第33話 商品拡充した効果は意外なところに現れた
「おー、ちょっと来ないうちにずいぶんと商品が増えたな」
「これは懐かしい方ですね。お久しぶりです」
「そんなには経っていないだろう。今日は鬼嫁の機嫌取りのプレゼントを買いに来たんだが」
《ビッグ・アマゾーン》が開店してすぐのころのお客さんがまた来てくれた。
ちょび髭おっさんだ。
「奥様の機嫌取りって、何があったんです?」
「なーに。浮気がバレただけさ。下らんことをチクる奴がいてな」
「それは大変でしたね。それなら、うちの新製品はどうです?」
さっそく9色パレットを見せた。
男だと、このすごさが分かるか微妙だが、きっと奥様にはウケがいいはずだ。
「アイシャドウなんですが、こんなきれいなのが9色も入って、たったの銀貨7枚です!」
「ほう、ずいぶんと綺麗な物だな」
「ええ。どうです。女性ウケは抜群です」
「よし、これを2つもらおう」
「おっと、リオンさんの分ですか?」
浮気の相手はたしかリオンさんって言っていたはすだ。
意外とそういうことを覚えていて我ながら驚きだ。
「いや、今はルースちゃんさ。この子がまた良い娘でな」
「それは、それは」
うーむ、この人の恋人は憶えても無駄ってことだな。
「若い子でも、喜ぶだろうね、これは」
このおっさんの若いって言うのは20代ってことだ。
10歳の女の子の一押しだと言ったらびっくりするだろうな。
「もちろんです。2つで銀貨14枚です」
「他には……」
「そうだ。これはどうです? 立派な髭の人のための商品です」
「なんだ? これは」
「髭剃りなんですよ。こんな具合に使います」
この街は髭を生やしている男が多い。
もしかしたら、売れるんじゃないかと思って髭剃りを仕入れてきた。
まぁ、100円で7本入りの安いのだけど。
ちゃんと二枚刃だぜ。
「こんな具合に使います」
自分の髭でやってみせる。
朝、そったばかりだからシェービングクリームがなくても大丈夫だ。
「ほう。綺麗に剃れるものだな。ナイフより安全のようだな」
「そうなんですよ。いつもきれいに髭をそっていられるようですから」
売れるんだろうか。
女性向けじゃない商品も拡充したいところだ。
「いくらなんだ?」
「銅貨4枚です」
「安いな。それでは5本買うぞ」
やった、売れた。今度来たとき、使い心地を聞いてみよう。
「おっと、急がないといけないんだった。鬼嫁が帰ってくる前に家にいないとな。また変に疑われたら面倒だしな」
「ありがとうございました」
その後も続々とお客さんがやってきた。
青髪少年はコンスタントに新しいお客さんを連れてくるし、娼館で自慢された別の女性もやってきたりする。
商品が増えたことで、お客さんの財布の紐もゆるくなって、沢山買っていってくれる。
「うわぁー、きれい」
とにかく、女性は色とりどりの化粧品に耐性がないと見えて、持ってきたお金、全部使ってしまうお客さんが多発した。
店は順調すぎるくらいに順調だった。
あんなに買ってきた商品があちこち欠品になるほどの売れ行きだ。
「あー、又。買い出しをしないといけないな」
明日買わないといけない物を考えながら、今日の売り上げを計算したら金貨10枚を超えていた。
我ながらすごいと思うぞ。
閉店するために店名プレートを外して戻ると、声がした。
「おめでとう! レベルアップしてレベル2になりました」
「なんだ? 管理人か」
「狭間の部屋の面積が4倍になります」
「おおっ、広くなるのか! それは嬉しいな。手狭になって困っていたんだ」
「異世界と元世界の扉がもう1つづつ増えます」
「おー、それもいいな。支店を作れるってことか」
「お風呂が作れるようになりました」
「おー、お風呂!」
新しく緑の棒が追加された。
お風呂場用の棒らしい。
緑の線で囲うと床が緑になって風呂場になる。
さらに緑の線で囲うとそこが濃くなり浴槽になる。
狭間の部屋はベッドはあるが風呂場がないのが不便だった。
これはいい!
「他には? もっと何か、ないのかな」
「おしまいです」
あー、それだけか。
だけど、面積が広がって40㎡だから、ちょっとしたマンションの広さだぞ。
ワンルームじゃないマンションの。
いままで3畳くらいしかなかった店も広くできるな。
「よーし。明日はレイアウトをやり直しだ」
明日の予定も決まったし。
その前に行くべきところへ行こうっ。
もちろん、あそこだよ、あそこ。
主人公は商売が楽しくなってきたね。
僕も久しぶりに書くのが楽しくて。
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