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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第六章 創造主(父)を愛する娘達
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相馬一郎の、イカサマな布石について


 夜明け前になり、ようやくシャロンは屋敷を出て行った。


 別にベルザーグが追い出したわけではなく、そもそも帝国東部へ赴くには、いい加減よい時間だったからだ。

 帝都の制圧とは違い、実はヴィルゲリア帝国の東西については、先んじてベルザーグが手を打ってある。


 単純に、これまで各地方を支配していた主立った大貴族達を、一族ごとその場で引き上げたのだ。要は、最初にマップ上で試したように、世界から消したとも言える。


 といっても、ベルザーグは既に自分の創造キャラを、たとえ半自動生成で作ったキャラだとしても、滅多に殺せなくなっている。

 デニケンの場合は他に支配者の交代を印象付ける手段を思いつかなかったからだが、結局は彼も元データを使って生き返らせるつもりだ。

 実は有能なキャラだとわかったので、再登場させれば、必ず役に立ってくれるだろう。


 ただ、散々帝国の資産を食いつぶし、臣民達にとってお世辞にもよい領主ではなかった各地方の貴族達は、現時点、いるだけでマイナス要因である。

 試しにそれぞれの現状を除いたが、全員が見事にろくなものではなかった。


 中には「領内で十五歳に達した処女は、まず領主が先に頂く」とかいう、大馬鹿な規則を自領に広めようとしていた奴もいて、ベルザーグは人知れず激怒したほどだ。


 俺がこうして我慢しているのにっ、こいつらときたら!




 ……というわけで、殺しはしないが、全員をキャラリストで指定し、今いる場所から一斉に引き上げた。

 彼らは一人の例外もなく、なにが起こったかもわからないうちにベルザーグの各種キャラ保管フォルダの一つ、「シナリオに関わらない上に、駄目すぎるキャラフォルダ」に収められてしまった。

 まさに、ヴィオランディス・サーガのワールドマップから、忽然と消えたわけだ。


 また再生することもないとは言えないが、そのままではただの迷惑キャラなので、使うとしても改良するしかない。

 だがベルザーグ的には、彼ら全員、このままフォルダの肥やしになりそうな気がしている。

 後は、空になった各地の貴族達の城や屋敷を、ヴァレリーとシャロンが接収すればいいだけだ。


 ヴァレリーは配下が大勢いるからともかく、シャロンは一人なので、政治や軍事方面での有能人員多数を、ベルザーグがもう拠点に送り込んである。

 よって、領地の運営には問題は生じないはずだ。


 ちなみに、ベルザーグがどうしてこれほど豊富な人脈を持つかというと、話は簡単で、これもベルザーグ……というより、中の人だった相馬一郎のズルであり、イカサマである。


 より正確には、将来におけるイカサマの布石だった。





 ヴィオランディス・サーガは設計思想的に、プレイヤーがやり方次第で王にも貴族にもなれる自由度を持つゲームである。

 その場合、その地位にふさわしい人数を支配下に収めることが許される――ようになるはずだった。

 これは当然のことで、「王様ですけど、城内にあたし(俺)一人です」では、いくらなんでも満足感もろくに味わえない。そういうわけで、プレイヤーのゲーム運び次第では、個人で他のキャラを臣下にすることができるし、NPCの有能キャラもしかり。


 財力が許すなら、万単位の軍勢を持つことだってできる――予定だった。


 その予定を踏まえ、デザイナーの相馬一郎は「そうなった時のために、俺専用の側近やら政治や軍事の有能キャラを、ゴマンと作っておくぜ!」と決め、せっせとゲーム制作中のHDD内にこっそり大量保存してあるという……。


 ファニールの時はサービスで新たに世話用のメイドさんを創造したが、本当はそんな真似をしなくても、そこそこのステータス……言い換えればまずまず有能な人員なら、一郎は唖然とするほど溜め込んでいた。

 それこそ、半自動生成も併用して、一国の軍隊にも匹敵するほどの人数をだ。


 そんなことに血道ちみちを上げていたのだから、ゲーム開発が遅れに遅れていたのも、当然と言えよう。

 一郎自身もそのことは承知していたし、密かに罪悪感にも繋がっていたが、今やそうしておいてよかったと思っている。


 なにしろ、現状では、新たにキャラを創造しようとすると、ステータスに応じてクリエイトポイントが必要という縛りがあるからだ!

 余計な枷をつけられる前にごっそり自分用のキャラを囲い込んでおいたのは、むしろ先見の明があったと言えるのではないか!



 ……いや、そんなわけないだろ? 



 という声はどこからもせず、お陰で一郎ならぬベルザーグは、少なくとも人材的にはそう不自由せずに済んでいる。

 それと、もう一つベルザーグが気付いたことがある。

 デザイナー用のワールドマップで各街や都市の状況を見るに、明らかに一郎が創造したキャラより遥かに多いNPCが生活している。

 半自動生成の手抜きキャラを含めても、とてもそんな数はいなかったはずだ。


 これはおそらく、一郎が各街や村、それに都市などの人口を、最初に数字で設定しておいたことによるものだと推測できる。

 たとえばこのヴィルゲリア帝国なら、総人口はおよそ千二百万として、各地方で人口を定めてある。その設定が忠実に反映されているらしい。


 試しにそうだと仮定して各地のキャラ数を見れば、一年で増加した分は別として、見事にデータが一致した。


(しかし、今後も人口は増えるんだよな……こうなると、シムシティ要素まで出てくるかもしれない)

 それはそれで楽しいかもしれないが、こうしてキャラ配置などを決めていると、どうしても各NPCに自由意志があることを忘れがちになるのが困ったものだが。



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