは突然聞いてきた。


俺と結奈か......。


仲がいいといえばいいのだが、別に普通の兄妹という範疇を超えている訳では無い。


「どうなんだろうな。俺は仲はいいと思うよ」


「そうなんだ......。うん......」


姫芽さんは一気に顔を暗くした。


なんだろう。


「あ、着いたね!」


エレベーターはいつの間にか4階を示していた。

姫芽さんは早足気味に先に部屋に帰っていた。


あれだけ早く歩きながら3個のコップの中身を零さないのは流石といったところだろう。

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