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第1話 秋葉原のニューウエイブか? 

僕はいつものように秋葉原を歩いていた。


最近は、コンセプトカフェも行きついてしまった感がある秋葉原だったが、月に一回は足が向いている。


がっつり系の店でランチを食べて、かわいい女の子のいるカフェでお茶をする。

後は中古パソコンやパーツ屋を覗いてみる。


大して代わり映えのしない秋葉原だが、高校の頃からもう10年も通っているから習慣のような物だ。


「ん? なんだろう、これ」


メインの道から一本入ったとこにある通り。

このあたりは雑居ビルが多く、コンセプトカフェや、やたらとマイナーなオタク向けのショップが入っている。


それはごく普通の雑居ビルの1階にあった。

何屋か分からない、真っ黒い壁がすっぽりと覆っている。


2階から上はごく普通の雑居ビルだから、余計に違和感がある。

真っ黒い壁の他は、やはり真っ黒な扉がひとつ。


その扉には、よく見ないと分からないくらい小さな銀色なネームプレートがついている。


「なんて、書いてあるんだ?」


じっと見てみると、店名らしい。



【太郎系ラーメン《美少女》】


えっと、太郎系ラーメンというからには、がっつり系の背脂ガンガンラーメンなのだろう。

でも、美少女という名前が意味が分からない。


豚を咥えた狼男がロゴマークの『ウルフ麺』という太郎系ラーメン店は知っている。

秋葉原の有名店で、僕も何度も食べている。


太郎系ラーメンは野性的な名前の店がおおく、がっつり食べさせてくれる。


それなのに《美少女》って店名はどうよ。

だいたい、太郎系なら黒じゃなくて黄色だろう。


でっかい黄色の看板に太い黒文字が定番じゃないか。


それなのに、良く見ないと見落とす感じの小さなネームプレート。

常識外れもいいところだ。


「あー、仕方ない!」


中はどうなっているのか、気になって仕方ないじゃないか。

まんまと販促作戦にやられた気がする。


まぁ、秋葉原だからぼったくられることもないだろう。


「よし、入ってみよう」


入口を入るといきなり、美少女が出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ」

「お、おう」


それもJKじゃないだろう……どう見てもJCにしか見えない。


「太郎系ラーメン《美少女》にようこそ。このお店は初めてですか?」

「おう」


マジ、ビビった。


ツインテールにまとめた黒い艶々な髪。

白く透き通った肌、大きくてキラキラな瞳。


間違いなく美少女だ。

秋葉原にたくさんいる地下アイドル級なんてものじゃない。

メジャー級の美少女。


「それでは当店の説明をさせていただきますね」

「お、おう」

「当店は食券制になっています。券売機の私で買っていただいて中で渡してください」


そう、いきなり登場した美少女。

コスプレをしているらしい。


なんのコスプレかというと、券売機なのだ。

頭の上にはお金を入れるところがある帽子をかぶっていて、Tシャツが券売機の絵柄なのだ。


「おすすめは美少女ラーメンと特盛美少女ラーメンです」


確かに、いろいろな種類のラーメンのボタンがついている。

チャーシュ麺やダブルチャーシュー麺、煮卵チャーシュー麺に激辛ネギ麺等々。


だけど、美少女ラーメンと特盛美少女ラーメンだけボタンの地の色が白ではなく黄色で目立っている。

目立っているのはそれだけじゃない。


そのボタンは膨らみかけているふたつの胸の上に置かれている。


「えっ」


美少女ラーメンのボタンがぽっちりと盛り上がっている。

それって、ノーブラだとしか思えない。

だけど、JCだぞ…そんなバカな。


「あ、特盛美少女ラーメンのボタンなんですが、ちょっと調子が悪いので強くぐりぐりって感じで押してくださいね」


いかん、美少女の口からぐりぐりって聞いただけで、股間が盛り上がってしまった。

いいのか、本当に?

ボタンをぐりぐりして。


「特盛のお客さんはみんなぐりぐりするから、弱く押しても反応しなくなってしまいまして」


反応って…どんな反応するの?

いかん。

ここは決して風俗店じゃない。

健全なラーメン屋のはずだ。

下手なことをしたら、監視カメラがついていて、通報されるってオチしか考えられない。


「じゃあ、特盛美少女ラーメンにするかな」

「はい。それでは強く押してくださいね」

「おう」


特盛美少女ラーメン、1600円と書かれたボタンを押す。

というより、ぽっちを触ってみる。


「あん」

「えっ」


あくまで自販機として反応すると思いきや、普通の美少女の反応が返ってきた。


「もっと強くぅ」

「おう」


もちろん、股間ははちきれんばかりの状態だ。


「このくらいか?」

「ああん。あっ」

「もっとか?」

「いいっ」


いくら押しても美少女としての反応しか、しない。

どうして、だろう。


「お金を入れてください」

「あ、ごめん」


そりゃそうだ。

お金を入れないでボタンだけ押していたら自販機としては反応しないだろう。


帽子のスリットから、1000円札を二枚入れてみた。

そして、ボタンをぐりぐりしてみた。


「ああっ、いいっ」

「ほれほれ」

「はいっ」


右手を突き出してきた。

そこには、特盛美少女と書かれた食券が乗っていた。


「おう」


次は左手を突き出してきた。

そこには400円が乗っている。


「おう」

「ありがとうございます」


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