-第35話-問い詰め
「あ! 山口くんおかえり」
結奈が機嫌を治してくれたので、俺は後ろに着いて行きカフェへ戻った。結奈はすっかり元気を戻してくれたみたいで、俺の隣に並んでニコニコしているが、彼女の疑問はまだ解決されていないはずだ。だから結奈に安心して貰うためにも安芸さんとの関係を説明しなければならないが、どう説けばいいのだろうか。
「ああ、突然飛び出して悪かったな」
「すみませんでした」
結奈も隣でぺこりと頭を下げる。
「ううん、事情があったなら仕方ないよ」
さすがは天使様だ。俺たちから呼び出しておいて10秒もせずに居なくなったのにもかかわらず、全く責める素振りを見せない。
俺と結奈は椅子に腰掛けた。すると結奈が何か言いたげに、小刻みに震えていた。
「あ、あの安芸先輩......」
「どうしたのって、まだ名前聞いてなかったね。私は安芸美玲って言うんだけどあなたはなんて言うの?」
「はい。もちろん知ってます。私は山口結奈です」
「結奈ちゃんね。で何か言いたいことがあったみたいだけど、どうしたの?」
「まず、なんでお兄ちゃんと仲良くしてるんですか......?うちの兄はハッキリ言って社交的でも異性から好かれるタイプでもないのに、学校で大人気の安芸先輩が気にかけてるっておかしくないですか?」
おい......。我が妹よ......さすがのお兄ちゃんも今のは傷ついたぞ。モテないはまだ許容できるが、社交的じゃないはちょっと酷くないか......。ちょっと友達作らないようにしてるだけなのに。
「うーん、そうだなー。色々と事情はあるけど、簡潔に言えば山口くんが優しいからかな」
安芸さんが少し照れくさそうにしながら結奈に説明した。なんだか凄く褒められているような気がする。実際は(なんの取り柄もない俺がせめて人の役に立つことをしようとした結果、それが安芸さんに認知され)優しい(と勘違いされて安芸さんから幸せにしてとお願いされた)からとなる訳 わけなんだけどな。
「それはお兄ちゃんが遂に甲斐性を見せたということですか?」
「全然ちが......」
「まあそんなところかな」
安芸さんは満面の笑みで結奈の言葉を肯定する。いや、まず俺と安芸さんは友達とか恋人とかそういう関係じゃないから甲斐性とか関係ないよな......。
「それでね山口くんが私を楽しませてくれてるの。何の対価もなしにね。ほら優しいでしょ」
安芸さんは嬉しそうに結奈に語っている。確かに自分で言うのもなんだが「私を幸せにしてね」という無茶ぶりにも思えるお願いを聞いた俺は優しいと思える。
「なるほど。それでお兄ちゃんと学校で合わないのはなんでなんですか?友達ではないと?」
「それは......」
安芸さんは顔を暗くさせた。それはなにか答えたくないものがあるような表情だ。俺と学校でつるむと勘違いされるから、学校では関わってないと言えばいいだけの話なのに、こんな顔をされると裏があるのではないかとさえ思ってしまう。
「安芸さんってほら令嬢だろ?だから俺と絡んで勘違いされると色々と困るんだよ」
「なるほどね。お兄ちゃんはそれでいいの?」
「ああ、ほら俺時々老人ホーム行ってるだろ。そんな感じでやってるんだよ」
「お兄ちゃんがいいなら全然いいけどね。安芸先輩もう1回聞きますけど、お兄ちゃんと友達ではないんですよね?」
結奈はもう一度警戒するように安芸さんに尋ねた。俺が安芸さんと関わっている理由は納得してくれたみたいだ。
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