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-第16話-帰路

「安芸さん今日はどうだった?」


「ほんとにすごい美味しかった。誘ってくれてありがとうね」


「姫芽ももう大満足だよ。ありがとね」


行き来た道を辿っていくだけの駅までの短い帰り道。


また行きみたいに安芸さんと姫芽さんの女子トークを聞いてても良かったのだが、俺も何か爪痕を残さないとなと思い話しかけた。


どうやら安芸さんは今日は本当に満足してくれたみたいだ。


俺が空気を盛り下げてしまうこともなかったし、これで俺の任務も終わりだろう。


普段ボランティア活動していて、人のために役に立つことに慣れてる俺でも、俺自身で考えてその上で「自分を幸せにして」なんていう依頼は初めてだったからとても緊張していただけに上手くいったみたいで嬉しい。


「まあ女の子たちに絡まれたのは災難だったですけどね」


「あれはすぐ引いてくれたし、不幸中の幸いってやつじゃないか」


「確かに、あのまま根掘り葉掘り聞かれてたら絶対に山口くんボロが出てたからね」


「ぐぬ......俺は安芸さんがなんの考えもせずに俺と出かけるとは思っていなかったんだよ」


「私は全くそんなこと考えてなかったからなぁ。お出かけ中にまで他の人たちに話しかけられて、誰といるの?なんて普通聞かれないと思って......」


まあ、安芸さんが普通じゃないことが1番の理由だ。


まさか本当に何も考えてなかったとはな。


案外彼女もおっちょこちょいなのかもしれないな。


「なにが目的で聞いてきたんだろうな。検討もつかない」


「やっぱり単純な興味とかなのかな。お嬢様は魅力的だしみんなの人気者だからね」


「うーん、そんな理由で話しかけてくるのかな。文春とかに売られたり......」


「ふふ、そんなわけないでしょ。山口くん冗談は良してよ。まあ見たことある人がいたら話しかけちゃうのも仕方ないんじゃないかな。私も昨日廊下で山口くん見かけた時話しかけるか迷ったもん」


「え、そうだったのか。でもみんなから認知されているところで俺と会うのはまずいんだもんな」


「そうだね。本当なら私ももっとお話しに行きたいけどね」


安芸さんは優しく微笑んでいる。


自分の立場が危うくなった原因でもある女子たちを責めることすらせず、話題を切り替える。


こんな気遣いのできる所が彼女が天使様である所以であるのだろう。


「でも悪いことはそれくらいだったね。ここのショートケーキは絶品でしたね」


「本当に美味しかったね。」


姫芽さんは余程美味しかったらしいショートケーキを思い出しながら満腹そうな笑みを浮かべている。安芸さんもそれには同意したようで、スパゲティとモンブランしか食べてない俺はもっと色々食べればよかったなと後悔してしまう。


「まじか。俺も食べればよかったな」


「山口くん全然食べてなかったよね」


「姫芽たちがすぐ取りに行っちゃうから全然行けなかった?だとしたらごめん」


「いや、全然そんなことないよ。あんまり甘いものが好きじゃ......いや、今日の主役は安芸さんだから安芸さんが喜んでるところを見たかったからね」


俺は甘いものが好きじゃなかったと言いかけたが、スイーツが好きな彼女達の前で言うのは空気が読めていないと思い安芸さんを立てるように言った。


またこれも本心だったが、やっぱりすこし格好つけすぎたかな。


隣を歩く安芸さんの方をチラッと見てみると何故か彼女は顔を赤くしていた。


「そ、そうなんだ。ありがとね」


「それで次はいつにする?」


安芸さんは恥ずかしそうに呟くと、決心を固めたように一呼吸ふっとおいてから驚きの一言を放った。

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