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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第六章 創造主(父)を愛する娘達
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お父様大好き少女


 一夜明けた本日も、ベルザーグは予定が満載だった。


 ヴァレリーとの話し合いもあるが、まずはようやく神官ファニールの元へ出掛けるつもりである。なにしろ、創造神として話しかけてから、まだ一度もちゃんと対面していないのだから。

 本来はダイレクトコールで呼び出して面会の約束を取り付けるつもりだったが、なんとなくそれはしないで同じ帝都内の仮教会へと向かった。


 ……歩きながらも、ベルザーグはさりげなく帝都の住民達の反応を窺っている。


 帝都が占領された翌日の朝なのだから、さすがに皆の反応を心配したためだが……しかし、予想よりはかなりマシだった。

 皇帝デニケンが暗愚だというのは、この帝都では子供でも知っているせいか、店先などで住民がかわす話題は、「果たして、住民には手を出さないという魔王の約束は、最後まで履行されるだろうか」という点に集中していた。


 しかし、昨晩ベルザーグがヴァレリーに頼んでおいた通り、中央広場に立てた立て札の「魔族は基本的に帝都へは立ち入らず、住民達の生活を乱すことはしない。政務は代理の者が既に城内にいるので、住民は普段と変わりない生活を送るように」という文章を大勢が見つけ、かなり安堵感が広がっているようだ。


 もちろん、まだ完全に信頼されたわけではないだろうが、そもそも「帝国西部地方を魔族から奪ったのは人間側である」という過去の歴史も、住民の中の識者が大勢指摘し始めている。

 よって、今のところ住民の多くは「不安に思いつつも、まずは様子見」という感じらしい。


(それでいいさ。何事もなければ、自然と慣れるだろう)


 それに、帝国を治める新たなリーダー達は、なんといってもベルザーグの信徒達なので、女漁りの貴族がまかり通っていた以前よりは、百倍も増しである。


 内心でベルザーグがそう結論付けたところで、ファニールに与えた仮教会が見えてきた。





 帝都のメインストリートとはいかないが、そこから一本裏道に入っただけなので、まずまずの場所にある。

 見かけはゴシック調の石造りであり、中はいきなり吹き抜けの聖堂となっている。

 そこに多数の長椅子を左右に整然と配置してあり、中央は壇上へ向かう通路となっている。そして聖堂の奥は、ファニールやエレナの個人的住居として使われている――はずだ。


 木製の重厚な両開きドアは閉まっていたが、試しにノックすると、中からエレナの声で「はい、開いてますよ」と冷静な返事が聞こえた。


(お、少なくともエレナはいるな。よかったよかった)


 ベルザーグはほっとしてドアを開けた。





 エレナは相変わらずメイド服着用で、呆れるほど広い聖堂内を一人で掃除していた。

 しかし、ベルザーグが入ってきたのを見ると、ぱっと顔を輝かせ、モップなどはそこらにうっちゃって、小走りに駆けてきた。

 喜色満面であり、いつも冷静沈着に見えるこの子としては、珍しい高揚ぶりだ。


(私の信徒は、だいたいみんな私を敬ってくれるが、この子も例外ではないらしい。有り難いことだ)


 というか、ベルザーグが愛情を注ぐ子は、ほぼ間違いなく向こうも好いてくれているらしい。逆に言うと、自動生成プログラムで作成したようなキャラは、「ベルザーグって誰だっけ?」程度の感慨しかないらしい。


 まあ、お互い様なので別に腹も立たないが。





「私の創造主様っ。お久しゅうございます!」


「いやいや、まだ数日ぶりくらいだろう」


 ベルザーグは苦笑し、寸前で止まってもじもじするエレナに、自ら両手を広げた。「俺、調子に乗ってる!」と思わないでもないが、幸い、「多分、抱いてほしいのだろう」と思った予想は当たっていた。


 手を広げた途端、潤んだ瞳で飛び込んできたからだ。


「我が大君、創造主様っ」


 情熱的に抱き締め返されるところは、あのシャロンの積極性を思わせるが……この子のキャラ設定はかなり控えめな性格だったはず。


 自分の親も同然の相手故の、例外だろう。


「うん、苦労かけたな……ていうか、ベルザーグでいいぞ」

「ありがとうございます!」


 長い黒髪をポニーテールにまとめた、女武者のような美貌を持つエレナだが、今こちらを見上げる顔は歓喜に輝いている。


 この子を創造してよかった! と思う瞬間である。


 十五歳という設定年齢であり、知識量も半端ない設定なのだが……それでも、生まれてまだ数日という事実は変わらない。

 ベルザーグも、ヴァレリーやシャロンと抱き合うよりは、遥かに気安く抱き締めることが出来た。

 ついでにさらに調子に乗り、「ちょっと話を聞かせてくれるかな」と持ちかけ、軽々と抱き上げて、近くの長椅子に運んだ。

 エレナは一瞬、「まあ!」と驚いた声を上げたが、すぐに赤くなった顔をベルザーグの胸で隠すようにした。


(か、可愛い! 戦闘経験値はほぼ皆無とはいえ、マルチプレックス【職種複数選択】スキル付きで、レベル85という実力者なのに、なんだこの可愛い生き物っ)


 なんとなく、赤ちゃんを抱いているというより、「お父様大好き!」と臆面もなく叫ぶ、幼女を抱いているような感じである。

 

 ちなみに、当初の役割として考えていた「ファニールの護衛」という仕事は変更して、今はベルザーグが召喚した魔獣を護衛に当てている。

 シャドウガーディアンというレベル70クラスの魔獣で、護衛する対象の影に潜んでどこまでもついてくる。


 人間と違って飽きるということがないし、夜眠る必要もない。

 護衛としてはまず信頼できる者達を、三匹も付ければ上等だろう。


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