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-閑話-妹として

朝、私はいつも通り6時40分に起きてお母さんが作ってくれた朝ごはんを食べる。


せっかく兄妹で同じ学校に通ってるんだから一緒に通えと思われるかもしれない。


でもお兄ちゃんはわざわざ早く学校になんてとんでもないと、私が家を出る頃に起きてくる。


お兄ちゃんは毎日始業のチャイムのギリギリか少し遅れて到着するのに対し私はクラスメイトと談笑するために早く家から出る。


やっぱり家じゃ彼女らに会えないから、早めに行って1秒でも多く話しておきたいからだ。


定時の20分ほど前に学校に着くと、既に10人ほどの生徒が教室で話していた。


私も話の輪に混ざり談笑していると、友達の1人がとある噂をし始めた。


「この間安芸先輩が駅前で犬を連れて歩いてたらしいよ」


「しかもそんなに可愛くなかったんだって」


「安芸先輩ってここら辺に住んでたっけ?」


「いや、結構遠かったはずだよ。だからこないだ私たちが行ったペットショップに行ったんじゃないかなって思うの」


私は集中して聞き耳を立て友達らの話をよく聞く。


外見的に可愛くない犬......ペットショップでレンタル......。


この近辺で条件に当てはまっている犬というのはポテまるくらいではないだろうか。


そこで頭に良くない考えが過ぎった。


もしかしてお兄ちゃんが一緒に出かけた知り合いというのは安芸美玲先輩なのではないかと。


安芸美玲──学校一の美少女にして、日本国内有数の大企業のご令嬢だ。


同じ女の私から見ても美しいと思えるその容姿と、こちらから1歩引いたようなその孤高としているが愛想のいいその独特の雰囲気は惹かれるものがある。


学校一の有名人にして男子からは「天使様」と呼ばれているらしい。


はっきり言って安芸先輩が相手だったのであれば、お兄ちゃんが好きになるとも時間の問題であるし私に勝ち目は一切ない。


「えー、でもこないだ行ったお店に可愛くない子なんていたっけ?」


私はおどけたように言った。誰かにこの事実を否定欲しかったからだ。


「そういえばポテまるってあんまり可愛くなかったよね。私たちは大好きだけど」


「ねー。ほんとあの可愛くなさがポテまるの可愛さの大たる部分だよね。次はいつ行こうか?」


友達たちもポテまるだと語っている。


やっぱり安芸先輩が連れていたのはポテまるで間違いないっぽい。


お兄ちゃんがレンタルしたと言っていたのもポテまるだし、お兄ちゃんが出かけた土曜日の放課後は日にち的にも時間的にも目撃者がいておかしくない。


これ以上否定するための要素が見当たらない。


「しかも男を連れてたって噂もあるらしいよ」


「ええー!?あの安芸先輩が男?」


「今まで告白を断ってきた回数なんて数え切れたものじゃないのにね」


もうダメだ。


その男というのはお兄ちゃんだ。ああ、終わった。


私はその場で崩れ落ちるようにしゃがんでしまった。


「結奈大丈夫?」と友達は心配してくれるが、私の心は癒えない。


結局授業中私は悩める少女のように眠り込んでしまうのだった。


※※ ※※

「ねえお兄ちゃん。昨日の言ってた知り合いってもしかして......」


「ん?どうした」


授業に身が入らないまま6限まで終わり、私は流されるように家に着いた。


私は待ちわびていたかのように、いつも通りに学校から直帰したお兄ちゃんに迫っていた。


もちろん今日の朝聞いた噂の真相を確かめるためだ。

あわよくば否定してもらいたくて......。


「昨日言ってた知り合いって安芸美玲先輩なの?」


私は遂に口に出してしまった。


ここで肯定されたら私は壊れてしまうことが分かっているのに......。


するとお兄ちゃんは一瞬青ざめたような表情を浮かべたあと、いつもと同じ取っ掛り辛いような感情を表に出さない顔を戻り、こう言った。


「違うよ」


良かった。まだ私に勝機はある。


「今度その人が会いたいって言ってるんだけど、明日空いてるかな?」


「うんもちろん」


続けてお兄ちゃんはもう予定を組んであることを告げてくる。


私もお兄ちゃんと同じように帰宅部であるから当然空いている。


安芸じゃないなら相手が誰か気になるし私は会ってみることにした。


お兄ちゃんが認めた人がどんな人なのか楽しみだ。

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