第2話 特盛美少女って、要は……
僕は自販機美少女の前から、カウンターだけの店内に入っていった。
カウンターの席数は厨房を囲う形で16席か。
まだ11時を少し過ぎたばかりというのに、もう半分以上の席がうまっていた。
席と席の間には座ったときの頭より20センチは高い衝立が付けられている。
ひとつひとつのカウンター席が個室感を出しているのかもしれないな。
「よっこいしょっと、ん!」
席に座ると厨房が良く見える。
思ったより多くの人が働いている。
全部で8人で、タイプは違えど皆、美少女だ。
「お水どうぞ」
おっと、後ろにも美少女がいた。
それもJCどころか、JSじゃないかと思われる美少女がお水を運んできた。
驚いて見つめていると、にこっと笑ってくれた。
うわっ、ヤバイ。
子供にどきっとしてしまった。
これは犯罪に走ってしまう小学校教師の気持ちが分かってしまうぞ。
なんとか、気持ちを落ち着かせて厨房を見ると、見事な美少女だらけだった。
クラスに一人どころじゃない。
学年に一人クラスの美少女ばかり。
年齢は中学生から高校生くらいまでか。
18歳以上の合法ロリはいるとは思えない。
「特盛美少女ですね」
「え、ええ」
もちろん、ラーメンの名前の確認だと分かっている。
だけど、黒髪を腰まで伸ばした美少女に言われるとドキドキしてしまう。
厨房の中では、麺を茹でる美少女、チャーシューを寸胴から引き揚げて切る美少女、野菜を茹でる美少女等々。
役割が分かれているのであろう。
さらには麺を切る美少女、小麦粉をこねる美少女もいる。
麺から手作りとは、すごく本格的なお店らしい。
「お待たせしました。特盛美少女です」
待ってないぞ。まだ3分くらいじゃないか。
まぁ、最初から予定して作っているらしく、できたてほやほやだけど待たずに用意された。
「うわ、すげー」
「はい。とっても特盛になっています」
にっこり笑う美少女。
髪の毛がピンクでくるくると縦ドリル2本突きの美少女だ。
これまた、かわいいっ。
そうじゃない、ラーメンだ。
こっちも、すごい。
どんぶりは普通のラーメンどんぶりだけど、汁がぎりぎりの線まできている。
そこからもやしを中心にした野菜が山となっていて、その横には分厚くてでかいチャーシューが全部で4枚張りついている。
山の高さはテーブルから測れば30センチはあるんじゃないか。
山の麓には、半熟煮卵が半分に切られて4つ乗っている。
「食べきれるかなー」
「駄目ですよ、残しちゃ。私達が心を込めて作ったんです。残されたら泣いちゃいます」
「あ、絶対食べきります!」
そりゃ、こんな美少女に言われたら残せるはずないな。
あ、この娘、瞳までピンクなんだ…カラコンかな。
「うまっ」
「でしょ?」
まずチャーシューを食べてびっくりした。
噛むとほろりと崩れて、口の中にうまいチャーシューの味が広がる。
野菜もいい味だしている。
野菜の下に隠れた麺ももっちりした太麺で腰がすごくある。
ガツガツと食べる。
朝飯は抜いてきたから、すきっ腹にガツンとくる。
うまいラーメンだが、視線はラーメンに向かない。
ずっと作っている美少女たちの方を向いている。
「いやぁ、どの子がいいかな。湯切りした娘がいいかな。やっぱりショートカットで小柄の娘はいいなー」
つい、言葉に出してしまうと目ざとく、ピンク縦ドリルの娘がやってくる。
「ミランちゃん推しですか?」
「えっ、あの湯切りしている娘、ミランちゃんって言うんだ」
「はい。ミランちゃん人気なんですよ。やっぱり麺茹で係はセンターなんです」
「あー、そういうものなのね」
まだ中学生だろうと思うんだけど、湯切りがかっこいい。
しゃしゃっと、10年以上ラーメン屋やっていますって雰囲気が出ている。
そんなはずないけどね。
しかし、この特盛美少女ラーメン。
やたらと量がある。
やっと半分くらいかな。
もう、お腹がほどよくなってきた。
「ご飯も無料でお付けできますが、どうしましょうか」
「えっ、それは…」
「麺を食べた後、残ったスープにご飯を入れるとおいしいですよ」
「えーと」
「いらないですか?」
そんな……寂しそうな顔されたら、いらないって言えないじゃないか。
「じゃ、ください」
「はーい。特盛ご飯オーダーです」
えっ、特盛なんて言ってないじゃないかっ。
そんなに食べれるぞ。
「残しちゃ嫌ですよ。完食して完食スタンプもらってくださいね」
「なに? 完食スタンプって?」
「完食カードにスタンプを押しているんです。3つたまると、あっちのVIP席に行けるんです」
ピンク縦ドリル美少女が指さす先には、VIPと書かれた扉がある。
その先がどうなっているのか、気になるけど分からない。
「あそこは、どんなとこなの?」
「それは完食スタンプを3つ貯めた人だけが分かるんです。とっーても、素晴らしいとこですよ」
「……」
これはなんとしても、完食せねばなるまい。
そして、リピートして3回完食するしかないな。
完全にお店の罠にはまっている気がするけど、自ら罠に飛び込みたい気持ちが抑えられない。
それほど、ここにいる美少女たちは素晴らしすぎる。
「ふう。食べきったぞ!」
スープにご飯を入れた雑炊の最後の一すくいを食べると満足感に浸ってしまった。
あれだけあったラーメンとご飯、それも特盛。
食べきった、満足感はひとしおだ。
「ごちそうさま」
「おめでとうございます」
「えっ」
なんと、さっきまで麺茹で釜の前にいた茶髪ショートカット美少女が目の前にいる。
ミランちゃんだ。
「はい、完食カードです」
「うわ、嬉しいな」
彼女から手渡されたカードには、完食と書かれた欄が3つある。
「それじゃ、最初の欄にハンコ押しますね」
「おう!」
真っ赤で、でっかい〇に完食と太い字で書かれた印が押された。
うん、これは宝物にしよう。
「ちなみに3つハンコが溜まると特別サービスがありますよ」
「どんな?」
「あの特別室へ招待です」
「何があるのかな?」
「それは溜まってからの楽しみです」
「うーむ」
どうも完食3回はしない訳にはいかないらしい。
明日から忙しいから、あと2回となると週末土日だな。
「えっと、あと。完食記念に飴はどうでしょう」
よくみたら、ミランちゃんは1個1000円と書かれた飴が入った筒を持っている。
えー、飴が1個1000円。高いな。
「うーん、1000円はちょっと…」
「えー。駄目ですか? 特別サービスもあるんですが…ダメ?」
そんな見上げる目はずるいだろう。
ダメって言えなくなる。
だけど、特別サービスって何だろう。
「わ、分かったよ。はい、1000円」
「わーい、嬉しいっ。じゃあ、はい」
1000円札もポシェットに入れると、筒からひとつビー玉みたらたいな真っ赤な飴を取り出すと、自分の口に放り込んだ。
えっ、それって……。
「レアとミディアムとウェルダンとありますが、どれにします?」
飴をなめながら言う。
えっと、ステーキの話じゃなくても飴だよな。
「じゃあ、ウェルダンで」
「はい、少々お待ちください」
口の中でぐるんぐるんと飴を動かしている。
時々出てくる舌がエロっぽい。
「はい、できました。あーん」
「あーん」
飴を舌から舌へと動かしてくれる。
ついでに舌を絡めてディープキス。
JC美少女とディープキス。
危険な感覚がとんでもなく甘いキスになる。
「はい。ありがとうございました」
「あ、はい」
「お客さん、お帰りです」
ぼーっとしたまま、店の外に出た。
そこはいつもの秋葉原の路地だった。
やばい、泥沼にはまった気がするぞ。
気分で投稿しているので、今日、何話投稿になるか不明なの。
よかったら、ブクマしてくれると嬉しいな。