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第9話 お客さんを集めるにキャッチセールスか?

「うむ。これでいいだろう」


異世界のメイン道路から一本入った脇道のさらに曲がった小さな路地の倉庫ぽいとこ。

倉庫の入り口は、脇道にあるから見た目は倉庫の裏口ぽいな。


そこに扉があり、『ビッグ・アマゾーン』と書かれたプレートが張ってある。


「この扉を開けると、あら不思議」


赤い床の狭間ショップにつながっている。

本当は倉庫に入るんだろうけど、まぁ、そういうことだ。


「ここから入るなら、もう少し、商品をこっちに持ってきて」


お客になった気で商品を並べ直す。

3畳くらいしかないから、やたらと狭い。


「あ、床が赤く見えるのはマスターだけなの」

「そうなのか」

「異世界の人には石造りの床と壁と天井に見えるの」

「なら、半透明の壁もか」

「そうなの」


まぁー、なんの飾り気もない店ってことでいいか。

オープンしたてだからな。


あとは客が来るのを待つ……と言っても、無理ぽいな。

なんだか、分からない店に入る客はいないな。


「どうたしたら、いいのか?」

「お客はマスターが連れてくるのがいいと思う」


うーん、あれか。

キャッチセールスか。


「いい女の子、いますよ。って怪しいキャバクラの呼び込みみたいなものか」

「えっと、キャバクラが分かりません」

「あー、いいんだ。ようは誰か連れてくればいいんだな」

「そうなの。レベルアップのためによろしくっー」


うーん、管理人は気楽だな。

異世界に来てキャッチセールスとは、参ったな。


まぁ、やるしかないだろう。


「こんにちわ」

「あんた、何?」


なんかお金持ちそうなおばさんが歩いていたから挨拶したら、いきなり警戒された。

うーむ、挨拶もダメか。


いや、若い人、それも男なら大丈夫だろう。


「こんにちわ」

「なんだ?」


おっ、ちゃんと止まってくれたぞ。

この後、どうしたらいいんだ?


「えっと、お店がですね」

「めんどくさい奴だな、あっちいけ」


あー、失敗した。

こんなよくわからないとこでキャッチセールスなんて無謀なんじゃないか。

だいたい元世界だって、渋谷あたりでお店に連れ込むセールスなんてできる気がしないぞ。


「店を作ったけど、セールスがいるとはな」


異世界小説で店を作ったときって、なんだかんだ言って客は勝手に来るものじゃないのか。

最初は少なくて、そのうち口コミで広がって。


キャッチセールスがいるなんておかしくないか?


うーん、いかん。

暗くなってきた…ネガティブになったら、何事もうまくいくはずない。


とにかく100人に声を掛けるんだ。

それでもダメだったら、考え直してもいい。


気合で声掛けをするんだ。


と、一人で気合を入れようとしていたら。


「何してるの?」

「えっ」


さっきの青髪少年じゃないか。

金がないと分かったら、冷たくなった。


「客引きしているんだよね。駄目だよ、そんなんじゃ」

「何を偉そうに」

「ちっちっち。俺っちだって、客引きしているのさ。このあたりで」

「客引き?」

「ガイドだよ、ガイド。街にきたばっかりの人に街案内するのさ」

「それで、さっき声を掛けてきたのか」

「そうだよ。金無しとは知らないでさ」

「うー」


生意気な奴だな、偉そうに。

そりゃ、異世界のことは俺よりは詳しいだろうよ。

自分で客を見つける街ガイドしているなら、ある意味、先輩ってことか。

まぁ、20半ばまで営業とか接客とか一切してこなかった俺よりずっと先輩なんだよな。


茶色い子汚い服だし、顔も薄汚れていて髪なんかいつ洗ったんだって感じだけど。

よく見たら、整った顔しているな。

ジャリーズにでもいそうな少年だな。


「お、いいこと思いついた」

「ん?」

「お前、俺の客引き手伝え」

「やだよ。そんなの。金無しのくせに」

「金無し言うな。すぐに大金持ちになるんだから」

「あーあ。あれだよね。他のとこから街にきて一旗あげるんだって、あれ」


うーむ、そう言われるとそうとも言える。


「よくいるんだよね。そういうの。最後は乞食になるってテンプレな奴」

「ふざけるな。俺はそうならないぞ」

「まぁ、それはいいけどさ。手伝えって言っても金無しだろ」

「あっそうだ。金はないけど、いい物がある」

「お菓子だ」

「えっ、お菓子」

「お菓子をやるから手伝え」

「先にもらってから、考えるとするか」


飴で釣れるかな。

おっと、ヤバイ。

ここで飴を上げてはいけないんだ。


あそこに帰れなくなる。

どうしたら……そうか。店であげればいいんだ。


「ちょっと、こっちへ来い」


☆  ☆  ☆


「なんだ? ショボい店だな」

「そう言うな。まだ、始めたばかりだからな」

「まぁ、俺っちはお菓子をもらえればいいんだけどな。早くくれ」

「よし、お菓子はこれだ」


もったいぶって、飴をひとつ握らせる。


「何、これ?」

「こうやって包みを開けて、中のを口にぽい」

「こうかな。えっ、すげー甘い!!!」


おー、さすがに現代日本のお菓子だ。

昔懐かしい飴でも、異世界の少年は喜ぶか。


「おいしいっ。もっとないの?」

「それは、手伝ってもらってからの褒美だ」

「分かった! お客を連れてくればいいんだね」

「ひとり連れてきたら、1個やろう」

「ふたりなら2個だよ。約束だよ」

「ああ。もちろんだ」


青髪少年は飛び出していった。

やれやれ。


なんとか、客引きを少年に任せることができた。

しかし、本当に連れてきてくれるのか。

心配だな…しかし、今は待つしかないな。


↓で☆☆☆☆☆をクリックしてくれると、すごく嬉しいです。

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