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第5話 異世界で知ったこと

「おおーー。異世界だーーー」


どう見ても現代日本じゃない。


レンガ造りの家に石畳の道、馬車が当たり前に走っている。


道行く人達は、欧米人ぽい金髪で彫が深い人達。

うーん、エルフや獣人はいないのかな。

普通の人間だけしか見えない。


「うーん。異世界に来たぞーって感じだな」


おっと、大きな剣を背負った革鎧を着こんだ男が通ったぞ。

冒険者って奴か。


どこに行くんだろうか。

やっばり冒険者ギルドなのか?


そういえば、白い部屋から扉をくぐったら、いきなり街に入ってしまった。

お約束の門番に身分証明を見せろというテンプレはスキップできたようだ。


「すると、次は冒険者ギルドに登録して、薬草採取の依頼を受けるってことかな」


そのためには、冒険者ギルドに行かないといけないな。

あの冒険者らしき男について行ってみよう。


☆  ☆  ☆


「ありゃ、冒険者ギルドに行くんじゃなかったのか」


残念ながら冒険者の男は別のところにやってきた。

どうも、街の中心地にある丸い公園のようなところだ。


歩いて来た石畳の道がぐるっと公園を周回していてロータリーのようになっている。

そのロータリーから自転車のスポークのように道が伸びている。


全部で12本の道があるが、一番巾が広いのが今、歩いてきた石畳の道とその反対側に向かう道。

それがメインの道らしく、この公園が街の中心にあるのではないかと思う。


「あの公園に何しに行くのかな」


冒険者の男は円形公園に入ると近くにある屋台に向かった。

その屋台は炭焼の肉串を売っているところらしく、香ばしい匂いがする。


見ていると、子供のこぶしくらいありそうな肉を3つ差した肉串を買っている。


「うまそうだな。そういえば、食事していなかった」


いつもは朝飯を食べるのだが、今日は起きてから何も食べていない。

すでに太陽は真上に来ているから、昼ご飯の時間だ。


きゅるるる~。


そう思ったら腹が鳴った。

しかし。


「金がない」


すごい問題に気づいてしまった。

そう、金を持っていないのだ。


もちろん、財布はあるし1万円札とちょっとくらいは入っている。

クレジットカードも財布に入っている。


当然、異世界では使えそうもない。

どうした、ものだろうか。


ええい。ぶっつけ本番でやってみるしかないだろう。


財布から、硬貨を何枚か取り出してみる。


「ちょっと尋ねるが……」

「なんでしゃろ」


おお、言葉は通じるらしいぞ。

それも関西弁みたいな感じがするが、まぁ、気にするのはやめよう。


「その肉串が欲しいのだが」

「1本銅貨3枚やで。秘伝のタレだから、最高の味や」

「あー、実はこの街のお金は持っていなくてな」

「なんやて。冷やかしかいな。貧乏人はさっさと帰れや」


うーむ。そうなるよな。

試してみるとしよう。


「物は相談なんだが。別のとこのお金ならもっているんだが」

「ほう。見せてみいや」

「これなんだけどな」


100円玉と10円玉を見せてみる。


「みたことがないやな、これ。こっちは銅貨かいな? おや、ずいぶんと綺麗な図柄が入っているんやな」

「どうかな。これで肉串を売ってくれないか」


10円玉をじーっと見ている。

お、なんか、うまくいく予感だ。


「よか。これとこっちの銀色の1枚づつで肉串一本でどや」


おおーー、交渉成立。

思ったより簡単だったな……うわっ、ダメだ!


あの部屋の管理人が言っていたこと思い出してしまった。

部屋から持ち出した物を売ったり上げたりしたら、あの部屋に戻れないって言っていたじゃないか。


あぶねーーー。

もう少しで異世界が帰れなくなるところだった。


「あ、ごめん。やっぱ、やめた」

「なんやねん。急に惜しくなったかい。駄目だな黒髪男は。優柔不断で」

「いや、ちょっと約束を思い出して。とにかくごめん」


そう言うと、俺は屋台から離れた。

うーむ。どうしよう。


やっぱり、冒険者ギルドを探さないとダメか。

それにしても、腹が減ったな。

さっきの肉串がうまそうな匂いなのがいけない。


金がなくてできることと言えば、ただ異世界を見て歩くだけか。

それもなんだかな、だな。


一度、元世界に戻って飯を食べて出直すか。

それとも、冒険者ギルドの場所を調べるくらいはするか。


「兄ちゃん。どうしたん?」


迷っていると、男の子の声を掛けられた。

年の頃は10歳くらいか、青い髪だから染めたんじゃなければあっちにはいない子だな。


「いやぁ、冒険者ギルドが分からなくて困っててな」

「兄ちゃん、お上りさんかな。この街のこと知らないんじゃないのかい」


うーむ、どうもバレバレらしいな。

もっとも、服装が違うからな。

そう見えるのも仕方ないか。


「ああ。この街に来たのは初めてで、今日ついたとこだ」

「だったら、案内してあげるよ」

「おお、そうか」

「はい」


男の子は手を出した。


なんだ、金を取る気か?


「あー、金はないな」

「はぁ? 金無しか? それなのに案内してくれってか。ふざけんな!」


それだけ言うと、さっさと行ってしまった。

うーむ、異世界も世知辛いとこらしいな。

金がないと何もできそうもない。


これは一度、帰って作戦を練り直すしかないな。


異世界に来たー。


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