第6話 お金を稼ぐ一番簡単な方法
「おい。異世界ってとこは金がないと何もできない場所なんだな」
「そんなことないね。あなたの元いたとこの方がお金の重要性が高いはずよ?」
俺はこの部屋を意識して、戻ってきた。
さすがにいきなり消えたらまずいかと思って、誰も見ていない路地裏に入って意識した。
すると簡単にこの部屋に入ることができた。
で、ちょっと管理人に文句を言ってみた。
あっさり言い返されてしまったが。
「うーむ。それもそうか」
「でも、よかった。まさか、持って出たお金使ったりしなかったみたいだし」
ぎく。
もうちょっとで日本硬貨が肉串になってしまうとこだった…それはカッコ悪いから黙っておこう。
「だったら、異世界で使っていいお金を渡してくれないかな」
「それはない」
「どうして」
「ここには、今、ベッドしかないから」
むむむ。
出し惜しみではなく、本当に何もないらしい。
「じゃあ、どうやって異世界の金を手に入れるっていうんだ? 冒険者になれってことか?」
「それはお勧めしません」
「へっ?」
「元世界は安心な世界だから、そこの住人に異世界冒険者が務まるとはおもわないの」
「お、おう」
「別の方法で稼ぐことをお勧めする」
「だから、どうやって?」
「お店をしましょう」
おいおい。お店をすると言っても商品はどうするんだ!
持ち出した物は売ってはいけないというし。
やっぱり、薬草を採取して売るしかないのかって言ったら、無理だと言われた。
なんでも薬草が生えているとこまでいくとそこそこ強い魔物がいるらしい。
ゴブリンとかスライムとか。
初見でも倒せるような魔物じゃない、強さのが。
「じゃあ、商品はどうするんだ!」
「元世界から持ってくるといいのよ」
「おいおい。何を言っているんだ。持ち出した物は売ってはいけないんだろう」
「ええ、持ちだしたらね。売るのはここよ」
「!」
ここ、つまり狭間の部屋を店にすれば、元世界の物を売ることができる。
そして、異世界のお金を手にすることができる。
「どう? やってみない?」
なんか、嫌な気がした。
妙に管理人がここを店にさせようとしている気がする。
もしかしたら、何かデメリットがあるんじゃないか。
「ちょっと聞くが」
「な、なによ」
「なんか隠していることないか?」
「ギクッ」
おい、今、ギクッと言ったよな。
普通言葉にするか、それは……思っていたとしてもな。
「ここで店をすると、何か起きるんじゃないか」
「えっと……」
「あー、やめた。やめた。そんな隠し事があるようなところで店なんかできるか!」
「待って! ちゃんと話すから」
よし、主導権が取れたぞ。
どうも、いままであっちに主導権を取られていたからな。
何が起きるのかを知っている管理人と、全く分からない俺。
「ここで店をすると、何が起きるんだ?」
「お店をして、売れるとポイントが溜まるのよ」
ポイントって、あれか…10個ハンコが押されると、どうのこうのとか……違うよな。
「ポイントが溜まると、ここが成長できるのよ」
「何! ポイントというのは経験値ってことか!!」
「そうね。そう考えてもらった方が早いわね。ポイントが溜まるとレベルがあがって広くなるのよ、ここが」
「ほう。それはいいことなんだよな」
「もちろんよ。広い方がいいじゃない。私も嬉しいし」
そうか。
こいつは俺にこの部屋のレベルを上げて広くしてもらいたいってことか。
「なぁ、管理人よ。店をして大きくできるのはマスターの俺だけなんだよな」
「その通りよ。だから、いい店にしてたくさん売って、ポイントを貯めてよ」
悪い話じゃなさそうだ。
ここは話にのってもいい気がするな。
現代日本の物だったら、異世界で人気が出るはずだし。
だいたい、異世界の高級品が日本では普通の品だったりするだろう。
たとえば、胡椒。
中世ヨーロッパでは、金と同じ価値があったと言われているぞ。
街並みをみたところ中世ヨーロッパに似ているから、異世界もそうだろう。
よし、店をやってみるとするか。
そうと決めたら、商品を用意しないといけないな。
「元世界に行ってくるぞ」
すぐに元世界の扉をくぐり抜けた。
腹も減っているし、急ぐことにした。
「ま、待って」って呼び止められているに、気づかなかった。