-第24話-過去
「梨花さん、やっぱ大丈夫じゃなさそうだよね、何があったの?」
俺は少し声を荒げて梨花さんにたずねた。
梨花さんはこちらを振り返り焦点をこちらに定めてくれた。
ここに来るまでは 姫芽さんと同じように安芸さんにポテまるを取られてすねているのかなと思っていたが、公園に着いても気分が戻らないということは全く違う理由なんだろう。
「いえ、だから大丈夫です」
「そんなわけないだろ。関わりの薄い俺から言われるのは癪に障るかもしれないけど、いつもよりずっと顔が暗いよ」
「そんな......」
「今は安芸さんたちはいないわけだし、なんかあるなら言ってほしいな。俺もできるだけのことはするつもりだよ」
俺が心配そうに声をかけているが彼女は一向に応えてくれそうにない。
俺はかける言葉が見つからず1分、2分と沈黙の時間が過ぎていく。
「話すと長くなるんですけどいいですか?」
突然彼女が言葉をかけてきた。
彼女自身のなかで一区切りついたのだろう。本人から話してもらえるなら願ったり叶ったりだ。
「ああ、話してすっきりしてくれ」
「まぁそんな大した話ではないんですけどね」
梨花さんは急に乾いた笑顔を浮かべて、あくまで大した話じゃないよと前置きをした上で、重い口を開けるようにゆっくりと話しをはじめた。
「ちょっと昔話に付き合ってもらいますね。私は昔から親の付き合いもあってお嬢様と一緒にいたんです。将来立派に仕えられるように今のうちから準備しておけって言われて」
「だから小学校の頃から遊ぶなんてことはほとんどなかったし、遊ぶにしてもお嬢様、いや美玲ちゃんや姫芽と親から見つからないように隠れて遊ぶだけ。それが習慣づいちゃったのか高校生になった今でもクラスの人と話したり遊んだりっていうのはないんです」
幼いころから付き人として教育されていた。そんな体験は俺からは想像がつかない世界だ。
俺は小さいころは普通に学校の友達と遊んでいたし、高校生になってからは何もないけどかといって不自由はない生活を送っている。
「だからこの間皆さんがスイーツバイキングに行ってた時は甘いものが好きじゃないってのもあるんですけど、やっぱり遊ぶときってどうしたらいいのかわからなくて......」
「でもお嬢様を幸せにするにはやっぱり、あなたからの助け舟にお嬢様はもちろんのこと私や姫芽まで乗らないといけないなと思ったんですよ。だから今日は来たんですけどやっぱりいろんな人と一緒に楽しい時間をすごそうとする雰囲気にうまくのれなくて......。山口君とも一対一なら今みたいに十分話せるんですけどね」
梨花さんは心境を語ってくれた。
最後は冗談ぽく笑いながら話していたが今回話してくれた内容はすべて本心なのだろう。
要するに経験がなくて楽しそうな雰囲気に加わることができないということだ。彼女は優秀なひとだと思っていたのだが、見ないところで苦労していたのか。
俺も同じように人と関わっていないが、これは自分から望んでいるからだからであって彼女とは境遇が違うから何とも言えない。だが一つだけ疑問に思うことがあった。
「どうしてそんな髪色にしているんだ?そういう見た目とかって周りにあわせるものじゃないのか?」
「高校生になったタイミングで見た目を変えてみるのも1つの体験だとネットで見かけたので、学校でもかかわってくれる人が増えるかなと思って軽い感じの見た目に変えてみたんですよね」
「別にお嬢様や姫芽のことが嫌いなわけじゃないし、私の人生はお嬢様に仕えるためにあるんですけどね。でもやっぱり色んなひとと仲良くなりたいな思ったから変えてみたけど、結局うまくなじめなかったのでお嬢様たちと一日中いるんですけどね。」
梨花さんは自嘲するように笑いながら語っている。
でも彼女の言うことを馬鹿らしいとは全く思えない。
同じ人と過ごし続けているとたまに嫌になることあるからな。
だから家族とかとよくもめるんだ。安芸さんらの場合は年も近いからなおのこと問題があるのだろう。
「聞いてくれてありがとうございました。結局私の努力不足って話なんですけどね」
「でも聞いてもらって気持ちに整理がつきました」
彼女は一呼吸おいてそう告げた。まるでこれからの自分は違うんだと言わんばかりに。でも人間そんなにすぐ変われるものじゃない。そんな仕様だったら梨花さんは今頃苦労してないからだ。
「いや、俺も友達いないから何とも言えないけどね。でも俺たちと話すだけならすぐにできるんじゃないか?」
「そ、うですね。まずは話せる人のところに交じるところから始めてみます」
「だから、だから、これからもお嬢様を幸せにしてくださいね!」
彼女は今までの暗かった表情から一変して、ぱあっと顔を明るくした。
その顔はまるで大好きで幼馴染の主人の成功を願うような、まるで自分の未来に安堵したようなそんな表情をしていた。
これからも梨花さんは主人を幸せにする計画についてきてくれるのだろうと確信できた。
「山口君、せっかくだしRINE交換しませんか?話を聞いてくれたお礼ということで」
「ああ、構わないぞ」
梨花さんからの申し出に俺は快く了承した。
安芸さんは甘いものや犬などしっかり好きなものがあるのに、遠慮してなのか何がしたいか、何が好きかを教えてくれないのでここで梨花さんとパイプができるのは正直嬉しい。
彼女は安芸さんのことについては一番詳しいだろうし何か少なくないヒントを得られるだろう。
「あ、このことはお嬢様には秘密でお願いしますね」
「まあいいけど。なんで?」
「ここで2人で残ってRINE交換していたらあからさまに何か裏がありそうに思われるじゃないですか」
いきなり連絡先を交換していたらそんな色恋沙汰じゃないにしても、何か事情があるのは確定だ。
やはり彼女は頭が多少なりとも切れるのだろう。
前回短すぎた反動で今回いつもより長いです
字数配分下手すぎました笑すみませんm




