白
「また君はここにいたのか」
「…」
折角来て話しかけたってのに、一睨みして終わりかい。
まったく。彼の無口具合は変わらないようだな。
いや、あの時を期により一層、言葉は減ったか。
ここは、この世界で一番神界に近いと言われている、とある小国の山の頂上。
そこに存在するのは
1つの
墓。
「いいかい、“青いの”」
「君はいつまで囚われているつもりなのさ」
「ここにいる君の“片割れ”は帰ってこない」
「それこそ」
「永遠に」
その瞬間、広がる青い濁流。
「……黙れ」
荒れ狂う水流。それは青い彼の普段は見えない心を表していた。
その身を結界で守り、声をかけて続ける。
囚われている彼に、周りを見て欲しくて。
「忘れろと言ってるわけじゃない。でも、立ち止まるのは望んでいないさ」
そう、彼女も僕も皆も。
「……ない」
「ん?」
「…片割れの居ない、お前には分からない」
「…この気持ちなど」
なるほど。
「そうだね、分からない」
おい、君が言ったんだから、睨むなよ。やれやれ。
「全ては分からないけど、同じ性質を持つ者だ。何となくは想像している」
まったく。青は頑固な奴が多いよ、いつも。
「君のその心を溶かす者が現れると願うよ」
そう声をかけて立ち去る。
待ってて。探すから。そのモノを。
少しあげよう。
ま、僕らが見つける時点で君のモノにはならないけどね。