おいしいだいこんのたね いりました
『おいしいだいこんのたね いりました』
黄色い僕のカラダには黒い文字が印刷されている。
はて?
美味しい大根の種、炒りましたなのかな。
薹の立った大根に咲く花が散ると、さやに入った大根の種が現れるけれど、それを炒った物なのかな? 茹でたものを酢味噌で食べるとは聞いたけれど。
美味しい大根の種、煎りましたかも。
成熟した種を豆みたいに煎るのかな? 羅葡子っていって肥満に効く漢方薬なんだってね。
でも―—何かが違うような気がする。
僕が張られているのは種苗店のドア。料理のお店でもないし、薬局でもないよ。
なんだろう、もやもやするよ。
とても強い日差しのせいか、もやもやするよ。
カラダの下の接着剤も溶けてしまいそう。
風でも吹いて、頭に付いた何かをはらってくれないかな。
彼が呟くと自動ドアがフゥと息をつく様にスライドします。
大根と同じアブラナ科の黄色い花びらが振り落とされ、隠れた文字が現れます。
『おいしいだいこんのたね”は”いりました』
出張先の長野で見た、ステッカーのお話でした。
おいしいダイコンの種はいりましたという文字を見て、”美味しい”→ダイコンの種……
ダイコンの種って美味しいんだ~と暑さにやられた筆者がおりました。