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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第七章 ベルザーグ、他国遠征を決意
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震えるバトルスーツメイド


 ローランドに案内されたのは、このただっ広い地下空間の隅にあった、ガラス窓のついた待機場所のようなところだった。


 ベルザーグがもしこれを見れば、「工事現場の隅に立ってる、プレハブの休憩所みたいだな」と称したかもしれない。

 ただし、こちらはプレハブよりはかなり厚めの金属で出来ているし……そもそも、ここの周囲の壁も金属製である。


 ドアを開けて皆で中へ入ると、内部は外から見るよりも広く、大きめのテーブルと椅子が四脚、それになぜか壁際に二段ベッドが置いてある。

 そして、ヴァレリーと同じくある種のバトルスーツ姿の女性が隅に控えていて、まずローランドに深々と一礼した。




「お帰りなさいませ、ローランド様」


 一度頭を上げ、今度はグラガンとヴァレリーの方を見てお辞儀する。


「それにグラガン様とお客様も」


 格好の割に、ここではメイド役のような仕事に就いているらしい。


「ご丁寧に恐れ入る」


 ヴァレリーが低頭したが、その返事はなかった。

 あまりこの大陸では見ない、薄赤い色の髪をした女性だった。

 その目立つ髪を肩口で揃えていて、ローランドを見る目つきは鋭いを通り越して殺気立っている。形のいい薄い唇も、なぜかわなわな震えていた。

 なのに、不思議と彼にはうやうやしい態度だった。


「ルティカ、コーヒーを三つお願いするよ」


 ローランドが言いかけた途端、そのルティカの方に目を向けないようにしていたグラガンが、首を振った。


「いや、俺はいい。万一、ベルザーグ様がヴァレリー様と同じように空から降りて来られた場合に備え、地上で待っていないとな。お出迎えしないと、失礼だ」

「そうか……うん、それじゃ、頼むよ」


 少し考え、ローランドも頷いた。


「おう。では、また後で、ヴァレリー様」

「うむ。案内して頂いて、助かった」

「いえいえ、とんでもありません」


 にこやかに応じた後、グラガンは一転してローランドにわざとらしく顔をしかめて見せた。


「俺のいない間、あまりルティカを虐めるなよ? それと、お得意の毒舌にも注意しろ、ナイトウォーカー」

「虐めに毒舌? 生まれてから一度も経験ないな」


 しれっとローランドが言い切る。

 顔色ひとつ変えなかった。


「あー、はいはい。おまえは聖人のような品行方正な少年だとも」


 振り返らずに手を振って見せ、グラガンはまた部屋の外へ出て行った。


「……あの、それでコーヒーは二つでよろしいでしょうか」


 機会を窺っていたのか、相変わらず親の敵を見るような目で、ルティカとかいうメイドがローランドを睨む。

 恭しい口調なのに、表情がさっぱり合っていなかった。


「いや、気が変わった。カップを四つと、コーヒーは陶器のポットに入れて持ってきてくれるかな。その方が早いだろうしね。高貴な方にお出しする菓子などがあれば」


 逆にローランドの目つきは、彼にしては優しいとも言えるほどだった。

 ヴァレリーは「気遣いはいらない」と言おうとしたが、ベルザーグのためでもあるので、差し出口は控えた。


「わかりました」


 低頭して部屋を出かけたルティカは、しかし途中で振り向き、思い切ったように言いかけた。


「あの、謝罪しますからどうか――」

「君の罪はまだチャラには遠い」


 ローランドは素っ気なく遮り、笑顔のまま手を振った。


「さあ、行って行って」

「……はいぃい」


 歯軋りするような返事をして、ようやく長身のルティカが出て行く。

 足が微かに震えていた。




「どうぞお掛けになってください、ヴァレリー様」

「ありがとう。ところで、彼女はなにかの罰を受けていたのかな? おそらく、侵攻してきた敵だと見たが?」


 テーブルに着きつつ、ヴァレリーはさりげなく訊いた。

 さすがに彼女の様子が異様過ぎるので、自分の予想を含め、訊かずにはいられなかったのだ。


「ご明察です」


 ローランドはあっさりと肯定した。


「彼女は、あの飛行戦艦でこの大陸へ攻めてきた軍人ですし、それに僕のマインドコントロールを受けて、ここで強制的に働かされているところでして」

「……あえて、ああいう罰を与える理由は?」


 ヴァレリーの声音には、微量の非難が交じっていたのだが……それも、ローランドの返事を聞くまでだった。


「ベルザーグ様を侮辱したのですよ、ルティカは」

「なにっ! なぜ殺さないのかっ」


 席を蹴って立ち上がったヴァレリーを見て、ローランドはなぜかゆっくりと微笑した。


「貴女とは気が合いそうです」

「……うっ」


 なにも、グラガンと同じことを言わなくても。

 多少バツが悪くなり、ヴァレリーは椅子を引き起こして座り直した。


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