飛行都市、ハイランダーへの招待
それにヴァレリー自身も、ローランドの功績を先んじて教えてくれた。
「ベルザーグ様。ローランド殿は、既に一隻を修理済みだそうです」
「それは大したものだ!」
ベルザーグは手放しで褒めてやった。
「せっかくだから、それはローランドとグラガンが使うといいぞ。どうせ他国へ行くには拠点がいるからな」
「ありがとうございます!」
「ご期待に応えたいと思います」
ローランドとグラガンが、恭しく頭を下げた。
ただ、ローランドがちらっとベルザーグを見た。
「本来はベルザーグ様に、三隻ともご献上すべき船ですが――」
「いや、もうヴァレリーから聞いていると思うが、私には自分の飛行都市がある」
そこでベルザーグは思い出し、マジックボックスから三枚の黒いカードを取り出し、三人にそれぞれ配ってやった。
「見た通りのネーミングで悪いが、キーとなるブラックカードだ」
本来の意味は、クレジットカードのうち、上級のステータスカードを指す。
たまたま本来の意味を思い出し、適当にそう名付けただけだが、効果は確かだ。
「これを所持しているだけで、あのギルドからハイランダーへ向かうこともできる。ただし、あえてギルドへ向かう必要はない。この大陸内であればどこにいようと、カードを手にしてあの飛行都市を思い浮かべれば、自然と船のエントランスへと転送される。さらにあそこで都市の転移装置を使えば、楽に帝都のギルドへも行けるぞ」
「――まあっ」
よほど嬉しかったのか、ヴァレリーが女の子そのものの声を上げ、食い入るようにカードを見つめた。
いくら見つめても、トランプほどの大きさの黒いカードで、隅っこに白字でベルザーグの名があるだけなのだが。
「くれぐれも、無くしたり奪われたりしないようにしてくれ。まあ仮に奪われたところで、そう簡単に使えないが、それでも用心のためだ。それを防ぐためにも、自分自身の手で名前を書いておくといい。そうすればその瞬間に魔法がかかり、なにをどうしようが、他の者には使えなくなる」
途端に三名同時に、自分のマジックボックスに手を入れた。
早速、書き出す気らしい。
「黒地だから、普通のペンでは書きにくい。これを使うといいぞ」
ベルザーグは気を利かせ、白字が書けるペンを出して配ってやった。
「お借りします! 時に、どこへ書いてもいいのでしょうか?」
ヴァレリーが尋ねたので、ベルザーグは笑顔で頷いた。
「構わないとも。大事なのは、おまえの名前が書いてあることだよ」
「わかりました!」
やたらと元気な返事で書き出したので、見てない振りをしてそっと覗くと、ベルザーグのサインのすぐ横に記名していた。
そのまま、次に相合い傘でも描き足しそうなよい笑顔で。
「……ペンはそのまま皆にあげよう。この世界にはまだ存在しないマジックペンだし、便利だと思う」
説明すると、それぞれがため息にも似た吐息をついたが、こいつら絶対に勘違いしてそうだった。マジックペンであって、魔法のペンではないのだ。
説明するほどでもないので、ベルザーグはさりげなく話を戻す。
「さて、せっかくここに三名が揃ったのだから、まずはローランドの報告を聞こう。その後で、いささか私も教えておくことがある。本来、シャロンにもいてほしいところだが、あの子はヴァレリーと違って初めて王となるわけだからな。東部を完全掌握するまで、さすがに時間がかかるだろう。後で私が教えておくとしよう」
「あの……」
「どうかしたかな?」
恐る恐る上目遣いで見るヴァレリーを、ベルザーグは愛想よく促してやる。
「わ、私も完全掌握の段階ではありません。創造主様のご加護で容易く占領しつつありますが、まだ西部全域とまでは」
「いやいや、わかっているとも」
ベルザーグは破顔した。
「それはそうだろう。まさかせいぜい半日足らずで、全て完了とはいくまい。ただ、おまえは自分の配下が大勢いるだろうし、いざという時の要領もいい。だからこうして、安心して呼べたわけだ。だが、シャロンはなにもかもが初めてなのだ。もちろん、私の配下達を大勢つけてあげたが、上手くあの者達を使えるかどうかは、今後の課題だ。今の段階で、水を差したくないのだよ」
懇切丁寧に説明してやったものの、ヴァレリーはなぜか一瞬、羨ましそうな表情を見せた気がする。




