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不死の戦士達


 デルグレイド達四人がまず先行して転移の部屋で魔法陣を使い、海岸地帯に飛んだ。


 自由気ままに転移する魔法については、まだこの世界に存在しない(はず)のものだが、決められた魔法陣から魔法陣への転移は、一部で既に実用化されはじめている。

 デルグレイド達が飛んだのも、大陸北方の海岸付近の森にあった、転移の魔法陣が描かれた待機小屋である。


 当然、そこからすぐに、単なる罠に過ぎない洞窟へと移動を開始した。

 本当にあの洞窟の中へ入るわけではない。

 あれはあくまでも、袋のネズミになった敵を包囲殲滅するための罠に過ぎない。


 そのための武器は、既に遅れて転移を果たし、後続としてデルグレイド達の後をついてきている。

 ただ、森を出て問題の崖に近付いた時、デルグレイドは自分達の後ろを振り返り、人数が足りないことに気付いた。


「待て、みんなっ。一人欠けて――」


 注意を促そうとしたものの、先にボリスが叫んだ。


「デルグレイド殿っ、あちらを!」


 よもや敵かと思い、さすがにデルグレイドは前を見た。


「……敵なのか、この子が!?」


 戸惑いの声が洩れたのも、当然である。

 隙のなさそうな青年を想像していたのに、相手は華麗なドレスを纏った少女なのだ。黒髪というのはこの辺りでは珍しいかもしれないが、それにしても美人揃いと評判の、本国の王宮でも見かけないような美貌を持つ少女である……ただし、まだ子供だが。


「人違いでは――いや、よく考えたら報告では男女と言っていたか」

「確かにそうですが……まさか相手が子供だとは思いませなんだ」


 ボリスの朋輩のトールが、呆れたように首を振る。

 拍子抜けしたというのは、このことだろう。

 しかし……実のところ彼らは初手から対応を誤っていた。本来なら、そんなのんびり話し合っている間に、とっとと遁走すべきだったのだ。


 もちろん、「彼女」が逃げるのを見逃してくれるという、前提つきだが。

 あいにくデルグレイド達はそんなことを考えもせず、意外な人物を見てひたすら驚くのみである。

 そのうち、相手の方が先に声をかけてきた。


不埒ふらちにも、お兄様を悩ませる遠方の敵とは、おまえ達かしら?」


 その声を聞いた途端、デルグレイド達はぞくりと肩を震わせた。

 なんだ……今の声音は?

 子供どころか、そもそも人間とは思えぬような冷え切った声だったが。






 対して、距離を置いて観察しているローレンは、森から出てきた男達を見てすぐに、「こいつらは大した敵じゃない」と判断した。

 予想以上に弱そうな相手だったので、念のために向こうにも尋ねたのだが、あいにく男共はポカンとこちらを見つめるだけで、役に立たなかった。


 ただしやや遅れて、森の奥からざわざわと足音がした。


 ローレンが見つめる中、後続の戦士達が続々と姿を現す。全員、全身一体型の戦闘スーツを纏い、手にはライトブレイドと呼ばれる光剣を引っさげていた。数は……およそ百体ほどか。

 全員が白銀の髪を持つ、同じ顔の戦士であり、当然ながら人間ではない。

 彼女達を見て、ローレンはようやく得心した。


「なるほど、ヴィルゲリア帝国のエグランデル城を守る、不死の騎士達と同型モデルね? 随分とまた、古くさいものを引っ張り出してきたこと」


 ローレンが口元に手をやり、侮蔑の笑みを浮かべる。

 ただし、内心で満足もしていた。どうやら敵の罠というのは、あのマシン部隊が本命と見たからだ。

 愛する兄の負担を軽くできるなら、ローレンにとってこれに勝る喜びはない。


(洞窟は撒き餌にしか過ぎず、釣られて来た者をあの部隊で殲滅する……そういうことでしょう。ならば、もう先は見えたわ!)




「……それにしても、その子達は元々、第八時代にこの大陸で発明された者達ではないかしら? お兄様の創造物の亜種を掠め取ろうとは……いい度胸をしているわね」

「お、お主は何者なのだっ。ここで待機していたはずの、見張りはどうした!」


 一人だけ黒いローブを羽織った魔道士風の男が尋ねたので、ローレンは一応、教えてやった。


「ここに固まっていた役立たずの五名のことなら、とうに気絶させて確保したわ。おまえの目は節穴? そっちをご覧なさい」


 気怠い動作で自分の右前方辺りを指差す。

 深夜なので目立たないが、ちょうど森との境界線付近に、折り重なるようにして男共が倒れている。

 それを見て、男達の動揺が激しくなった。


「ま、まさかっ、こんな短時間でっ」


 魔道士風の男は明らかに信じ切れない口調だったが、ローレンは気にしない。

 即座にマジックボックスに手を入れ、己の身長を越えるほどの巨大な剣を引き出す。


「信じられないなら、好きにするがいい。どうせすぐに、おまえも信じるしかなくなる……このローレンが勝てないのは、唯一、愛するお兄様のみ。無駄な努力だと思うけれど、抵抗したいならしてみなさい」

 

 底冷えがするような微笑を広げ、大剣を片手にゆっくりと前進を始めた。


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