-第34話-仲直り
「だってね......」
結奈は1度言葉を止め深呼吸を挟んでから続きを始める。
結奈の瞳は凄く悲しそうだが、気が荒ぶっていたり安芸さんに対してヘイトが向いているということでは無いことは重々と感じられた。
「だって安芸先輩って可愛いし、成績もいいし人気者だし......。だから、私に勝ち目なんて......ね」
安芸さんと比べたらやや見劣りするものの、結奈も可愛いしスペックも高いと思う。
でも今結奈にかける言葉はそれではないと自信を持って言える。
今は結奈の話を待つ時間だ。
「いや、違うか。こんなことで気づいて欲しいわけじゃないからね」
「うん。なんでもない。それよりお兄ちゃん、なんで昨日は嘘ついたの?」
結奈はすぐに自己解決したかのように声色を戻した。
しかし俺が嘘をついていたことに気づいたためがすぐに鬼の剣幕となり、俺に詰め寄ってくる。ああ、なんて言えばいいのだろう。
俺は優しい嘘だと思っていたが、結果として結奈を傷つけてしまった。
結局俺は目先のことしか考えていなかったんだな......。
はぐらかしても結奈は許してくれないだろうし、ここは結奈の優しさにすがるしかないだろう。
「ほら、結奈が辛そうだったからさ......」
「え?」
結奈は俺の言葉に驚いたのか素っ頓狂な声をあげた。
「私のため......?」
ごめんな......結奈。お前は優しいからこういえば許してくれると思っていたんだ。
お前の優しさに漬け込んで本当にダメなお兄ちゃんだな。
「ああ、昨日安芸さんかどうか聞いてきた時の表情は見るに絶えなかったんだ。本当にごめん」
「そうなんだ......。そっか......」
結奈は切なそうに呟いている。
「お兄ちゃんは私のことをそんなに見てたの?」
結奈はまじまじと俺のことを見つめてきた。
なんだろう......この気持ち。
攻められている気はしないが何か違和感を覚える。
でもここは結奈の機嫌を取る事が第1優先だ。
「ああ、もちろん」
「そっか。そんな表情の変化にまで気づいてくれるくらい見てたんだね......」
結奈は何故か顔を赤く染めながら近づいてくる。
「私ね......。お兄ちゃんが誰かに取られちゃうんじゃないかって心配だったの......。でも、大丈夫そうだね」
結奈の顔が俺の胸元に迫ってくる。
俺は咄嗟に1歩引いたが、間髪開けずに結奈が腕を伸ばして俺を引き寄せてくる。
「安心していいんだよね」
結奈がホッとしたように抱きついてくる。
傍から見たらただのカップルのように見えるだろう。でも、俺らは兄妹だ。
もちろん恋愛感情なんて無いしちょっと仲が良いだけ。
でも結奈の温かさはどこか寂しそうで俺を必要としているようで心地よかった。
結奈の味方でいたいと思えるものだった。
結奈はすぐに恥ずかしがるように俺から離れていった。
一瞬の迷いだったと思ってと頭をかきながら伝えてくる。
「さあ、お兄ちゃん! 戻ろっか、安芸先輩たちのこと私も気になるしね」
「ああ、そうだな。深い関係じゃないけど結奈を不安にさせるような人じゃないってことだけでもわかって欲しいからな」
結奈はさっきまでの雰囲気とは打って変わって、好奇心旺盛な少女のように俺を置いて廊下を早々と歩いて行くのだった。
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