第41話 ややこしそうなお客が来たぞ
「これはどこで仕入れたのでしょうか?」
今、うちの一番人気の商品、9色アイシャドウパレットを手に質問してくる。
綺麗な金髪の美中年で、いかにも品がいいスーツを着ている。
「遠くの国から仕入れてます」
まぁ、嘘じゃないわな。
遠いというか、時空が違うと言うか。
この金髪美中年、どうみても、ライバルにしか見えない。
それもうちみたいな零細店舗じゃなくて、大きな店舗をたくさん持っていそう。
「ほぉ、遠い国ですか。私もあちこちの国の商品をいろいろと見ていますが、似たような物を見たことがないですな」
「世界は広いってことですね」
「どのあたりの国でしようか?」
「企業秘密です」
あ、嫌な顔をした。
完全に人のことを下に見ている証拠だな。
「まぁ、いいでしょう。交渉を始めますか」
「なんの交渉でしょう」
「気づいていると思いますが、私はある商会の番頭をしています。貴族相手の仕事もしています」
「ほぉ」
「あなたのお持ちの商品は、私どもを通せば貴族に販売できますよ」
「お断りします」
あ、完全に怒りモードになったぞ。
だって、仕方ないじゃない。
転売できないんですから。
「なぜ?」
「当店は転売禁止です」
すでに、転売しようという客が何人かいて、その度に店から出れなくて揉めるから、ちゃんと『ここの商品は転売禁止です』と大きく書いて張ってある。
「それは小遣い稼ぎをしようとする庶民の話でしよう。我が商会はこの街で3本の指に入るほどのとこですよ」
「それなら、なおさら転売禁止です」
あ、顔が真っ赤になったぞ。
こんな小さな店に取引を断られるとは思っていなかった、ということか。
「うちが圧力を掛けたら、こんな小さな店、簡単につぶせますよ」
「そうなんですか? それでも転売はできません」
「その言葉、忘れないでくださいよ」
金髪美中年は真っ赤な顔をして帰って行った。
あーあ、とうとう、街の大きな商会に目をつけられてしまった。
今までみたいに、ガンガン売ることはできなくなるかもな。
まぁ、もうずいぶんと異世界の金は溜まったから、焦らずいこうか。