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-第22話-突発イベント

店員さんは慣れた手つきでブルドッグをポテまるを抱きかかえケージから取り出すと、首の位置に赤色のリードを付けた。


「はい。どうぞ。ここに帰ってくるまでリードは外さないようにお願いしますね」


「分かりました。」


安芸さんは元気よく返事をし、ポテまるを受け取った。


彼女は希望した犬ではなかったが、犬という括りだから可愛がれるようで目を輝かせている。


「お嬢様はあんまり好きそうじゃなかったですよね。姫芽に持たせてくださいよ!」


「私がお金払ったんだから、私が持っててもいいでしょ!姫芽は隣で眺めてなさい」


安芸さんがらしくないことを言っている。


普段の彼女の性格であれば絶対に自分が払ったから自分のものだとは言わず、「みんなで共有しましょ」などと言っているはずだ。


スイーツといい犬といい女の子が可愛いものに目がないというのは本当のようだな。ポテまるが可愛いかは置いておいて。


結局安芸さんがリードを譲ることなく店を後にした。


姫芽さんはずっと文句を言っているが、安芸さんは一向に渡す気はないらしい。


「1時間散歩でもいいけど、せっかくだから通学路の公園でも行かない?」


「いいですね!でもそこ着いたら姫芽に交代ですよ」


「えー、どうしよっかな。考えておいてもいいけどね」


俺が昨日犬連れを何組か目撃した公園に向かうようだ。


確かにあそこなら他の犬も多いだろうし、ポテまるも楽しめるだろう。


「……」


安芸さんと姫芽さんの2人がどっちがリードを持つかで盛り上がってる中、梨花さんはずっと俯いている。


俺が知る限りではもともと口数がそこまで多いタイプではないだろうが、柴犬にならなかったことがそんなに悲しいのだろうか。


「梨花さん、大丈夫?」


「だ、大丈夫です。お気にならさず」


彼女はそう言って少しの間いつもの可愛らしい表情に戻ったが、しばらくするとまた光がなくなっていく。


本人から何も言われてないわけだし、暫くは放っておこう。


彼女も犬が好きっぽいし公園に着いてポテまると遊べばそのうち気分も上がってくるだろう。


「わあ、可愛いですね。ブルドッグですか?」


「え?あ、そうです。そちらはチワワですかね?」


「そうです。チョコって言います!」


突然犬連れの主婦が安芸さんに声をかけてきた。


これは犬を連れていると起こり得る定番イベントらしい。昨日サイトで調べていた時に注意として書かれていた。


普通赤の他人に話しかけるのは尻込みしてしまうところがあるが、犬という共通の話題があると幾分か話しかけやすくなるんだろう。


実際犬同士の自己紹介をすることで大分時間が潰せるし、犬同士の交流も兼ねているため犬を飼っている人にとって都合のいい展開なんだろう。


「ほら、チョコ挨拶してきな」


飼い主の女の人が呼びかけると、チョコと呼ばれたチワワはポテまるに近づいていき、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。


ポテまるはやはりこういうイベントに慣れているようで、特段嫌がる素振りは見せずチョコを受け入れている。


暫くしてポテまるも気に入ったのか匂いを嗅ぎに行き、2匹でくるくると回り始めた。


「あの、撫でてもいいですか?」


「ええ、大丈夫ですよ」


姫芽さんはさっきまで安芸さんにポテまるを占有されていた反動でか、チョコをとても可愛がっている。


時々チラチラと安芸さんの方をまるで私ももっと触りたいのとアピールするように見ながら、1分ほど撫でたり抱きしめたりしていた。


「ありがとうございました。では、また」


「はい。こちらこそ」


姫芽さんがチョコから離れるとチョコの飼い主さんは挨拶をして去っていった。


元からなんの接点もない人同士が5分ほど立ち話できるというのは、やはりペットというものは凄いのだろう。


途中予想外のことがあり止まったものの、公園までの道のりは駅も通り過ぎ残り半分くらいとなっていた。


残り時間も45分ほど残っているためまだまだ楽しめそうだ。


梨花さんは相変わらず俯いたままである。


そういえば梨花さんはさきほどのチョコに対しても一瞥しただけであまり興味を示していなかった。


公園に着いたら安芸さんと姫芽さんと離れて話を聞いてみるべきだな。


「わ、安芸さんが犬連れてるよ」


「ほんとだ!でもなんかイメージしていたのとは違うけどね」


部活から帰り途中なのか、教室で残っていたのか分からないが学校から駅へと向かっている生徒が何人かこちらを見て言っている。


あのいつもクールそうで凛としている安芸さんが家の近くでもないのに、犬を連れているということで物珍しさがあるんだろう。


彼女のイメージ的には大型犬のシェパードなんかを連れていそうなものだが、ブルドッグというなんとも言えないチョイスなところも興味を引かれるのだろう。


だが、話しかけてくる生徒はいない。


みんな俺の存在に気づいているから不思議がって話しかけてこないのか、それともただ安芸さんが高嶺の花すぎて話しかけられないのか。


前を歩く3人の横顔を見てみると、犬を連れてこの間のスイーツを食べている時のように嬉しそうな安芸さんに対して、姫芽さんと梨花さんのテンションは低いままだ。


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