第2話 はじめての幽霊 交渉
三好は勝川に対して頷いた時、体に鳥肌が立ち、少し冷えている事に気付いた。
三好 「あぁー勝川さん。すみませんが移動しても良いでしょうか?
体が冷えてしまって。」
当然である。
橋の上で半刻程悩み、風に晒されながら5分程気絶した体は、時期は7月の頭といえど夜中の風で冷えてしまっていた。
言われて気付いた勝川は、そうか、と納得しつつ、体が無い生活?が1年も続いていたのでそんな当たり前を忘れておったわ!とぼやいていた。
勝川 「ここから離れなければ良いぞ。お前さんの車にでも行こうか?」
と、三好の車がある事に、さも当然のように答える。
三好 「 車で来ているのを知っているのか?」
勝川 「ああ。上から見ておったからな」
勝川のそんな返事に、「上から…」と頬を引き攣らされつつ、何気なく上を見る三好。
改めて勝川が幽霊である事に納得しつつ、死のうと考えていた三好は案外豪胆に、幽霊勝川を受け入れていた。
☆☆☆
場所は橋の入り口、乗り捨てるかのように駐車場に放置していた愛車に乗り込む三好と、扉をすり抜ける勝川。
勝川のすり抜けを見た三好は驚きつつ、勝川に問い掛ける。
三好 「すげぇな!すり抜けたり浮いたり透けたり。本物の幽霊なんだな!」
と、感心半分驚き半分である。
勝川 「お前さんは反応が良いなぁ。ここまでしっかり見て貰えるのは初めてだし、幽霊歴1年のワシ、頑張っちゃうぞ」
三好 「頑張っちゃうぞとか、可愛く無いから。
幽霊歴1年?去年亡くなったのか?」
勝川 「亡くなったと言うか、殺されたんじゃがな。死体はそこの川にポイされてしもうたしの」
三好 「そ、そうか。それはなんと言うか、御愁傷様です?」
勝川 「いやいや、半分は自業自得での。今や気にしてはおらんのよ。
ありがとうのぅ」
三好 「……」
方や自殺未遂の三好。
もう一方は殺された勝川の幽霊。
どういった運命か出会いか、複雑な気持ちになる三好。
気を取り直しつつ、勝川に問い掛ける。
三好 「そういえばですが勝川さん。
先程のお願いとはなんでしょうか?」
勝川 「ぅん? あぁそれはな、ワシの未練の解消の手伝いを頼みたいのじゃ。」
三好 「未練、ですか?」
勝川 「あぁ、未練じゃの。
詳しく話すとな、ワシには孫がおるのだがな、その孫がストーカーに悩まされていてのぅ。
その孫は親にも学校にも相談しづらかったようでの。
ワシやワシの妻の聖子に相談しておったのじゃ。」
三好 「お孫さんへのストーカーですか。
それは確かに気掛かりですね。
1年前であれば解決しているのでは?」
勝川 「確かに解決しておるのかもしれん。じゃがもしかしたら困っておるかも知れん!
頼む!協力をしてくれんかのぅ」
三好 「あぁー そうですね。どうせ死にかけの身ですし、死ぬ前に役に立てるなら良いですよ。」
勝川 「おぉ!それはそれは、有難や。
もちろん報酬も出すから楽しみにしておれょ」
三好 「報酬、ですか?失礼ながら幽霊の身で報酬をお支払い出来るのですか?」
勝川はニヤニヤしながら
「なら今から、その話でもしようかのぅ」
と反応を楽しんでいた。