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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第六章 創造主(父)を愛する娘達
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貴方様のためだけに


「話は変わりますが」


 いきなり断りを入れ、シャロンが言う。


「お城でわたくしが着用していたお洋服、魔法学校の式典用制服に似ていたでしょう?」

「うん。確かにそれは感じたな」

「わたくしがわざと似せたものを仕立てたのですが、どうしてだと思われます?」


 訊かれたベルザーグが見ると、碧眼が悪戯っぽく光っていた。


「この身で完全正解は望めないが……あのデザインが好きなのかな?」

「嫌いではありませんが、不正解ですわ」


 今や笑みが消え、透き通った瞳が真剣な光を湛えていた。


「卒業式に来てくださったベルザーグ様が、あの制服を見て驚いたようなお顔をお見せだったからです。だから、ベルザーグ様にはきっとなにか思い入れがあるのだろうと」


 鋭い指摘に内心で唸りつつ、ベルザーグは微笑する。


「だから、あの格好を?」

「そうです……貴方様のためだけに」


 さすがに恥ずかしいのか、声が小さくなっていた。

 こう教えられると、とてもではないが「いやぁ、日本の女子高生みたいで萌えたから」とは白状できない。


「……ど、どうでしょうか? 似合っていましたか?」


 残念ながら、ベルザーグが見た時には既にズタボロだったし、どちらかというと破けた下の水色の下着の方が気になっていたのだが。


 無論、そんなことを正直に言うほど、ベルザーグも愚かではない。





「似合っていたとも! おまえの狙いはどんぴしゃりだ。末恐ろしい子だな!」


 喜びを伝えるために、わざと冗談めかして言う。

 気持は伝わったと見えて、シャロンはバラ色に染まった頬で微笑を返した。


「……よかったです」


 この時ばかりは、夢見る女の子のような表情だった。


「貴方様の前では、いつも魅力的な女の子でいたいのです」

「いつも魅力的だとも」


 正直に心を込めて保証してやると、一層、シャロンの笑みが深くなった。


「そういえば天上世界におられる時も、今の生身のベルザーグ様も――奥様はいらっしゃいませんわね? お一人では寂しくありませんか……なんでしたら、身近に貴方様のお嫁さん候補がいるのを、無料で教えてさしあげますわよ?」


 微妙にお尻を動かして座る最適ポジションを探りつつ、急に潤み始めた目を向ける。

 どうでもいいが、そうやって身じろぎされると感触がモロに伝わって、ベルザーグ的に非常に困るのだが。


「……おまえのいう候補は、今現在、ミリ単位で私のそばにいる子ではあるまいな?」


 シャロンは、「先に言われたら困りますわっ」という顔で唇を尖らせたが、すぐに笑顔に戻り、首筋に抱きついてきた。


「考えてみれば、父と子である前に、男と女ですし。わたくし、娘役だけじゃなくて、お嫁さん役だって、立派に務めますわ!」


 実は友人から教えてもらって、料理も得意なのだ! と彼女は力説する。


「それだけじゃありません。ベルザーグ様がお望みなら、わたくし、裸エプロンだってがんばってお見せしますっ」

「……ふいに、論理がとんでもなく飛躍していないか?」


 じゃなくて、この子にそんなエロ雑誌的知識を吹き込んだのは誰だっ。女子率からして、ほぼ女子校に近いような魔法学校だったはずだが、どうもクラスメイトはみんなませた子ばかりだったようだ。


 しかし、ベルザーグは反射的にふと想像してしまう。

 この子の完璧なスタイルと美しいヒップラインからして、裸エプロン姿は恐ろしいまでに似合うだろうなと。


「い、いかんいかんっ」


 慌ててシャロンを膝から下ろし、自ら立ち上がった。

 不満そうな声が微かにしたが、鉄の意志で無視して。





 諦めて起き出したシャロンは、「改めてドレスに着替えればどうか」と勧めたベルザーグに笑って首を振り、「貴方様が選んでくださったのですから、しばらくこのままでいさせてくださいませ」と言った。


 そして好奇心の強い年頃の女の子らしく、両腕を後ろで組んで、ベルザーグの屋敷をあちこち見て回り始めた。

 もちろんベルザーグに断りを入れてのことだが、真っ先に窓を開けて周囲を確認したのは、絶対になんらかの意図があるのだろう。


 たとえば、「今度は自力でここへ来られるように」とか。


 ようやく最後にリビングに使っている部屋まで来て落ち着いたが、今度は思い切ったようにくるっと振り向き、ベルザーグを見上げた。

 髪型以外はヴァレリーと共通する長い金髪が、ふわりと舞い上がる。


「明日はわたくしもいよいよ帝国東部へ向かいますが、ベルザーグ様の今後の指針は? しばらくは帝都にいらっしゃいます? それとも……東部へご一緒に?」


 後半はそうして欲しそうなシャロンの口ぶりだった。


「おまえの補佐役はきちんとつけてあげるが、私自身は考えていることがあるんだよ」


 天井を仰いで息を吐くと、シャロンが心配そうにまた手を握ってきた。

 この子は本当に、スキンシップに遠慮がない。


「なにかご心配ごとが?」

「あるとも」


 ベルザーグは苦笑して頷く。


「私はこの世界の創造者として、侵略者達の国へ赴き、厄介ごとの根を断ち切るつもりだ!」


 激しい感情を込め、決然と口にした。


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