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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第九章 空中都市ハイランダー、出撃
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ファニールのキャラデザイン・コンセプト

 それでもなかなか震えが止まず、おまけに涙も止まらず、ファニールはしばらく、身を固くして抱かれるままだった。


(もしかして、抱かれるのは嫌かもしれないな……普通の女の子は、いきなり抱かれて喜ぶはずないだろうし)


 ベルザーグの姿になってからこれまで、なんとなく洋画に出てくる気安い外人男みたいに、女の子はバンバン胸に抱いていたが、この子に限っては駄目かもしれない。

 そう思い、ベルザーグが開放してあげようと思ったその時、なんだか甘い吐息を洩らした後、ファニールの身体から少し堅さが取れた。

 そろそろと自ら手を回してきて、彼女もベルザーグを抱き締めてくれた。


(よ、よかった……禊ぎの時や着替えさせた時に、しっかりじっくり裸を見ていたことを怨んでいた、という線は消えたな)


 馬鹿なことを考えつつ、ベルザーグは彼女の嫋やかな背中をそっと撫でてあげた。

 肉の薄い、明らかに同じ年代の子と比べても細身の彼女だが、腕の中にすっぽり収まった彼女は、恐ろしいまでの魅力があった。

 見事な銀髪から得も言われぬ香りも漂ってくるし、ベルザーグの方が震えだしそうな気がするほどだ。

 ちなみに今日の彼女は以前と違い、ちゃんとベルザーグが贈った神官服を着用している。


 くるぶしまで丈がある、薄い生地の純白貫頭衣であり、ノースリーブなので両腕は白手袋まで剥き出しである。

 ウエストには、ベルト替わりの青い絹リボンを着けていて、腰回りから下は左右にスリットが入っている。

 今のように純白のマントを着けていなければ、かなり両足が目立つことになっていただろう。 

 その代わり、前に回ると長い足が鑑賞し放題になってしまうが。

 ……ベルザーグは、姑息にもきっちりマントの下に手を回して、直接彼女の身体を抱いているので、感触的にもかなり素晴らしいものがあった。


 そっと背中を撫でていると、薄い生地を通して「わ、この子多分、今はブラとか着けてないぞ!」とか、余計なことまでわかって密かに焦ったりする。


 実のところ、許されるなら五時間くらい抱き締めていたいところだが、場所的にそれはまずいし、周囲の目もある。

 そこできりのよいところでそっと離れ、ベルザーグはアリオンに断ってから、ファニールを連れてギルド奥の地下室……つまり、ハイランダーへの入り口を目指した。 


 もちろんその前に、ファニールにもキーとなるブラックカードを渡してあげている。





「エレナと二人分渡しておこう。帰宅したら、彼女にも渡してあげてほしい」

「……はい。ありがとうございます」


 蚊の鳴くような声の返事だったが、頬に手をあててまた吐息をついたりしたので、別にいらないというわけでもないようだ。

 とにかく、「わたし、ものすごく緊張しています!」という雰囲気だけは伝わってくるので、なるべく落ち着かせようと、地下室へ向かうかたわら、いろいろ話しかけるのだが――全ての返事が「震え声一歩手前」のような有様で、ベルザーグまで緊張してきたほどだ。


 しかし……そもそも誰がそういう性格でキャラデザインしたかというと、これがまた、中の人の相馬一郎自身なので、誰にも文句を言えた義理ではない。

 元々、そういう子は嫌いではないということだろう。

(ヴァレリーも少し似たところがあるが、他の子はだいたい、物怖じしない子が多かったからな。俺にしては意外なことに、ファニールそのまんまの性格というのは、本当に少ないかもしれない)


 ちなみに、ファニール・シャンゼリオンのキャラデザインのコンセプトは、ずばり「リアル女性から見て、『こんな女いないわよ!』と罵倒されるようなキャラ」である。


 ベルザーグが考え込むうちに、二人は無事に空中都市、ハイランダーのエントランスへ転移した。

 途端にいつものごとく、手空きのメイドさん達が出迎えてくれた。

 彼女達はこの空中都市の専属なので、下手をするとたまに買い出しに下界へ下りる以外は、ほぼ一年中ここに常駐している。


 もちろんメイドさんとはいえ、当時の一郎がキャラデザインした者達ばかりである。

 専用自動プログラムによる半自動生成の部分も多いとはいえ、キャラ設定などは一郎自身が決めている。


「ベルザーグ様!」

「ベルザーグ様っ」

「ベルザーグ様あっ」


「うん。みんな、元気そうだな」


 このところ、あまり戻ってくることがなかったせいか、ベルザーグが声をかけると、皆の顔があからさまに輝いた。

 出迎えたのは三名だったが、まさに喜色満面で走ってきて、すぐ至近で拝礼しようとする。

 これもいつものことだが、ベルザーグは手を振って止めてやった。そうせずに、彼女達が満足するまで拝礼をやらせておくと、平気で十分くらい過ぎてしまう。


「朝から何も食べてないんだよ。まず二人で食事をしたいものだ」


 フェリシーもいるよ! と教えるためにも、ベルザーグは背中に隠れていた彼女の手を引き、隣に立たせて上げた。


「では、本日はコース料理になさいますか?」


 メイドを束ねる立場のメイフェアが小首を傾げたが、ベルザーグは首を振った。

 自分はそれでもいいが、小食そうなファニールには、かえって負担かと思ったので。


「いや、ビュッフェにしよう。好きなものを選べるからね」

『はい!』


 メイドさん達の声が揃い、ベルザーグ達は彼女達の後について、巨大な両開きのドアをくぐった。



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