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-第18話-公園

楽しかったスイーツバイキングも2日前と、時が経つのは早いな。


俺は毎朝かかっている7時20分のタイマーに起こされたが、5月病というやつなのか動く気がしない。


だからこの間と同じようにベッドに寝転がって、安芸さんと次出かけるところについて考えている。


俺は人付き合いが少ないから、彼女が気に入ってくれるかという問題の前にそもそも案が出てこない。


いつまで経っても案が出てこないままでは、埒が明かないので安芸さんRINEしてまることにした。


俺はベッドの淵に置いてあったスマートフォンでRINEを開いた。


『安芸さんおはよう。今大丈夫?』


『うん、大丈夫。何かな?』


2分ほどして返信が帰ってきた。


登校前の女子たちは大変なものだと勝手に思っていたが、安芸さんレベルになると返信する余裕あるんだなと納得してしまう。


『またどこか出かけようと思うんだけど、行きたいところはない?』


『うーん、私もそういうのには疎いからね』


『そうなの?てっきりクラスの友達とかと行ってものだと思ってたよ』


『色々あってね、友達と出かけたことはほとんどないんだ』


返信がぽんぽんという軽快なリズムに合わせて次々返ってくる。


会話のキャッチボールがどんどん加速していっている。


それにしても安芸さんが友達と出かけたことないのは意外だな。


彼女は高嶺の花であるが、その可憐さゆえに彼女のことを慕っている生徒はとても多い。


だから陽キャたちにカラオケに誘われていたりしていてもおかしくないと思う。


でも出かけてないとなると何かしらの事情があるのだろう。


もし放課後遊びに行けない事情があるなら、なおのこと俺と出かけた2日前のことが不思議でならない。


『うーん、収穫なしか』


『私から頼んでるわけだし、案がないなら出かけなくて全然大丈夫だよ。』


『なにか思いついた時にでも教えて』


続けて2件メッセージが送られてくる。


彼女はなしでもいいと言っているが、その言葉は先日言われた「幸せは続かなきゃ意味が無い」と言う言葉と矛盾している。


彼女を幸せにするためには俺が動かなきゃダメなんだ。


ただ前回のスイーツバイキングを見つけたのも隣の席の女子からヒントを得て、 広告を思い出しただけなので実質的には俺は何もしていないと同じだ。


『うん、じゃあまた今度ね』


俺は彼女に別れを告げ着替えを始めた。


※※ ※※


「テストも近いんだから、よく復習しておけよ」


そう初老くらいの現代文の教員が去り際に言って、今日も6限が終了した。


結局朝から何かないかと考えていたが、収穫はゼロだ。


種を撒かないと実はできないというように、人間関係がゼロな俺の頭には何も出かける先が浮かんでこなかった。


いつもと同じように生徒たちに流されるようについて行き、駅まで続く大通りに出た。


今日はなにか新しい発見が欲しいから、いつも通る右側の歩道ではなく左側の歩道を通ってみてる。


こちら側は大きな公園に面していて、通行量が向こうに比べて多い。


だからこそ俺は避けていたのだが気分を変えてみることは大切だろう。


ふと公園を見てみるとカップルがイチャイチャしていたり、子連れの親子が仲良さげに遊んでいた。


「ポチ!取ってこい!」


「んー、ココアは可愛いね。もふもふもふ」


見かけた両方から声が聞こえてきた。


彼ら2組の共通点を探せと言っても特に見つからないと思うが、一つだけあった。


それはお互い犬連れであるというところだ。


片方はボールを家族が代わる代わる投げて取ってこさせて遊んでいる。


柴犬と思われる中型犬が一生懸命公園内を入り回って、「また投げてよ!」と家族の元まで戻ってきている。


こんなに甘えられていたらさぞ可愛いんだろうな。


もう片方のカップルはレジャーシートを地面に引き、彼女が犬を撫でてるところを彼氏が眺めて時折写真撮っていた。


こちらはトイプードルのようだな。


いかにも映えそうな可愛らしい体をしている。


その体を可愛がるように茶色い長い毛を彼女の方がもふもふぐちゃぐちゃにしていた。


彼らはどちらもやってることも違うし人物像も違うのに、みんなとても癒されているような和んだ空気がこちらにまで伝わってくる。


これがペットセラピーというやつか。


安芸さんもというか人間誰しも可愛い動物というのは好きだろうから、安芸さんと公園で犬と戯れていたら楽しんで貰えるかなって思ったが、俺はペットは飼っていない。


1度や2度はペットを飼いたいという話題が持ち上がったこともあったが、結局飼っていないというのは両親も俺も妹も世話がめんどくさいと言う理由で一致したからだ。


俺はせっかくのアイディアを泣く泣くボツにすることにし、駅に向かう大群にまた合流した。

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