知らなきゃ、この森を。この国を。視野は広く、な?
感想いただいて、やる気が出まして。
一気書きです。
今回は情報整理回です。
人が増えると、ごちゃごちゃしますね~(まだ登場人物4人…)
春も終わり際。森の方を見ると生い茂る木々が鮮やかな緑色を纏い、その合間を縫ってきた心地良い風が吹く。
家の中に忍び込んできたその風に、開いていた数冊の本がはらはらと捲られる。
顔にかかる紅茶の香りに、ついつい頬が緩むのは仕方ないだろう。
この森に来てから、もう一年が経ち、二度目の夏が来る。
今日も今日とて、読書の日!
というものこの夏に大陸の方で、以前出された光属性と雷属性の関係性についての論文に異議を申し立てて、別の考えを出すと言っていた人がついにそれを提出し公開するという。知ったきっかけは、たまたま取った他国の新聞なんだけど。
その知らせを聞いてからは、その論文の発行日まで読書で、その後、雷属性の検証をしようと決めた。
まぁ、雷属性の理解がいまいちできないからっていうのが進まない理由だし?
今は、春の3カ月目、【スキロポ】の月。この呼び方を知ったのも最近なんだよなぁ。
それで気づいたんだ。いや、前から分かってはいたけど。
俺、この世界の事、知らなすぎる。
まず、この森の事。
なんだっけ?青藍は、人に認知されていないだっけ?
……何となく、この前のマクシームさんを放置した理由が分かったよ。それほどに人と関わってないんだな、貴方は。
次に、この国の事。
何となく平和ってくらい?…ハハハ、こりゃひでぇ。
そこで、使おう 『最後の知性くん』~!
あ、あれっす。無駄に時間のかかるこの世界の常識を聞ける機能。
ホントわけわからんよな。なんでこう、イチイチ質問紙に書いて、答えも俺の手を使って紙に書かれるわけ?こーゆーのは脳内の呼びかけで一発じゃないのかよ。あるだけマシだけど。マシだけど!
って、わけで。
書きました。[この森の事を教えて]って。
んで、答え。
[入っちゃいけない森]
[魔物を見かけない不気味な森]
[入ったら戻れなくなる森]
……常識くん。そうじゃないんだよ。
クソォォ!分かっていた!分かっていたさ!この世界の常識聞くわけだから、そこまで詳しいことが常識として知れ渡っていないと信ぴょう性は皆無だし、まず、この森は入っちゃいけませんって広まってたらそれで終わりだよな!それ子供あたりに広めるために怖い噂もつけたんだろう!分かる!分かるけど!!
…って、青藍、いつからいたの。
紙に何か書いたと思ったら膝から崩れ落ちた俺見て、えぇ…って引いてる感じですかね!そうっぽいな!なんかもうヤケクソだよ!クソウ!
「…なんかごめん…?」
「いや、青藍は悪くない。俺が悪かった。ごめん。いらっしゃい」
うん、首傾げているが、深くは聞くな。傷がえぐれる。紙で切った傷口にちろっと水垂れるみたいに痛い。あ、そんな痛くないかも。
そんな心境を知ってか知らずか、知らねぇよな 知ってくれるな、青藍はロッキングチェアに向かっていき、あ、いつの間に本を、とったと思ったらもう読んでいた。はっや。俺に対しての興味なしかよ。今はなくていいけど。
ここで青藍に聞いてもたぶん駄目だろうなぁ。だって俺並みにこの森にずっといるわけだし?
…一応な、一応。
「青藍」
「ん?」
あ、これ前もあったな。相変わらず顔上げてくれないのか。いいけど。
「この森って、どういうところ?」
「…俺のいる森?」
…なんか、もうこれ以上情報出てこないだろうなって悟ったよ。おうよ。
「…聞くなら、今から来る者にも聞くといい」
「ん?」
…ん?お?これは!
「お邪魔いたします。こんにちは、ハクト殿」
「マクシームさん、いらっしゃいませ、こんにちは」
おぉ!マクシームさんじゃないか!結界のかかる感じはもう覚えたぞ!ここに来る人は青藍かマクシームさんだけだけど。あ、鳥さんもたまに来る、たまぁぁぁぁぁに。
「…今日もセイラン殿はいらっしゃるんですね」
「…」
青藍よ、返事はしようぜ。あ、本に夢中?さいでっか。
とりあえず、お好きなところに~。あ、それは俺のなんで。あ、知ってます?そうかそうか。
「今日はいつもより少し早いですね」
「えぇ、午後休みをいただいたので」
そう、今日はマクシームさんが来るいつものペースより少し早い。
だいたい3日に1回なのが、今日は2日しか経っていない。…本の続きでも気になってしまったのか?
「ここの紅茶がとてもおいしくて」
…うわぁぁぁ!!!めちゃくちゃ嬉しい!!
入れ方を俺なりに頑張っているから、余計にその一言はうれしいです!!
よーし、今日もおいしい一杯入れちゃうよ!!…青藍、欲しい時は声をかけようか、目で訴えないで。分かるからいいけど。
まず、お客さんに出すためのポットとカップ3つに熱湯を注いで置いておく。
その間に茶葉を出す。今回は気分でニルギリ。特にこれと言って特徴のない紅茶と言われているが、個人的には、ストレートでもレモンでもミルクでも何にでも合う万能茶葉さんだと思ってる。
ポットの中のお湯を一度捨て、お茶こしの中に茶葉を入れる。今回は2杯分、いや、俺も。だから3杯分。
入れた茶葉に直接かからないようにお湯を注ぐ。前に調べたときに勢いよく注ぐとよいとあったので、それからは一気に注ぐようにしている。
注いだ後は蒸らす。だいたい2分半。それ以降はお好みで濃さを変えてくれと思ってる。今回は2分半で引き揚げよう。蒸らしている間は、熱が逃げないように光の結界。結界の使いどころが違うと前に青藍に言われたが、使えるモノは使わないと!
その間に軽食の準備。今日は気分的に卵を使いたかったので、パンを軽くあぶり、その上にサッと作ったスクランブルエッグを乗っける。はいっキタコレ~、絶対うまいやつぅ~。
二分半分の砂時計の砂が落ち切るのを見て、こしを上げる。
実は結界を張っていたカップの中のお湯を捨てて、3つに濃さが均等になるようにまわし入れていく。
良く言う「ポットから出す美味しい最後の一滴」は、マクシームさんに。
それぞれの前にカップを運ぶ。…青藍、今度最後の一滴あげるから。我慢してください。そんな目してもダメです。…あー、ごめんて。今日はあげないけど。
そんなやり取りを経て、あ、パンも配った、休憩。という名の軽い昼食。今お昼ちょっとすぎたくらいだし。
「ごはんまで、ありがとうございます」
「いえいえ」
ちょっと今回は質問したいから渡したってものあるからな。えぇ、下心ですよ。フへへ。
「助けていただいてから、何か返そうにもこの家は既に揃ってますから、どうお返ししたものか」
「あの、その、実はマクシームさんに聞きたいことがあって」
「はいっ!何なりと!」
おうっ!ビックリ。そんなにお返ししたかったのか。その意志や、ありがたや。
「俺、この森や国のことあまり良く知らないんです」
「…なるほど」
うーん、なんといえば伝わるか。
「ここから出たことがなくて」
「!!そう、なんですね」
ん?伝わった?
「つまり、外部からどういう認識なのかを知りたい。といったところでしょうか」
「はい」
そー!!それ!!マクシームさん!!教えて!!
「森と国ですね…
ではまず、この森から。
この森は、このリクアチア国という島の北東に位置しています。そのため、『北東の森』と呼ばれることがほとんどです。ただし、この森に存在すると言われている守護者様、一匹のドラゴンですね、この方がいることから『守護者の森』とも呼ばれています」
ほうほう。これ、青藍の言ってた俺のいる森ってのも間違っていないのか。
「まぁ、知っての通り、守護者と呼ばれるこの森を統治している存在のドラゴンには基本お目にかかることはありません。それこそ一生に一度出会えれば幸運と言われるほどに。あ、守護者というのは、人を襲わず害となると判断した魔物を倒すことから、人をも守る者ということからそう呼ばれているようです」
ん~?青藍さん~?…全力で目そらしてるのバレてるからな?
「記録の残っている話では、数百年前に当時の王族と『安寧を』と約束をしたために、この森には基本はこの森への立ち入りが禁じられたとか。今もそれは続いており、今回の春に警邏で入ったように年に数度立ち入るだけにしています」
あー、やっと分かったよ、この森に客来ない理由。
そりゃ来ませんよ、立ち入り禁止だから。それも国に言われて。おいこら少年め。あ、いや、あの時は店やるって決めてなかったから、勝手にやった俺が悪いのか。当たってごめん、少年よ。
「この森について私が知っているのは、とりあえず、このくらいですね。後は文献を探せば少しは見つかるかもしませんが、かなり古くなってしまうと思います」
「分かりました」
ま、ここ図書喫茶ですから。こと本に関しては集めなければ!
マクシームさんに青藍もいるからやるのは後で。
「はい。質問いいですか?」
「えぇ。いいですよ」
あぁ、なんでそんな笑顔がまぶしいの。じゃなくて。
「マクシームさんの持って居る情報は、普通の人も知っている物なんでしょうか。それともマクシームさんが軍所属だから知っている情報ですか?」
いやぁ~に詳しいなぁとおもったんだよ。だって、常識くんに聞いた情報より格段に多いし。詳しいし。あいつがポンコツ?……可能性ある。
「あ~、それは」
それは?
「私が個人的に調べたところが大きいです。たぶん」
「個人的に?」
つまり?
「軍に所属していれば基礎情報として、普通の方より詳しくはなります。例えば呼び名とか。
しかし、私はそれに自分自身で調べた情報や直接近隣の方に聞いた情報もあるので」
なるほど~。まぁ、警邏するってくらいならそれなりに知っていなきゃいけないのは当たり前だとして、それプラスαの情報が今のか。
これ以上の情報が出てきたらは信ぴょう性がないか、ごく一部しか知らないと考えていいかな。
プラスでいくつか質問はしたけど、やっぱり情報がないみたいだし。…青藍には、あとで聞こう。今は聞かん。ホッとしてるみたいけど後でな?
よーしっ!次!!
次は、この国。リクアチア国について!
「リクアチア国については、基礎情報のみと思ってください。私はそこまで詳しくは知りませんから。
まず、リクアチア国は島国です。周辺を海に囲まれています。陸続きの国はありません。
この森より南に行くと人里があり、国の中心部に王都があり、王族がいらっしゃるのもそこにある館城です。
今代は王と王妃、王子が二人に王女が一人。第一王子には既にご結婚されていて、お子さんもいます。
基本、この国は外部からの侵略が極端に少ないです。それに代々の王族の性格上、他に攻めていくということもありません。
そのため、この国は閉鎖的な面もあります。しかし、安全面では他国に比べて一番ではないでしょうか。
また、先ほど述べたように島国ですから、交易や戦いで用いられるのは船がほとんどです。そのため、船関係や海関係は陸より強いと言われています」
あ、私は陸軍です。というマクシームさんの眉が少し下がったのを見つつ、なるほどと思った。
まぁ、ホントに簡単な基礎知識って感じだけど、ありがたい。もし常識くんに聞いたらなんて返ってくるか分からんし。ホントに。
国についてはとりあえず、それだけでいいかな。個人的にはいくつか気になることはあるけど、質問して答えてもらっても確認しようと森を出る気もないし。ハッキリ言って、この森の情報貰えて満足だし?
「簡単にしすぎましたかね?」
あ、返事してなかった。
「いえ、十分です。ありがとうございます」
「いえいえ、少しでもお返しできていたら良かったです」
そうか、お返ししたかったのか。…いい人やぁ。
「紅茶、飲みます?」
空っぽだよな、それ。
「あ、では、お言葉に甘えて」
青藍は…あ、いります?そうですか。声に出そうか?
茶葉は、今日はニルギリのままでいいか。
この後、少し質問したけど、この森から出ることなんてあるのかな。
それから、レモンティーにして出したら、二人とも美味しいって反応(マクシームさんは声に出し、青藍は目がキラキラ)してくれて、嬉しかった。んー、次来た時は何の茶葉にしようか。
それから、マクシームさんにいろんな情報をもらう代わりに飲食と本を提供し、青藍もサラッといるそんな日が続くようになった。
そして!呼び名が変わったよ!だってマクシームさんって長いから!ルレウムさんって呼んでる。
「ルレウムさんも敬語でなくていいのに」
「まぁまぁ、それは追々で」
ま、いつか、な。
相変わらずそれ以外は来ないし、俺も出ないから関わりはないけど。
充実しているなって思えた。
いや、客は欲しいけどね?
あくまで、個人の見解です。
今回の説明はその一文に限る内容でした。
あ、紅茶は2分半。おすすめです。ニルギリも。
『楽しく読みやすく』をモットーにしていますので、矛盾を感じたら、報告して下さい!次に生かします!(変えるのは次から。そう次から)
マクシームさんの王族へのあの呼び方は不敬に感じると思いますが、実際外ではあんなもんじゃね?と思ったんです。嘘です。メンドクサカッタだけデス。