《変なイキモノだったら》六章
一通り港街を散策し終えた後、ガロはルイルアという名のお店でローブを選んでいた。
「アタシ、これがいいっ!」
彼女が選んだのは、茶色のローブだった。
「それと同じヤツ持ってるんじゃないのか?」
「まったく違うんだけど、ほら、こっちは薄手でしょ? この裏地の刺繍も可愛いし、着た時に広がる感じも良いじゃない?」
あ、そう。俺には違いがわからんわ。
会計を済ませ、嬉しそうに跳ねているガロを見ながらギィに欲しいものはあったか? と尋ねたが彼女は首を振った。
「遠慮しなくてもいいんだぞ?」
しかしギィは首を振るのみだった。
その後、様々な店を回ってみたがどうも欲しい物は無いらしく、時間も迫っていたのでホウキを返却しにキツネの魔具店へ向かった。
返却して店を出ようとした時、手を引く感触に振り返るとギィはホコリの被った棚を見つめていた。
「…………これ」
視線の先には十五センチほど小汚い泥人形が何体も並べられていて、とりわけ不格好な一体をじっと見つめている。
「いや、こんな汚い人形じゃなくてもっと可愛らしいのを買ってあげるよ?」
そう言ったのだが彼女は首を振った。
「…………ピョロと並べるの」
ピョロってなんだ? と思っていると、ローブの中からあのクマだかネコだかわからんヌイグルミを取り出した。それ、ピョロって名前だったのか。
「じゃあそれを買おうか?」
店を出て、泥人形をギィにプレゼントすると彼女は嬉しそうに飛び跳ねた後、「あっ」と声を発すると、
「…………ありがとうございます」
そう深々と頭を下げた。
よく言えましたっ!
そしてピョロを取り出すと、その破れた腹の中にグチュグチュと指を突っ込み何かを探し始めた。
そこ、収納になっているんだ……。
「ブビィ……ブブブッ」
苦しそうなピョロの悲鳴を無視しながら、「あったっ」と声を上げたギイの手の中には小さな指輪が入っていた。
「…………あげる」
細い指で俺に差し出していたのはグリーンの玩具の指輪だった。お返しって事か。
「いいのか?」
頷く彼女にお礼を言うと、それを受け取った。小さくて小指にも入らないものだったが、俺はそれを握りしめた。『感謝の気持ちを忘れない』、ちゃんとわかっているじゃないか。
そして、店を出た所で俺は悩んだ。ガロやギィの好みは多少なりとも理解しているつもりだったが、ルイに関しては不明だった。本か? はたまた蟲か? 拷問具はちょっと高くて手が出なさそうだし、ホウキを返却してしまったから風止め地区のあのお店に行くのは難儀である。
「まだまだわかってないねぇ」
ガロはそう言うと俺の手を引いて近くの雑貨店に入り、いくつかのネジを買った。
「ただのネジ? しかも安物じゃないか」
「そうよ、これが喜ぶんだから」
まさか、こんなモノ貰ったって――
「えええっ! これ貰ってもいいんですかっ! 凄く欲しかったんですっ! うわぁ、嬉しいなぁ、ありがとうございます」
喜んだ。うわっ、抱きついてきた。長女よりも更に発達している胸を押し付けてきた。マジか。そんなもので良いのか。無類のネジマニアか? 安いな。それならもっと買えばよかった。
ガロを見ると、彼女は「言ったでしょ?」的なドヤ顔で俺を見ている。
……さすがお姉ちゃんなだけはあるな。




