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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第一章 創造主、一郎(ベルザーグ)の奮闘
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一郎を縛る謎の制限

「今この瞬間にも、正体不明の軍勢が南下しつつある。先に言っておくが、奴らを人間にぶつければいいという意見は、早計よ! この大峡谷を中心とした一帯は、今や我らが領土である! 人間達からかつての旧領を奪うまでは、ここが今の魔族の本拠なのだっ。なのに、みすみす他国の軍勢に蹂躙じゅうりんさせるわけにはいかないわっ」


「おおっ、さすがは新時代の魔王、ヴァレリーっ」


 神の視点から聞いていた一郎は、思わずガッツポーズを取った。

 さすがは、落ちぶれたとはいえ、魔族達を率いる英雄少女! いや、実際の年齢は既に百やそこらで効かないが。


 しかし、スリットの入った短いスカートに、黒ストッキングを穿いた長い足、それに真紅の瞳と輝く金髪を見ると、とてもそんな年齢には見えない。 

 実際、この子の外見年齢は、二十歳そこそこである。


 設定上、創造主ベルザーグに対する信仰心は、彼女とてかなり厚いはずなのだが……しかし、勝手に時間が進んだ一年あまりの間に、心変わりしている可能性もある。

 密かに一郎が迷っている間に、ヴァレリーは真っ黒な大剣を頭上に掲げ、叫んだ。


「我が創造主、大神ベルザーグのご加護があらんことを! 皆の者、出陣よっ」


『おぉーーーーっ』





 このヴァレリー自らの掛け声を聞き、思い切って一郎は声をかけることにした。 

 しかも、この際は彼女だけではなく、この地下大空洞に集まった魔族達、全員に。


『我が名を呼んでくれたこと、嬉しく思うぞ、ヴァレリー・クリフォード!』


「え、ええっ!?」

 岩の上に立っていたヴァレリーは、今にもそこから飛び降りようとしていたが、彼女らしくもない声を上げ、その場に留まった。

 ざわつく臣下達に向かい、訪ねる。


「今の神の声、おまえ達も聞いた!?」

『聞こえた、聞こえましたっ』


 一同がざわつくのを尻目に、一郎は外部マイクから呼びかける。


『この私は、おまえ達の国難を見過ごすことをよしとせず、いささかの祝福を与えようと思う。後で、ステータスを確認してみるがよいっ』


 いかにも神様的なしゃべり方をした後、一郎はその場でゲーム内時間を止めた。


「さて……まずは、魔王以外の者達から始めるか」


 やり手の商人みたいに両手を擦り合わせ、一郎はしばらく考える。

 その結果、やはり並の魔族戦士は、アイテムで強化してやることにした。やはりレベル上げのイカサマは、あまり何度も使いたくない。


 それに、既に自動設定済みの既存キャラを一度に大勢レベルアップするのは不可能なので、どうしても一人ずつになってしまう。

 アイテムなら一斉配布が可能なので、まだやりやすいわけである。


「よし、決めた!」


 一郎は、彼女の部下達全員に上級アイテム「ディフェンスフィールド」を、その場で大量に作成して授けた。

 指輪の形をしたアイテムだが、これを装備していれば、マジックシールドを使った時、効果が五割増しになる。


 魔王であるヴァレリー自身には、ディフェンスフィールドLv2(通常より効果二倍)の指輪と、さらに「マジックブースト」を与えた。


 これで、魔法行使時には、二倍の威力の攻撃魔法を放てるはずだ。





「ええと……あとは」

 独白する一郎の目に、画面右端の赤い警告文が見えた。

「え、なんだこれ?」 

 これまた見慣れない警告に、かなり身構えて読んだのだが――


「クリエイトポイントが枯渇したので、それ以上のアイテム量産は不可だとー」


 そんなルールはこのゲームにないというか、制作者たるゲームデザイナーを縛ってどうするのかっ。


「だいたい、クリエイトポイントとはなんだっ――て、まさかっ」


 ふと思い出して、一郎は自分のゲーム内キャラとして使っている、そのまんまなプレイヤー名のベルザーグを引っ張り出して調べた。

 マジックファイターなのだが、改めて彼のステータス画面を調べると……知らぬ間に、ステータスの幾多の数値の中に、「クリエイトポイント」なる項目があるっ!?


 ということは、つまるところ一郎は、ゲームデザイナーとしての相馬一郎としてゲームに介入しているのではなく、プレイヤーのベルザーグとして介入していることになるではないか!




「ま、マジかっ」


 仰け反るほど驚いたのは当然として、一郎的には不気味でもあった。

 どうもさっきから、ゲーム内では神であるはずの自分をも縛るルールが勝手に生まれている気がするのだがっ。

 それとも、このアバターを消し去れば、本来のゲームデザイナーとして、無制限のアイテム増産が可能になるのか?


 しかし……どう考えても、それはあえて試さない方がいい気がした。

 一郎的に、ひどく嫌な予感がするからだ。


「これはどうあっても、アバターのベルザーグとして、ゲーム内にダイブする必要があるな」 


 独白する一郎の声は、とことん苦いものとなった。 


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