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死と引き替えの情報


「お、俺は言われた……も、もしこの大陸で、あんたに出会ったら……これを合図の代わりにしろと……一種のマジックアイテムで……破るか燃やすかすれば、あいつに伝わるらしい」


 震える手で、懐から丸めた羊皮紙を取り出した。


「あの悪魔みたいな女は、俺が命令を無視したら、娘を殺すつもりだ……だが、さっきも言った通り……どうせ俺が何をしたって、あいつは娘を……アリスを殺す……頼りになりそうなのは、あんたしかいない」


 手をかざして高レベルの治癒を始めたせいか、テトの表情から苦しさが消え、言葉もしっかりしてきた。

 よし、治癒は効いているっ。


「それで、君はその羊皮紙を破壊せず、戦死でも装う気かな?」

「その通り」


 テトがゆっくりと頷く。

 治癒魔法は身体の快復力を加速させるので、頭が少しぼおっとするのだろう。


「俺はあんたに出会うことなく、別の敵に殺された……そうしておいてくれ。そうすれば、あいつも娘のアリスを殺さずにおいてくれるかもしれない。頼めた義理じゃないが、あんたが助けてくれないか? アリスが住んでいる場所も教えるから」


「その神とやらが、手元に置いているわけじゃないのか?」

「あいつにそんな必要はないんだ……あんたなら、わかるはずだが?」


 探るような目で見られ、ベルザーグはもちろん思い出した。

 そうだ、そいつが自分と同じことができるなら、当然ながら娘がどこにいようと、いつでも殺すことが可能だ。

 ベルザーグがこの大陸の民を、いつでも意のままにできるように。


「ああ、わかる。すまない、私は自分と同じ立場の者にまだ会ったことがないんでね。だから、自分と置き換えて考えることを忘れていた」

「……やはり、頼れるのはあんただけのようだ。娘のこと、頼めるか?」


 縋るような目つきで見られ、ベルザーグはもちろん頷いた。


「いいさ、それくらい。安心してくれ。どうせなら、君も一緒にくればいい」

「ははは」


 勧めてやったのに、テトは疲れたように笑っただけだった。

 まるでそんな未来が来るはずのないことを、知っているかのように。


「じゃあ……契約成立だな。自分の判断に自信なんかないが、少なくともあいつは、あんた個人を倒すために、ここまで手間暇かけている。あんた個人を恐れている証拠だ。だから……きっと、俺がここで話す意味はある」


 自分に言い聞かせるように、何度も頷いた。


「だから約束通り、俺が知ってることを全部教えてやる……注意して聞いてくれよ」




 

 たどたどしい口調でテトが説明している間、ベルザーグは治癒を続けていたが……どういうわけか、呼吸は楽になっているくせに、一向に体力が戻らない。

 そのうち、テトは消え入るような声で言った。


「多くはないが、俺が知っていることはそのくらいだ……いいか、忘れないでくれ。あいつ……あの女は、アンタを油断させるためだけに、十万の軍勢を惜しげもなく消耗品として扱った。そういう奴が相手だってことを……くれぐれも忘れてくれるなよ?」

「わかった。それより君のこの衰弱は、もしかして呪術によるものか? それならどんな種類のものか知っていたら私に――おいっ」


 ベルザーグが支えたテトの身体を揺すった時には、もう彼は亡くなっていた。

 治癒だけではどうにもならない、ある種の呪いがかかっていたらしい……たとえば、裏切れば自動的に衰弱して死亡するというような。


「……ふざけた奴だなっ」


 助けられなかった腹いせもあり、ベルザーグは首を振って立ち上がる。

 死体をどうするか迷ったが、彼の遺志を尊重するなら、他の仲間の死者と一緒にしておくべきだろう。もし敵が死体を見つけたとしても、それで敵の判断も鈍るはず。

 ベルザーグの仲間に殺られたか、あるいはベルザーグ自身が、テトが羊皮紙などに触る前に瞬殺したと思ってもらえる……かもしれない。


(となると、後はローレンの方がどうなっているかだな)


 ベルザーグはテトの死体を抱え、洞窟から転移した。


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