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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第五章 ベルザーグ、既存シナリオを破棄する
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魔王無双状態

「お見事でした!」


 バーンズが手放しで絶賛してくれたが、ヴァレリーとしては嬉しくない。


「こいつらを倒しても、嬉しくもなんともない」


 きっぱりと言い放ち、ぷいっと歩き出す。


「さあ、もうさっさと王宮へ出向いて皇帝の首をねるぞ。どうやらこれ以上は、なにも出てきそうにないからな」


 ずんずん歩き出すヴァレリーに慌ててついてきたバーンズは、しかし声を潜めて言う。


「陛下、まだこのエグランデル城には、残されたもう片方の切り札、インモータルナイトがあるやもしれませぬ――」


 言いかけた途端、ヴァレリーは振り向いて睨んだ。


「おまえは、どこまで愚かな男だっ。そっちは創造主様が手を打たれたと言っただろう! いい加減で、その不信心をなんとかしろっ」

「は、はあ……」


 自分でも信徒には遠い自覚はあるのか、バーンズが剛毛を撫でつけた頭をかく。

 すると、まるで二人の会話を聞きつけたように、遠くから重厚な音がした。


 ……しかも、その音が一定間隔が鳴り響き、ヴァレリー達の足元まで揺れ始めている!





「ほう? インモータルナイトはともかく、他の魔法兵器があったようだな」


 城壁間近の兵舎の方から近付くものを見て、ヴァレリーは呟いた。

 それは、どう見ても今から向かう王宮と同程度の高さがあった。人型をしているが、もちろん人間では有り得ない。

 だいたい、身体を構成するのが岩なのだから。


「ゴーレム……ですか。これは珍しい」


 やってくる巨体を見て、バーンズが唸る。


「私が最後に見たのは、もう先代の魔王陛下の頃ですなあ」


 それどころか、どうもこの城内の兵士達も初めて見たらしい。

 ヴァレリーが展開したマジックシールドの内側でも外側でも、遠巻きにしていた兵士達が口々に喚くのが聞こえたからだ。


 中には「魔族の新兵器かっ」などと喚く奴もいて、ヴァレリーを失笑させた。




「なるほど、味方にも秘密にしていたか。地下にでも隠していたかな?」


 のんびり語る間にも、巨大なゴーレムはズシンズシンと大股に歩みを続け、その足元では兵士達が死にものぐるいで逃げ散っていた。


「浅薄なことで……」


 バーンズが他人事のように言う。


「恐れるべきは魔王陛下なのに、ゴーレムの方に、より恐怖を感じるとは」

「見かけに騙されるのは、なにも人間だけの悪癖ではなかろう」


 ヴァレリーが素っ気なく答えた時には、もうゴーレムは王宮のすぐ近くまで来ていた。


「とはいえ、あいつが倒れた時に王宮まで破壊されては面白くないな……よし、見物はこの辺りにしておこう」


 ヴァレリーは魔力を集中し、巨大なゴーレムを見上げる。





「あまり見くびらずに、まずはレベル80魔法から行くかっ。――クリティカルブロウ!」


 コマンドワードと共にすっとゴーレムを指差すや否や、ヴァレリーから不可視の衝撃波が放たれ、周囲の大気が派手に揺らいだ。 

 次の瞬間、見上げるほど巨大なそいつは、衝撃波を受けてあっさりと巨体を折り曲げ、豪快に宙に舞い上がる。


 そのまま、なんと数十メートルもふっ飛んでいき、呆れるほど綺麗な放物線を描いて、最後は花壇と散歩道ばかりの一画に落ちた。

 ズシィィィンというやたらと重厚な音が二度もしたのが不思議だが、それも当然で、ゴーレムは胴体の真ん中で身体が二つに割れてしまっている。


 しばらくはまだ未練ありげに動いてはいたが、それもすぐに静かになった。

 もはや、単なる邪魔っけな岩の塊×2である。


「次で、さらに上級魔法を使ってトドメだと思ったが、そこまで保たなかったな……見かけ倒しな奴め」


 遠目に眺めていたヴァレリーは、がっかりして首を振った。


「まあ……レベル80魔法が直撃すれば、攻撃内容にかかわらず、私でも生きていられるか自信ありませんが」


 バーンズが苦笑したがヴァレリーはあえて答えず、至近にある王宮をまっすぐに見た。


「もはや、大したものは出て来ないだろう。ここへ来た目的を果たすとしようぞ」

「ははあっ」


 大満足でニヤけまくったバーンズが恭しく一礼、主君の後に続く。

 背筋を伸ばして歩くヴァレリー達がついに王宮の中へ侵入したが……止めようとする兵士は誰もいなかった。 


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