-第34話-カフェ
「まだ来てないのかな?」
「多分ね。いつも時間ずらしてるから」
「え? なんで?」
「ほら、同じくらいの時間に着くとそもそも行く途中でドッキングするだろ」
俺たちは目的地であるカフェに入ろうとしていた。
俺の言葉を聞くと結奈は驚いた様子を見せながら、空席を探し座っていた。
仲良さげに喋りながらカフェ店内を歩き回っているその姿は傍から見れば兄妹とは見えないだろう。
まあ可愛い結奈と俺とでは釣り合ってないから恋人同士にも見えないと思うが。
「お兄ちゃん。ここ空いてるよ」
「おう」
「さっきの話、放課後は遊ぶのに学校じゃそんな仲良くないの?」
結奈は店内を半周ほどしたところで品定めを終えたのか、窓際の少し陽の当たる4人がけの席を選んだ。
俺が結奈の隣のソファー席に座ったところで、結奈は話を盛り返してきた。
仲良くないというか俺自身があまり広まって欲しくないと思っているし、梨花さんからも表で仲良くしているところを見られたらまずいと言われたので、関わりたくても関われないというのが正しいだろう。
「まあ、そんなところだ。相手にも事情があるんだろ」
「ふーん、それって友達って言うのかな。まあお兄ちゃんが楽しんでるならいいんじゃない」
結奈はまあいっかと視線をスマートフォンに落とした。
俺は楽しんでいるのかな......どうなんだろ。
今まで考えたこともなかったが、少なくとも嫌々安芸さんのお願いを叶えている訳では無いし、そこは大丈夫だろう。
「お、山口くんこんなところにいたんだ」
5分ほど結奈との間に沈黙が続いた後安芸さんや取り巻き2人が到着し、俺を見つけたみたいだ。
待っていたのが4人がけの席だったので、梨花さんが何も言わずに椅子を一脚、隣の席から少し引っ張ってくる。
そう言えばどこら辺にいるか連絡しておけば良かったな。
結奈は誰が来たんだろというような感じで声のした方向を向いた。
刹那彼女の顔はどんどんと青ざめていき、俺の肩の後ろに隠れるようにした上で、つんつんと割と強めに俺の事を呼んでいた。
「お兄ちゃんこっち」
「え?」
「ちょ、山口くん!?」
俺は結奈に引っ張られるように連れていかれた。
結奈相当焦っているのだろう、その手つきはとても荒々しかった。
対する安芸さんたちは一瞬驚いたような素振りを見せたが、なにか事情があるのだろうと察してくれたみたいで追いかけることはせず留まってくれた。
結奈が元から安芸さんのよく思っていなかったのは明らかなのに、嘘をついてまで無理やり連れてきた俺の責任だ。
安芸さんは学校中で天使様と呼ばれているし、実際関わった俺もよく分からないお願いをしてきたこと以外は、至ってまともな人間でむしろよく出来た方の人だと声を大にして言える。結奈と安芸さんの間にどんな確執があるのだろう......。
そう考えているうちに結奈はここでいいかとトイレの前で止まって話を始めようとしていた。
「お兄ちゃん。私安芸先輩じゃないって昨日聞いたと思うんだけど」
「そ、それはな」
結奈はやはり昨日と同様に普段からは想像がつかない力強い態度で俺に迫ってくる。
俺......嘘をついたんだもんな。
結奈のためを思っていたとはいえ、結奈には悪い事をしたな。
「結奈......なんで安芸さんは嫌だったんだ?」
俺は結奈の気を逸らすかのように質問をした。
だがそれはかえって結奈の地雷を踏み抜いてしまったようで、結奈の態度は先程とは大きく変わって静かになっていた。
「だってね......」
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