第83話 異世界の特産物をみつけたぞ
「おはようっ」
「あっ、おはよう」
ジョゼに起されて、びっくり。
俺一人がクッションに裸でのびていた。
みんなは自分の部屋に戻ったらしい。
「おい、昨日の精力剤はなんなんだ」
「みんなに聞いたわ。すごかったみたいね」
「すごいなんてもんじゃない。どうなっているのか?」
「あの精力剤、魔法を込めた薬なの。だけど、そこまで効果あるとは知らなかったわ」
異世界の男が利用しても、元気がないのが普通に元気になるくらいらしい。
あそこまでエッチな気持ちが暴走するのはありえないと言う。
「どうも、俺にとっては効果絶大らしい。もしかして、俺だけじゃないかも」
元々、俺を含めて元世界の人間は魔法というものが使えない。
だけど、魔法の効果がないのかというと、そうでもないらしい。
異世界にやってきた黒髪黒瞳の男は、魔法の効きがすごく良くて簡単なパワーアップの魔法であってもすごくパワーがあがると知られている。
「そうか。あっちの世界だと、魔法の薬が効果絶大なのかもしれないな」
俺が身をもって経験してしまった。
ありえないほどの精力パワーだぞ、あれは。
「あ」
「何?」
「おいしい話を思いついてしまってな」
「何々?」
うん。
この精力剤を異世界特産品にしてしまうこと。
いけるかもしれないな。
☆ ☆ ☆
やってきました、怪しいお店。
世間一般では、ハプニングバーと呼ばれているお店。
基本的にはバーなんだけど、お客さん同士がエッチなことをするのが当たり前のとこ、らしい。
男ひとりだと料金が高い。
カップルになると安くなるんだけど、こんなとこ来てくれる女性知らないしな。
異世界ならいくらでもいるんだけど、こっちに連れてくることはできないし。
結局、時間制限なしで2万円を支払うことに。
この値段で飲み放題、おつまみ等も用意されている。
ただ、飲むだけでは高すぎるお店ってなるけど、来ているお客さんたちの目的は別。
エッチなシチュエーションを楽しむということらしい。
といっても、初めての男にとって、すごく壁が高いのもハプニングバーだ。
俺はまず、カウンターに座って軽めのカクテルを頼む。
周りを見ると、下着姿になっている男女もいる。
あっちのテーブルでは、下着で楽しそうに飲んで、横の人を軽く触っていたりする。
奥には個室もあるそうで、もっとも個室には覘き穴が標準装備されていて、「ここ」って大きく書いてある。
さて、どうしたものか。
俺の目的はエッチなことじゃない。
だいたい、昨日リビングでやりすぎて、そんな気持ちになれない。
俺はここで、すけべな親父と仲良くなることだ。
変態であって、精力が減衰しているオヤジ。
そういうオヤジがいい。
「おっ、いい感じのがいるぞ」
20代後半くらいの女性を連れた60歳くらいのオヤジ。
そうそう、そんな感じの男がターゲットだ。
最初からオヤジに近づくのが目的だとバレると警戒されるから、連れの女性狙いと思わせよう。
「こんにちは」
「ん?」
「ここ、いいですか?」
オヤジと女性はローテーブルの周りをコの字型にソファで囲まれている席に座っている。
オヤジの横が空いているから、そこを指さして確認する。
「あー、ここか? こっちの方がよくないか?」
「えっ、いいんですか?」
女性の横を指さして言ってくれたから、お言葉に甘えて座る。
「おまえ、この店慣れていないようだな」
「そうなんですよ。初めてで」
「そんな感じだな。どうだ? ここは?」
「なにがなんだかわからなくて。とり会えず声をかけてみたとこです」
「まぁ、そうだな。初めてはそうなるな」
隣の席ではシャンパンが空いても盛り上がっているぞ。
たぶん、カップルじゃない男女が出来合ってるし。
「あの人達はカップルじゃないんですよね」
「ああ。違うだろうな。そんなのを気にしないのがここの良さだ」
「じゃあ、たとえば僕がこの方を口説いても怒らないんですか?」
「あー、口説け、口説け。まぁ、それに乗るかどうかはこいつ次第だけどな」
うー、口説くのか。
自分で言っておきながら、苦手だって気づいたぞ。
「あのー、そのー」
「きゃはは。なんか、政治家みたい」
「もっと、しゃっきりせい!」
「あ、はい。こんにちは」
「きゃはは」
あまりにダメダメだったのが好感されてオヤジに気に入られたようだ。
結果オーライだな。
「面白いな、おまえ。エッチの経験少ないんだろう」
「まだ、童貞を捨ててちょっとです」
「あー、こんな感じだな」
昨日は10代の女の子9人としまくりました。
なんて言ったら驚くだろうな。
だけど、それは内緒で、素人と経験してからの期間が短いことをアピールしてみた。
嘘は言ってないぞ。
「おふたりは、やっぱり。愛人関係とかなんですか?」
「あーそうだ。いや、今はそういわないんだぞ。パパって言うらしい」
「そうなの、私の大切なパパ」
「だけど、なんで大切なパパとここに来ているんですか? ふたりだけの方が楽しくないですか?」
「まあね。もうこいつとは2年以上パパやっていてな。そうなると、あれだ」
「倦怠期とか?」
「あー、そんなとこだ。ふたりきりだと刺激が足りなくてな」
「そうなの。だから、ここでいろんな人達を見て刺激をもらうの」
「いいですね、そういうの」
何がいいのかはおいておいて。
そういうと場が収まる気がして言ってみた。
「まだ、お前には早すぎるだろがな。お前に刺激が必要ないだろう」
「そうでもなくて。あまりに知らない世界だから、ここが縮こまってます」
「何言ってるんだ、若いんだろう! もっとがんばれよ」
「あ、はい。そうですね。じゃあ、これを使ってがんばります」
「なんだ、それ?」
よし、喰いついたぞ。
話を聞いていて、絶対興味持つも確信していたけど、喰いついくれてうれしいな。
「精力剤なんです。これを飲むと身体が熱くなって元気になります」
「おいおい、お前みたいな若造が何を言っているんだ?」
「でも…」
「でも、じゃない。ひとつ寄越してみろ」
「あ。いいですよ。心臓病とかないですか?」
「そっちは大丈夫だ。ちよっとメタボぎみなだけで健康診断ではオールグリーンだ」
「なら安心です。ただ、すごく効きますから、そのつもりで」
「まぁ、精力剤とはよくそういうよな。だけど、がっかりする方が多いんだよな」
「それは、飲んでみればわかります。あ、ただ。彼女から口移ししてもらうと効果が上がりますよ」
うん、その形の方が彼女の精力もあがるからいいはずだ。
ジョゼで経験済みだしな。
「うん、頂戴。これをなめればいいのね」
組木細工で作られてマッチ箱くらいのケースから異世界精力剤を出す。
この箱には5つ入っているから、1つあげても4つ残る。
「そうですね。3秒くらいなめてくださいね」
「3秒ね、わかったわ」
彼女は素直に言う通りして、口に丸い異世界精力剤をくわえてオヤジの口にもっていった。
「うーん。苦くなってきたな」
「もういいですよ。かじって飲み込みます」
「そうか。にがっ、良薬口に苦しってか」
「そうです。そうです」
見ていると先に女性の方が効いてきたぞ。
ほわんと頬がピンクに染まっている。
「あ、なんか変な気持ち」
「おっ、お前効いているんじゃないか?」
「パパだって、ほら」
「おーーー」
女性がオヤジの股間をさわったら、ぐんと大きくなっているのか外からでも分かる。
うんうん、やっぱりこっちの人には効果絶大らしい。
「効いたみたいですね。即効性なんです」
「こんなに元気になったのは久しぶりだ」
「それは良かったです」
もう俺のことを無視してふたりで濃厚な愛撫が始まったぞ。
そしたら、周りから人が集まってきて、見学している。
「すごいな、おっさん。元気だな」
「こいつにもらった精力剤のおかげだ。20代に戻った気分だぞ」
「本当か、すごいな」
周りからやんやの声援を受けて、もりあがっているふたり。
だけど、気分があがりすぎて耐えられなくなったらしい。
「もうダメ。はやくー」
「まてまて。さすがにソファだとやりづらいぞ」
「早くあっちに連れて行って」
「おう、わかった!」
個室までお姫様抱っこで行ってしまった。
うん、いい感じだな。
「覗き穴は3つしかないから早い物がちだぜ」
「そうだった、いそげ」
「何言ってるの。レディファーストでしょ」
ふたりの入った個室に群がっている男女。
覗き穴が定員になってしまったので、他の連中は入口ドアを少しあけて覗いている。
鍵はかけないのかな?
そんな余裕なさそうだけどね。
30分ほどひとりで飲んでから、個室を覗いてみるとちょうど女性がイク瞬間だった。
「いくーーー」
その一言を残して、失神してしまった。
だけど、オヤジは元気はつらつだ。
まだまだって感じで、誇らしげに見せつけている。
「私もーー」
40歳くらいの女性が勝手に個室に入ってオヤジに抱き着いてる。
オヤジも喜んで迎えたようだ。
「すげーな。絶倫じゃないか」
「見ているだけで、私も…」
「どれどれ?」
周りにも影響を与えているな。
おっと、俺も例外じゃないらしい。
隣の30代の女性が妖しげな笑顔で見上げてきて。
俺の敏感なとこに触りながら。
まぁ、いいか。
そういう場所だしな。
そんな感じで一回した後、俺はハプニングバーを後にした。
違法麻薬じゃなくて……無許可薬ですね。やっぱ違法じゃん。