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消えたものは

作者: 31

ある日僕が家の物置を掃除していると、ひまわりのような眩しい黄色のノートが出てきた。表紙にはまだ字を書き始めて日の浅いことがよく分かる字で『にっき』と書いてある。

「こんなもの、どうしてうちに?」

うちには子供はいない。僕と妻の二人だけだ。だから、こんなものがあるはずはないのに。

手に取って1ページめくってみると、そこにはさっき見たのと同じ字がぐちゃぐちゃと統一感なく並んでいた。

『9がつ2にち

きょうは、おにわであそびました。

そしたらおんなのこがきて、なにしてるのってぼくにいいました。ぼくは、あそんでるんだよ、とこたえました。じゃあわたしとあそばない、とおんなのこはぼくとてをつなぎました。すごくつめたくてひやっとしたけど、ぼくはおんなのこについていきました。

おんなのこはどんどんあるいていって、きづいたらぼくとそのおんなのこはふかいふかいきりのなかにいました。とてもこわい。ぼくはにげようとしました。けど、にげられませんでした。

ぼくはこれから、どこかくらくつめたいところにつれていかれるみたいです。もう、おとうさんとおかあさんにはあえない。だからいま、さいごにすこしじかんをもらってこれをかいてます。これはちゃんとあとでとどけてあげるっておんなのこがやくそくしてくれたんです。

おとうさん、おかあさん、ごめんなさい。いつもわがままいってごめんなさい。いっぱいあそんでくれてありがとう。

こんなことになっちゃったのは、きっとぼくがわるいこだったから。だから、おにがむかえにきたんです。

そろそろいかなきゃいけません。さようなら。』

そこで、日記は終わっていた。後のページをめくってみたが、書いてあるのはこのページだけだ。

日記帳の裏を見てみると、『ゆうた』と書いてあった。

「ああ、悠太くんか」

足立悠太くん。弟の息子、つまり僕の甥だ。

「面白いことを考えるな、子供って」

なぜこんなものを書いたのかはわからないけど、大した想像力だ。将来は小説家かもしれない。

「でも、なんでこれがうちに…」

すると、物置の外から妻が「お昼ご飯できたよー」と呼びかけてきた。

「今行くよ」

日記帳を手に持ったまま、僕は立ち上がった。

その拍子に、悠太くんは今年の9月から行方不明になっていることを思い出した。



読んでくださり、ありがとうございました。とにかく短い小説が書きたくて書いてみました。

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