-第29話-何気ない日常
俺は結奈との話を終えて自分の部屋に寝転んでいた。
まず安芸さんと明日の予定を決めようとRINEを開いた。
昨日ぶりのRINE。
最近はよく安芸さんや梨花さんと使っているから大分勝手がわかってきたため、さくさくとやり取りができるようになった。
『安芸さん。明日っていうことは決まってたけどどこに行こうか?』
『え!? 私はてっきり山口くんが考えてくれるものだと思ってたから何も......』
程なくして返信が帰ってきた。
確かに今までずっと俺が計画を立ててきていたから、まさか俺が考えてなかったとは思っていなかったのだろう。
だが俺も何考えてないから、頼られても困ってしまう。
『え、俺も考えてなかったよ。何か案はない?』
『うーん。特にはないかな』
『じゃあ話すだけだし適当なカフェでも入ろうか。オススメある?』
俺は必死に会話を繋いでいく。
すぐに安芸さんから返信が返って来るものだから俺も無い頭をフル回転させている。
『私もあんま行かないからないんだよね。ちょっと調べてみようかな』
『じゃあお店選びは任せても大丈夫?』
『いや、山口くんが選んだお店なら私はそっちがいいな』
『そっか。まあ一応探しておいてね』
彼女は遠慮がちな性格だからこう言っているが、俺としては何かいいお店を見つけて欲しいと思っている。
俺は全然カフェとか興味無いのに見栄を張って「カフェなんてどう?」と言ってしまったから、無い知識を使ってお店探しをしなければならなくなってしまったからだ。
結奈も来るわけだしもしかしたら梨花さんや姫芽さんも来るかもしれないから、安っぽいところではなく本格的なお店がいいのだろう。
駅前に何かあったかな。明日の学校ででも探してみよう。
※※ ※※
「あ兄ちゃん......起きて......」
「お兄ちゃん......」
朝──俺は起こされた。
いつも起こしてくれる愛用の目覚まし時計にではなく結奈にだ。
目覚ましがまだ鳴っていないはずということはいつもより早い時間のはずだ。
なんて時間に起こしてくれたんだと、ふと毎日決まった時刻になってくれる安心と信頼の時計を見てみると6時45分あたりを指していた。
いつもより30分以上早いのか......どおりで頭の中がパッとしないわけだ。
「こんな時間に起こして何の用だ?俺はまだ寝るぞ」
「お兄ちゃん、久しぶりに一緒に学校いかない?」
結奈は俺のパジャマの袖をぐいぐいと引っ張りながら俺を起こそうとしてくる。
思えば結奈が高校に入学してからそろそろ2か月ほど経つが、まだ一回も一緒に到着したことはなかった。
兄妹で足並み揃えて学校に行ったのは結奈が中学校に入学した当初、3年前が最後ではないだろうか。
「ああ、いいけど。あと5分だけ寝かせてくれ」
「だーめ。そう言って行かないつもりでしょ」
俺は勢いよく布団を頭までかぶり二度寝の態勢をとるが、すでに着替えも終わっていて今すぐにでも登校できる状態の結奈によってめくられてしまった。
しばらく俺ら兄妹の攻防は続いたが、提示していた5分ほど過ぎたところで俺はこのままでも寝られることはないだろうと匙を投げるようにベッドから飛び起きた。
すると結奈はいきなり起き上がられてびっくりしたのか、尻もちをついてしまっていた。
「えへへ、やっと起きてくれた。さあお兄ちゃん早く着替えるのだ! 何なら私が手伝ってあげようか?」
「いや大丈夫だ。朝ごはんでも食べていてくれ」
「はーい。二度寝しちゃダメだよ!?」
結奈はすぐによいしょと立ち上がり、俺が起きたことをとても嬉しそうにしていた。
さすがにこの年になって家族の前で着替えられるメンタルは持っていないので外に追い出した。
当たり前のように結奈を朝ごはん食べて来いと促したわけだが、こんな時間から子供たち二人のお弁当と朝ごはんをつくているお母さんは大変だなと関係ないところで改めて親のありがたみを感じたのだった。




