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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第一章 創造主、一郎(ベルザーグ)の奮闘
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創造主の担当外!

 そんな国――兵力を十万も送り込むような外敵がいるのなら、今の一郎が絶対に知っているはずだ。デザイナーなのだからっ。


 しかも、ヴィオランディス大陸以外にも大陸は点在すると言いつつ、そちらはまだまだ、未設定が多い。 


 現状「蛮族の闊歩する地」として、棚上げしている状態なのだ。




「誰だよ、誰がそんな国、設定した!?」


 そもそも……その大陸北部近くに今いるのは、再起を誓う魔族達の軍勢のはずだっ。

 そこにもお気に入りキャラがいるというのに、勝手にゲーム前に戦ってもらっては困る。

 続々と南下していくプレートアーマー姿の軍勢を見やり、一郎は密かに歯軋りした。




「よし、出現理由はさっぱりわからんが、とにかく君達には死んでもらうっ」


 サクッと決断し、メインストリートで三名ほど消したのと同じ要領で、今度は十万の軍勢をまとめて範囲指定する。

 如何いかに十万いようが、マップの縮尺を変えてマウスで一気に指定するだけだから、問題などない。

 無事に範囲して後、一郎は極悪な笑いを浮かべて呟いた。


「悪いな、諸君。ここは俺が創造した世界だ。自儘な真似は許さん!」


 号令と同時に、一気にマウス右クリックで出たメニュー「消去」を選択!


「よしっ……て、あれっ」


 軍勢は……なぜか、消えていない……今も元気に南下中である。夜だというのに、松明の明かりを頼りにっ。


「き、消えないってどういうことだよっ。右クリックからメニューで消去を選べば終わりのはずだろっ」 


 もう一度同じことを繰り返したが、やはり鎧集団はしれっと移動を続けている。

 しかも、今度は記憶にない、赤い文字の警告まで出た。




■警告!■


クレアデス共和国軍は、ヴィオランディス世界を故郷とする軍勢ではなく、外の世界からこの大陸に来た軍勢です。


貴方が創造して命を与えた者達ではないので、自在に消すことはできません。

目障りだと思った場合、戦って殺すか、和平を考えてください。


――以上。





「な、なんだってぇえええ」


 一郎は、おそらくその赤字の警告を、優に二分は眺めていたはずだ。

 真面目な話、漫画に出てくるキバヤシの突っ込みなど、問題にならないくらい衝撃を受けた。

 この世界全てをデザインした一郎は、当然ながら、ほとんどの警告文やメッセージを熟知している……はずだ。


 それはまあ、他の社員が分担して作成した文章もあるだろうが、それだって、最終的には一郎がチェックしている。


 なのに、こんな奇妙な警告文、一郎は全く知らない!

 見たこともないと断言できる。





「ど、どういうことだ……外の世界ってどこだよ……」


 世界を守る創造主にしては、我ながら気弱な声が出た。 

 しかし、頭を抱えている場合ではない。

 この大陸北部の位置から見て、もっともこの軍勢にぶち当たる可能性が高いのは、かつて人類に敗北して今は再起を狙っている、魔族の軍勢である。


 当代の魔王は、ヴァレリー・クリフォードといって、これまた一郎自身が特に念入りにキャラデザインした女性だ。


 十年前からこっち、雌伏する魔族の王として君臨している。




「そうだ、ヴァレリーなら既に気付いてるんじゃないか。というか、万一まだ気付いてないなら、俺が警告してやらないとな」


 ……この時一郎は、もう少しよく考えるべきだったかもしれない。

 確かに今、モニターの中では、謎の軍勢の侵略が行われようとしている。


 しかし、敬虔けいけんなベルザーグ教団の信徒(一人だが)であるファニールは、既に戦の噂があるようなことを述べていた。 

 つまり、ファニールが噂として認識している不吉な戦と、今一郎が目の前で見ている謎の軍勢は、また別物だということだ。


 しかし、この時の一郎は、そこまで考えが至らなかった。

 愛着のあるキャラに、警告をすることで頭がいっぱいだったからだ。


 記憶にある旧魔族達の残党は、大陸北部の大峡谷にある地下の入り口から下りた場所にある。マップを問題の場所までスクロールし、大峡谷に存在する秘密の入り口から、地下の大空洞へと視点を移した。


 すると、目指す女性は、既に魔族達を集め、演説の真っ最中だった。


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