-第20話-待ち合わせ②
朝、目覚まし時計に起こしてもらい俺は起床した。
仮にも生き物であるペットをレンタルするのだから前日に予約しても遅いのだと思っていたが、調べてみたら意外にも当日に店頭でパッと借りられるらしい。
それなら杜撰なうちの妹でも借りられるのも納得してしまう。
基本的なことは昨日のうちに調べた。
やっぱり犬は動物の中でも賢い部類なので嫌がることは多いみたいで気をつけなければいけないなと思った。
1番やってしまいそうなのは無為に抱きしめたり撫でたりすることだ。
その日初めましての人間から触られたら嫌だろうし当然だ。
あとは身振り手振りをせずに言葉だけで指示を出すことだそうだ。
これもまあそうだよな。
人間も分からない言語で喋りかけられても訳が分からないから何も出来ないだろう。
俺はしっかりこれらを気にしつつも可愛がろうと思った。
改札を出ると安芸さんも同じ時間に登校していたようで今日も周りに注目されながら歩いていた。
艶やかな腰まで伸びた髪、身長は160センチメートルとちょっとと高いくらいの女子生徒の中では少し抜けた身体、そして何より鼻すじの通った細面の凛とした品のいいその横顔が彼女をよく象徴している。
安芸さんを見ている誰もが憧れを抱いていると共に、彼女がスイーツバイキングであんなに天真爛漫にケーキやパフェを食べていたところを想像することは出来ないだろう。
俺もつい先日まではそうだった。
俺が誘う度に嬉しそうにRINEを送ってくるし、実際に会った時に話す内容も普通のどこにでも居そうな女子高生のように学校であったことや、梨花さんたちとのことばかり。
彼女のそんなところを見ていると少し容姿が整っていて金持ちで文武両道でクールなただの女の子のように思える。
付加価値が大きすぎるが彼女と普通に話せるし、そこまで手が届かない存在ではないのだろうとも思えた。
※※ ※※
つつがなく授業が終わり俺は安芸さんとの待ち合わせ場所である駅の反対側の像の前に立ち、安芸さんを待っていた。
この像は俺たち以外にも待ち合わせ場所としてよく使われているようで、他にも何人かがスマートフォンに視線を向けて相手を待っているようだった。
「おまかせ、山口くん」
「来たか、安芸さん。今日は2人とも一緒なんだね」
5分ほど待ったところで安芸さんと梨花さん、姫芽さんが俺の元へやってきた。
安芸さんの元へ呼ばれる時は毎回梨花さんだけだったし、前回出かけた時は姫芽さんだけだったので2人と安芸さんと一緒に行動することは新鮮だ。
「あの人凄いわね」
「モデルさんとぼんぼん?」
「ママ!ハーレムってやつだね」
「こら!見ちゃ行けません」
そんな会話が周りからの視線を感じると共に聞こえてくる。
女子3人対男子1人って別にハーレムでは無いだろ......。
しかも全員俺と恋人と言うわけでもないし、なんなら2人は付き添いだ。
しかし周りが全員が可愛いというのは事実だ。
茶髪を短く切り、ナチュラルメイクぽく見えるが十分可愛い梨花さん、安芸さんと同じくらい長い黒髪を頭の上で2つに分けメイクにも力を入れていて目がキラキラと輝いている姫芽さん。
こうして見てみると2人とも安芸さんに負けず劣らずの美少女であり、2人とも安芸さんと属性が被っていないので人によっては天使様より好きだという可能性は十分有り得る。
そんな3人と歩いている俺は触れないで欲しいくらい根暗そうで取り柄がなさそうな外見をしているから、なおのこと意外な視線を向けられるんだよな。
「私たちもワンちゃん大好きだからね」
「私も甘いものは苦手ですが、動物は好きです」
前回は来なかった梨花さんも含めみんな動物は好きらしい。やっぱり犬は偉大である。
「じゃあ行こっか」
ペットショップに向けて他愛もない話をしながら歩き始めた。
ただ、前回は彼女たちの会話を聞いているだけだった俺も今日は混じってみることにした。
梨花さんや姫芽さんのことも含めて彼女達の事をよく知ることが、安芸さんの真意に気づくための近道になると思えるから。




