第23話 店の新ルールが明らかになった
ひょろっとおっさんは、ある商会の番頭らしい。
誰か文句を言ってきたら、彼の名前を出せば大丈夫らしい。
商売人なら、いろいろと知っているだろうから質問しまっくてみた。
この街はフラン王国の第三の街で人口は市民登録されているだけで5万人。
ドワーフ大工は市民登録してあるから数に入っているが、青髪少年は登録されていない。
娼館で働いている女性のほとんどは未登録。
実際の人口は誰にも分らないが、未登録の人は登録された人より多いんじゃないかと言う。
10万人以上の街だから、大きな街だな。
俺が店をやっているのを知っているのはまだ20人ほどだ。
まだまだお客さんは増えていくだろう。
なんと言っても、ライバルがいないからな。
日本製の商品を仕入れられるのは俺だけだろうからな。
「商品を見せてくれないか」
同じ商売人だから、興味を持ったようだ。
もちろん、歓迎だ。
「不思議な商品ばかりだな」
「そうかな」
「化粧品はよくわからないが、鏡はいいな」
「こっちの小さい持ち運び鏡なら、大銅貨3枚でいいぞ」
こっちの女性はあまり鏡を持ち歩くという習慣がないようで、他の鏡は人気なのにこれだけは売れ残っている。
在庫処分で買ってくれないかな。
「おー、鏡が大銅貨3枚で買えるのか。何枚ある? よし、全部買うぞ」
さすが商売人だけある。
きっと、この鏡を欲しがるお客さんがいるのだろう。
「売った! 他のは欲しがるお客がいるから安くは売れないが」
「もし、売れ残った物が出てきたら相談してくれ。変わった物が多いからうちなら売れるかもしれないからな」
うむ。広く商いしている商会なら、失敗して仕入れてしまったものでも売れそうだ。
もっとも、ライターはいらないと言われてしまったが。
「そろそろ、行くとするか。ときどき顔出すよ」
「ああ。そうしてもらえると助かる」
新しいルートの販売先ができてうれしい限りだ。
しかし、問題が起きてしまった!
「おい、なぜかでれないぞ」
「えっ、扉は開いているじゃないか」
「そうなんだが、ここから外に出れない」
「どれどれ?」
俺は普通で出れる。
だけど、ひょろっと商売人はダメだ。
なぜ、ダメなんだ?
「それは、元世界の商品を持っているからよ」
おー、久しぶりに管理人の声だ。
狭間の部屋の。
「元世界の商品を持ち出せない? おかしいじゃないか。いままでお客は普通に持ち出していたぞ」
「それは、自分で使うか、誰かにプレゼントするか。そういう気持ちだったからだよ」
「えっ、それ以外では駄目なのか?」
「そう。別の世界の商品は、ここで売買か物々交換をする。それ以外は認められていないのよ」
うーむ。それはそうだな。
大きな商会が絡んだら、大量の商品が流れることになる。
異世界のバランスを崩してしまうかもしれないな。
「何をぶつぶつ言っているのか?」
ひょろっと商売人に不審がられてしまった。
管理人の声は俺にしか聞こえていないようだ。
「すまん。ここ商品の転売はできないそうだ」
「どういうことだ?」
「ここで買った鏡を誰かに売ろうと思ったよな」
「もちろんだ」
「それだとここから出られなくなる」
「なんだ、そのルールは? よくわからんぞ」
うー、せっかく儲かると思ったのに心外だと言う顔しているな。
分かるけど、どうしようもない。
「金は返すから、鏡はあきらめてくれ」
「うーむ」
「よし、1枚だけはプレゼントしよう。誰か女性に上げればいい」
「売ってはいけないのか?」
「駄目だ。売ると、次に来た時、入れなくなるぞ」
「うーむ」
「鏡は女性ウケいいから、奥さんや他の女性にプレゼントすればいい」
「そうだな」
「他の客も綺麗なお姉さんにプレゼントしたら、すごく喜ばれたと言っていたしな」
なにやら考えている。
まぁ、どの女にプレゼントするか、考えているような顔だな。
「よし、分かった。これはもらっていくよ。あー、売るんじゃなくてプレゼントならいいんだな」
「ああ」
「やっぱり、さっきの鏡を買うとするよ」
「ほう。そんなにプレゼント先があるというのか?」
「まぁ、そういうことだ」
にやりと笑った。
俺もにやりと笑い返した。
ひょろっと商売人は扉を無事越えて帰っていった。