第7話 最初の仕入れは堅いところから攻めた
うん、やっと面白いことになりそうだ。
こっちの世界で仕入れた胡椒を異世界に持っていけば、大金持ち。
いいじゃないか、いいじゃないか。
他にも高く売れるものもあるだろう。
向こうにはないような物がな。
そうだな、ライターなんていいんじゃないか。
火を起こすのはそう簡単じゃないしな。
火打ち石でやるんだっけな?
それは江戸時代かな。
弓で先がとがった木の棒を回してとか?
まぁ、どんな方法を使っているのか知らないが、ライターで付けたらびっくりするだろう。
うん、いい考えだ。
他に驚く物はないか。
ふっふっふ、時計はどうだ?
安い時計を持っていったら、驚くだろうなー。
「えっ、これで時間が分かるんですか! 欲しい、是非欲しい」
そうなるに決まっている。
時計もいいな。
そんなことを考えていたら、とっても大切なことを思い出した。
「腹が減た!」
よし、飯を喰おう。
腹が減っては商売はできぬ、だな。
よし、前祝で焼肉だ。
それもうまい肉じゃないと収まらない!
さっき、肉串を喰いはぐっているからな。
やっぱり、高級焼肉『徐庶苑』がいいか。
たしか駅の向こう側にあったはずだ。
☆ ☆ ☆
「な、なんでだ!」
高級焼肉『徐庶苑』は確かにあった。
しかし! しっかりとCLOSEの札が。
定休日かよと思ってみたら、営業時間外だった。
夜の営業だけらしい。
大衆焼肉『暗蔵亭』ばかりいってたもんな。
ランチもやっている。
しかし、気分は肉になってしまった。
どこか昼もやっている焼肉屋はないか。
やすっぽいとこじゃなくて。
あった! 行くなりステーキ!!
焼肉がダメならステーキを食べればいい。
なんて、マリーアントワネットにでもなった気がするぞ。
アメリカ牛だけじゃなくて、和牛ステーキがあったはずだ。
高いだろうが、前祝いだ、いけーーー。
☆ ☆ ☆
ふうっ、喰った喰った。
行くなりステーキ、いいじゃないか。
座った瞬間に肉を見せてくれる仕組み、俺は好きだな。
一番単価の高いのを厚く切ってもらい、目の前の鉄板で焼いてもらう。
そうだよ、それだよ。
炭火焼じゃないけど、鉄板焼きだって、うまい肉の喰い方だぜ。
ワイルドにミディアムレアにしてもらって、かじりつく。
ライスもサラダも無しで、肉だけ。
満足したぞ。
その勢いで、100円均一『イダソー』に来ている。
商品仕入れだな。
えっ、仕入れはもっといいとこじゃないのかって。
甘いな、『イダソー』はすごい店だ。
どうみても100円に見えない品が沢山ある。
100均慣れした日本人でも、「これ本当に100円」っていう商品に出会える店だ。
異世界だったら、100円に見えるはずがない。
高い値段をつけても、買うにきまっているぞ。
おっ、さっそくあった。
大きな盤面が特徴の腕時計。
シンプルだけど、ぱっと見はデザインもいい北欧かどっかのメーカー製に見える。
「これが100円なのか!」
俺も心の中で叫んでみたぞ。
「ふざけるな! 500円だと!! なぜ100均に500円商品など並べているんだ!!」
あー、むかついて口に出してしまった。
さすがに時計は100円はないか。
ちゃんと見たら、あるじゃないか。
どこを見ても値段が書いてない腕時計が。
小さなデジタル数字4桁しかない時計が。
これだって、すごく正確な時計なのは間違いない。
これにするとしよう。
これを、全部買ってと……6つあるな。
次はライターだな。
チャッカウーマンは違うな。
もっと、普通の100円ライター。
おおーっ、3つ入りだ100円か。
これだ、これ。
なんと100円と思ったら33円じゃないか。
仕入単価が下がったぞ。
これを全部買ってっと。12パックだから36個。
どうみても、仕入れ値の何倍の値段で売れるか楽しみだな。
あとは、胡椒。
うーむ、小さい瓶入りしかないのか。
本当は袋入りでもあればいいんだけどな。
まぁ、いいか。
高級品だから、少量でも高く売れるんだよな。
これが砂金だと思えばいいんだろう。
1本1万円でも安いだろう。
100倍狙いで行こう。
全部で20瓶あるな。
よし、これでお金持ち間違い無しだ。
後は、そうだな。
何かのために飴でも買っていこう。
お礼とかにも使えるだろう。
まぁ、1袋でいいか。
12個入っている、イチゴミルク味のでいいな。
よし、行くぞー。