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-第28話-兄として

安芸さんと結奈が会うという重大イベントを明日に控えた俺はいつものように学校が終わってからそそくさと家まで帰ってきた。


もう既に結菜は帰っていたようで、玄関には綺麗に揃えられた靴が置いてあった。


俺と結奈はお互い帰宅部であるためどちらが先に帰るかはまちまちだが、大体3時半頃には家に着いている。


帰宅後は時々はリビングで一緒にテレビ番組を見たりするものの、基本的にはお互い干渉し合わず自分の部屋で過ごしている。


昔はよく一緒に公園で遊んでいたりしたが、最後にそれをしたのももう小学生の時だろう。


「あ、お兄ちゃんおかえり。ちょっと話いいかな」


突然結奈から話しかけられた。


毎日のように挨拶はしているが、基本的にはあまり喋らない。


この間のポテまるの件は例外みたいなものだ。


結奈からの話ってなんだろう。


安芸さんと見比べてしまうと少し見劣りしてしまうけれど、彼女は身内びいきかもしれないが軒並み能力が高い。


まるで俺から全てを奪っていったかのように運動や勉強は得意であるし、性格も優しいし友達も多く先生からも気に入られた絵に書いたような優等生だ。


そんな彼女からの話となると想像がつかない。


だから勉強を教えてやお金貸してのような典型的な高校生兄妹のような頼み事では無いと思う。


勉強に至っては恐らく結奈の方が年上の俺よりも出来るだろう。


「ああ、ただいま。大丈夫だぞ。」


「ねえお兄ちゃん。昨日の言ってた知り合いってもしかして......」


結奈が重い口を開けるようにゆっくりと話し始めた。


昨日の言ってた知り合い......ああ安芸さんのことか。


昨日安芸さんと約束も取り付けられたし、きっと明日の予定は空いているだろうが結奈にも聞いておこう。


ふと結奈の方を見ると何か落ち着かない雰囲気を感じた。


俺と会話をしているので身体はこちらを向いているが、目線は上の空だ。


どこか会話に本腰が入っていないようで、まるで嫌なことから必死に逃れようとしているみたいだ。


あの頃のように......。


「昨日言ってた知り合いって安芸美玲先輩なの?」


結奈は意を決したように声を震えさせながら俺にそう聞いていた。


え、何で知っているんだ......。


他の生徒にはバレていないはずなのに......。


対する俺は血の気が引いた感覚を覚えた。


さっきの表情を見るにやっぱり何でかは分からないが、結奈は俺と安芸さんが出かけていると都合が悪いのだろう。


彼女は言い終わったにもかかわらず未だに手足をぶるぶると震えさせている。


結奈を、妹を一瞬でもいいから楽にさせてあげたい。そう思うのは兄として当たり前のことだろう。


俺は結奈に笑っていて欲しい。


俺はまた助けてあげたい。


だからこれは「優しい嘘」だ。


「違うよ」


結奈はその事実を知った瞬間嬉しそうに顔をパッと明るくさせた。


だから俺は自分のしたことが正しいことだと思い込めた。


明日にはメッキが剥がれてしまうけれど、今日ここで結奈を落ち着かせられて良かったと思った。


「今度その人が会いたいって言ってるんだけど、明日空いてるかな?」


「うんもちろん」


結奈はさっきまでの酷く荒れた様子とは打って変わって、明日を待ち遠しく思っているようににこやかに答えてくれた。


結奈は明日会うのが安芸さんだとは露ほども思っていない。


短い会話だったが彼女のこれからを左右するのだろう。

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