表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/91

第25話 知らない間に目をつけられていた

「これなんですけどね」

「なんだ、これは」

「アイシャドウパレットという物らしいです」

「綺麗だな。どう使うんだ」

「目の上に塗る化粧品です。今までない商品と言えます」


この街、ホズンの街で一番大きな商会、ラックズ商会の会頭室。


番頭の私は、手下の手代と話していた。

話題は最近みつかった、不思議な商品だ。


「だいたいこの入れ物の材質はなんだ? 透明だからガラスかと思えば軽すぎだ」

「それも不明です」

「4色の化粧粉はどうやって作っているのか?」

「残念ながら不明です」

「何もかも不明なんだな。どこで作られたものか、と聞いても不明なんだろう」

「その通りです」


ホズンの街は穀倉地帯にある街で、近くを流れる川を利用した交易も盛んで賑わっている街だ。

豊な市民が多いのも特徴で、当然ながら化粧品の需要が多い。


ラックズ商会においても化粧品は利益率が高く主力商品のひとつ。

いままでは圧倒的なシェアで街の化粧品業界を仕切ってきた。


「しかし、大した量が流通している訳ではなかろう」

「まぁ、そのようです。出来立ての小さな店で売っているだけと言います」

「うちが調査に乗り出す必要などあるのか?」

「化粧品業界への影響はほぼありません。今は」

「これからは違うというのか?」

「もし、この品が貴族の貴婦人たちの手に渡ったとしたら、どうなると思います?」

「取り合いになるな」


今は娼館の女たちが手にしているに過ぎない。

金はあるし、着飾ることに積極的な女性達だ。


だからといって、他の女性達に影響があるかといえばノーだ。

娼館の女だけあれば、大きな問題になることはないだろう。


しかし、一度、貴族の貴婦人たちに渡り、社交界で使われてしまったらどうなるのか。

新しい物が大好きな貴婦人たちだ。

こぞって入手に走ることは当然起きうることだ。


「我が商会にも、入手の依頼が来るということか」

「それも考えられることです」


どこで入手できるのか、どうつくればいいのか。

全く不明な物であれば、我が商会で扱うのは難しいだろう。


「しかし、なぜこれほどの商品が大銅貨5枚で売られているのか?」

「売っている店主がどうも素人だと言います」


素人がなぜ、これほどの商品を手に入れることができたのか。

謎はいよいよ深くなるな。


「うちのメインの客層である貴族たちに知られる前につぶしておくのがいいか」

「私もそう思います」

「まずはうちの傘下に入れることを考えろ」

「はい。手配します」

「それが無理なら、力づくでつぶしてしまえ」


どんなに小さな相手でも、全力で当たる。

それが我がラックス商会の考え方だ。

創始者からそれを通してきたから、今のラックス商会がある。


小さな問題は小さいうちに片づける。

それが一番の方法だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ