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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第七章 ベルザーグ、他国遠征を決意
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欲しい、むちゃくちゃ欲しいわっ


「失礼した。情報を得る必要があったな、殺すより先に」


 ヴァレリーは謝罪の代わりに低頭する。


「いえ、そちらはもう、あらかた吐き出させました。ただ、僕個人としては、彼女への罰として、自らの国を滅ぼすために尽力してもらうつもりです」


 そう述べた一瞬、ローランドの切れ者風の美貌に、増悪の感情が走った。

 おそらく自分も、目の前で創造主様を侮辱された時は、似たような顔を見せているに違いないとヴァレリーは思う。

 まあ、別に改める気もないが。 


「なるほど、説明されると、ふさわしい罰のように思える。殺せば、そこで終わりだからな」

「その通りです。……時に」


 ふいにローランドが話題を変えた。





「ヴァレリー様ならご存じかもしれないのでお尋ねしますが……我が創造主様はどうも、ご自身で遠国へ遠征されるように思うのですが、なにか具体的に伺ってますか?」

「いや、おそらくそういうお気持ちだろうと察しはつけているのだが、今のところ、直接いつ出かけるとはお聞きしていない。実のところ、私は貴公が知っているものだと思っていた」

「なるほど……」


 考え深そうに、ローランドは頷く。


「となれば、今日ここで会合を指定されたということは、なんらかのご指示があるかもしれませんね」


 そこで、例の赤毛のルティカとやらが戻ってきて、テーブルの上にコーヒーの用意をしていった。


「ご苦労。君はもういいよ、ルティカ。後は外の空洞内を掃除でもしててくれたまえ」

「……はい」


 そいつが部屋を出るまで、ローランドもヴァレリーも黙り込んでいる。

 彼女が命令通りに出て行ってから、ヴァレリーはようやく話を戻した。


「そうだな、私自身もご指示を頂きたいと思っている。遠征が確実になれば、ぜひ私も随行させて頂きたいものだ」

「王者の身で、長期の遠征は負担になりませんか?」

「まあ、すぐに帰国できないとなれば別だが、そちらは転移魔法のアイテムがまだ残っているからな」


 それを聞くと、ローランドは少し考え込んだ後、おもむろに虚空に手を伸ばし、マジックボックスから何か取り出した。


「実は今、墜落した飛行戦艦のうち、一隻が修理完成間近なのです」


 丸いガラス窓のようなものがついた、四角い金属製のケースを出してテーブルに置き、どこかのスイッチを入れる。


 すると、そのケースの上部にあの飛行戦艦の鮮明な画像が立体投影された。

 ほとんど、ヴァレリーの眼前に小型化した飛行戦艦が浮かんでいるのと変わらない鮮明さである。


「これはっ」


「捕虜から構造のあらましを聞き、敵兵を総動員して復元させた戦艦を、映像として記録したものです。少なくとも、いま映っている一隻はすぐに飛べます。僕が使おうかと思っていましたが、ベルザーグ様が遠征されるのであれば、ご提供するつもりです」

「いや……そちらはベルザーグ様専用の」


 立体映像に見とれつつ言いかけたヴァレリーは、ふいに重大なことに気付き、生唾を飲み込んだ。

 待て待て! 

 こ、この謎アイテムがあれば、ダークエルフ達に創造主様の再現イラストなど描かせなくとも、立派にあのお方そのままの映像が手に入るのではないかっ。


 自分の寝室に、ベルザーグのカラー立体画像が無数に浮かぶ光景を思い浮かべ、ヴァレリーは陶然となった。空想上とはいえ、全てのベルザーグ像が優しく微笑んでいた。



 な、なんと素晴らしい! 

 欲しい、むちゃくちゃ欲しいわっ。


 

 思わずぎらぎらした目つきで、謎の投影アイテムを見つめた。





「ごほん。これは最近大陸で発明されたらしい、銀板写真とやらより遥かに優れたアイテムに思えるが……たとえば、人物像を写し取ったりもできるのかな?」


 なるべくついでのように尋ねてみたのだが、あいにくローランドの目はごまかせなかったらしい。

 彼は長い前髪を掻き上げた後、ニヤッと笑って述べた。


「詳しい説明をする前に、先に言いかけた『ベルザーグ様専用の~』という話の続きをお願いします。信徒としては、ひどく気になりますので」

「……了解した。ただ、肝心なことはベルザーグ様ご本人から伺ってほしい。私が教えられるのは、帝都にある冒険者ギルドのことだ。そこが、ベルザーグ様の拠点へ繋がる入り口になるので」

「ほう、初耳です!」


 いきなり身を乗り出したローランドに、ヴァレリーは大いに親近感が湧いた。

 自分が崇拝し、愛する大神を、同じく崇拝する者に出会うのは、嬉しいことである。

 ただし、それが女性なら、同時に複雑な気分にもなっただろうが、ローランドの場合は男なので素直に喜べる。


「無理もない。私も、つい数日前に他の信徒から聞いたばかりだからな……」

「ご心配なく。余計なことは洩らしません」

「わかっているとも!」


 二人はいつしか、数年来の戦友のように話し込んでいた。

 ベルザーグがこの光景を見れば、苦笑して言ったかも知れない。「ああ、好みのアニメを熱く語る、オタク同士の連帯に似てるな」と。


 ……もっとも、この場合の二人の連帯感の大元は、明らかに「創造神崇拝」にあるのだが。


 つまり、ベルザーグ自身が原因である。

 そういう共通点がなければ、互いに相手に洟も引っかけなかっただろう。


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