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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第六章 創造主(父)を愛する娘達
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ナンバリングへのこだわりは、愛故に


「ゆ、指輪か。構わないが、やはりスキルや魔法付与のものがいいかな?」

「どのようなものでも構いません……たとえそれが、銅貨一枚で買えるようなものであっても」


 エレナは、ベルザーグが思わず見とれるような笑顔を見せてくれた。


「創造主様から頂いたということが、私にとって一番大事なんです」

「そうか……」


 確かに、年頃の女の子にとっては、指輪というのは一つの重要アイテムだろう。

 実際は生まれて数日とはいえ、恋に恋する年頃なのだ。


 なにを隠そう、学生時代にまだその手の「まともな恋愛」に憧れていた相馬一郎も、「俺も将来的には、誰かに指輪とか贈りたいよなあ」などと、リア充的恋愛イベントに期待していたものである。

 あいにく、そんな機会はついに訪れないどころか、フラグすら来なかったが。


(で、最後は二流ゲーム会社のデザイナーになってしまったわけだ。リアルの反動で恋愛イベントは過剰なほどゲームにぶち込んで、上司にどやされたよな……やはり、エロが過剰だったのがまずかったか)


 それにしても、まさか己が心血を注いだゲームの中で、我が娘に指輪を贈る日がくるとは思わなかった!


「よし、それが希望なら、おまえに良いものをあげよう。将来、役に立てるといい」


 思わせぶりなことを述べ、ベルザーグは虚空のマジックボックスに手を入れ、薄赤いワイン色をした、大きな宝石のついた指輪を取り出す。

 しかも、宝石の中で無数の星がきらめくような輝きが見える上、宝石以外のアーム部分は伸縮自在の魔法金属であり、鈍く光る銀色していた。





「魔法の指輪、その名もピュアハートだ。今現在、この世界に十個しかない、超超レアな指輪だぞ」


 そもそも、十個とも俺が独占してんだけどな!


 という部分をベルザーグは……というより、一郎の部分があえて伏せた。

 独占している理由は、このヴィオランディスサーガが正式にオープンしたら、使うかもしれないと思ったので。


 もしかしたらゲーム内で、気が合う異性が見つかるかもしれない。

 その時に、満を持して贈ろうという魂胆である。

 相馬一郎は、たまーにネット上で聞く「ゲーム内結婚」という、一郎的理想イベントに、未だに憧れがあったりする。


 まあその魂胆も、今や見事に潰えたが。





「うわあっ」


 取り出して渡した途端、エレナはらしくもない子供っぽい歓声をあげ、指輪の掌の上でじっと見つめる。


 そのうち、片頬に右の掌を当て、うっとりと口にした。


「……きれい」

「見栄えだけじゃないぞ。将来、おまえに愛する異性が出来た時、この指輪は真の力を発揮することだろう」


 なにげなく教えた途端、とろけそうな顔で指輪を眺めていたエレナが、ぱっと顔を上げた。


「どのような効果でしょう!」


 顔をぐっと近づけて尋ねる。

 大迫力だった。


「あ、ああ……つまり、指輪を掲げて『愛する○○さんの元へ!』と声に出せば、どこにいようと、必ず恋人の元へ飛べるのさ」


 本当は、恋愛感情なくても、名前さえ呼べば普通に転移可能なはずだが、一応そういうことにしておく。

 それに、この世界に実際に魔力も魔法も存在するからには、あながち設定通りの効果を発揮するかもしれない。


 その証拠に、このアイテムから濃密な魔力も感じるのだ。





「回数制限はあるんですかっ」

「い、いや……そういう設定はないな。消耗品じゃないので」


 ていうか、なんでおまえ、いきなり大迫力なんだよと思うが、ベルザーグはあえて訊かないことにした。


「ナンバリングがありますっ」


 視線の熱で溶けるんじゃないか? と思うほど手の中で指輪をくるくる回して見ていたエレナが、また大きい声で指摘した。


「アームの裏側に!」

「そりゃあるともさっ。全部で十個なんで、シリアルナンバー1から10まで、ちゃんとナンバー入りだ」


 中の人である相馬一郎の、当然のこだわりである。

 たとえ全部独占してようが、ちゃんとナンバリングは欠かさない。


「……これ、3とあります」


 エレナの声が急にダークサイドに落ちた。

 それこそ、黄泉の国から聞こえるような声音で呟く。


「なんで声が暗くなる? もしかして、もっと若い番号が欲しいのか?」


 任せてくれ、俺は全部持ってるぜ! 

 ベルザーグはそう自慢しそうになったが――


「――っ! あるんですかあっ」


「わっ」

 声でかっ。



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