第15話 商売の基本を実践してみた
「今日はよく売れたな」
「うん。すごかった」
青髪少年と今日の商いの振り返りをしていた。
何事もやりっぱなしはダメだ。
振り返りをして、明日への商いの糧にするのだ!
「昨日は全然だったけど、今日は大商いだ。何が違うのか分かるか?」
「えっ、何って。商品が違うじゃん。昨日の商品じゃ売れっこないよ」
たしかにな。
お客さんを全然知らない段階で選んだ商品だったからな。
それで商売がうまくいくほど甘くはないな。
「いいか。商品を選ぶときは、買ってくれるお客さんをよく知っていることが重要なんだ」
「そりゃ、そうだよ。当たり前じゃん。お金を払うのはお客さんだからね」
「昨日の失敗は、お客さんを知らずに商品を選んだことだ」
「えー。それ以前だと思うよー」
「そう言うなって。俺はこの地に来たばかりなんだからさ」
お客さんをよく知ること。想像だけでなく、実際のお客さんに触れること。
それが商売が成功する秘訣だ。
今、俺はそれを実践している訳だな。
「高い商品を買ってくれるのは、娼婦でお金を持っているお姉さんだな」
「でも、あのおじさんも買ってくれたよね」
「もちろんそうだ。しかし、おじさんが使うんじゃなくてお姉さんへのプレゼントだ」
「実際のお客さんはお姉さんってことだね」
「そうそう」
まずは娼婦のお姉さん。
これが最初のメインターゲットだ。
娼婦のお姉さんはお金は持っているけど、スラム出身の人も多い。
だから、青髪少年も連れてくるのがしやすいと言う。
文化の進んだ日本だから、娼婦のお姉さんが喜ぶものも多いだろう。
まずは化粧品を中心に品揃えを増やしていこう。
どこの世界でも、お金を使うのが好きなのは女性だと思うしな。
それは日本でも異世界でも一緒だろう。
「俺の店が成功するためには、もっと良くお客さんを知ることが必要だ」
「もっと? えっと、どういうことかな?」
「お客さんとお話をして、どんなニーズがあるか把握する」
「うん。だけど、どうやるの?」
「ただ話を聞くだけじゃダメだ。しっかりとお客さんと触れ合いをしないとだな」
「触れ合い?」
そうだよ、青髪少年。重要なのは触れ合いだよ。
しっかりと触れ合うかどうかで明日からの売上が変わってくるんだぞ。
「今夜はお客さんをもっと知るための実戦をしようと思う」
「具体的にはどうやるの?」
「だ・か・ら。触れ合いだって言ってるだろ。あのお姉さん達と触れ合いができる場所、君は知っているじゃないか?」
「あっ、そういうことね。良く知っているけどさ。案内は大銅貨1枚だよ」
やっと伝わったようだ。もちろん、案内料が掛かるのは承知している。
情報を得るための必要経費だ。
「おう。今日は俺もそこそこお金持ちだ」
「商売をうまくするには、お客さんのこと、良く知らないとだね」
「うん、そうだぞ」
「じゃあ、どんなお姉さんがいいのかな。予算はどのくらい」
「おっと。いきなりか! やるな」
「今の僕のお客さんは、あなただよ。お客さんのことを良く知らなきゃだよね」
「うん、いいぞ。ところで、相場ってどのくらいなんだろうか?」
こっちの世界の相場が全く分からない。
知っているのは肉串が銅貨3枚だということ。
しっかりとした肉を使った大串だから、日本だと300円くらいすると思う。
だから、銅貨が1枚100円くらいの価値だろう。
銅貨が10枚で大銅貨。大銅貨が10枚で銀貨。銀貨が10枚で金貨。
そのくらいの基礎知識はある。
だけど、娼館の相場は全く分からない。
でも、実に心強い味方がいる、ここにな。
「相場はピンキリだよ。貴族じゃないと入れない所もあるけど、普通の庶民が入れるところで一番良いところは金貨数枚くらいするよ」
「おー、高級店だな。さすがに、そのレベルはまだ無理だ」
「それなら、街の普通市民が利用する高級店なら、銀貨3枚だよ。その下の中級だと銀貨1枚さ」
「おお。それなら、今日はちょっと贅沢をして銀貨3枚のところに案内してもらおうか。お客さんに触れ合ういい機会だ」
「うん、了解。だけど、まだ早いかな。一番お姉さんが多くなるのはもうちょっとしてからだね」
「そうだな、タイミングは重要だな。早すぎてもいけないし、遅くて他の客にもっていかれるのも癪だ」
「最高のタイミングで案内するよ」
よし、商売を成功させるために、お客さんと触れ合いを実践するぞ。
なんと言っても、商売のためだよ、商売のため。
重要なところだから、2度言ってみた。
しかし、どんな女がいるのか、楽しみで仕方ないな。
あー、こいつ。それしか頭にないのか。
せっかくの異世界なのに。
でも続きが気になると思ったら、↓で☆☆☆☆☆を入れましょう。