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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第五章 ベルザーグ、既存シナリオを破棄する
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虫けらのように死ね!

 こいつは、なぜかヴァレリーではなく、その後ろのバーンズを見つつ口上を述べた。

 バーンズ本人はあからさまに顔をしかめ、そしてヴァレリーはじろじろと彼らを見た挙げ句、不審な面持ちを見せた。


「……一つ尋ねたいが?」

「聞こうではないか」


 大物騎士ぶりをアピールするように鷹揚に頷く相手に、ヴァレリーは直球で訊く。


「おまえ達はどう見てもそこまで強いとは思えぬが、騎士の中では身分が高いのか? だとすれば、帝国の軍制とは、呆れ果てたものだな」


 静かな口調ではあるが、内容は辛辣である。

 大物ぶっていた先頭の騎士は絶句していたし、あとの二人は憤怒の表情を浮かべていた。


「戦う前からなにを言うかっ。我々は帝国騎士団の上級騎士であり、それぞれが光と風と空を司る部隊を率いる者達だぞっ」

「……なるほど、帝国三騎士というやつだな」


 ヴァレリーとて、敵の情報はそれなりに掴んでいる。

 こいつらの口上が本当なら、彼らは確かに帝国騎士の中でも、最も精強とされる三人だろう。実際に目の前で見て、ヴァレリーはいたくがっかりしたが。




「信じはすまいが」


 それでも一応、哀れになってチャンスをやることにした。


「私はそばで見れば、だいたい本当の強者かそうでないかくらいは判別がつく。そして、おまえ達は私から見れば、弱者だ! というか、ハイラ――いや、帝都のギルドでは、私が注目せざるを得ない戦士がちらほらいたのに、なぜ肝心のここに、こんなのしかいないのだっ」


 しまいには腹が立ってきて言葉がキツくなってしまった。

 黙って聞いていたバーンズが、「やはり、あのギルドへ行かれてましたな?」などと口を挟みむ。

 思わぬところからハイランダー行きがバレてしまい、そのことにもむっとした。


「とにかくっ」


 ヴァレリーはバーンズを無視して語気を強めた。


「今なら見逃してやる! おまえ達は先の弓兵達の運命を見ていなかったようだから、あえて生きるチャンスをやると言うんだっ。己が無力な弱卒であると自覚し、黙って私の前から消えろっ」


 口調の割には、ヴァレリーなりの親切だったのだが、あいにく彼ら三名には通じなかった。そもそも自分達を「無力な弱卒」と言われて、はらわたが煮えくりかえっていた。


 それに彼らは、実はヴァレリーの背後の大男、つまりバーンズを魔王だと勘違いしており、『従者の女ごときがなにをっ』と憤然とした。


 結果、最初に口上を述べた先頭の男を含め、三名揃っていきなり斬りかかってきた。





下賤げせんな女ごときがあっ」

「誰にものを言ってるつもりか!」

「剣のけがれではあるが、斬り捨てるっ」



 対するヴァレリーは侮蔑の表情で一言吐き捨てた。


「ふん? 自分の運命を選択したか」


 次の瞬間――ヴァレリーの姿がその場から消え、ほとんどの疾風のごとき勢いで先頭の男とすれ違った。


「――っ! なっ」


 脇を走り抜けた時には、男の剣を持った右腕が宙に飛び、鮮血が噴水のように吹き上げた。


「うっ」

「馬鹿なっ」


 続く二人が驚いたように足を止めようとしたが、その時には獲物に飛びかかる獅子のように、ヴァレリーが間合いに突入していた。


「愚か者! 戦いの最中にどこを見ているかっ」


 叱声と共に刀が鮮やかに一閃し、銀の軌跡を虚空に刻む。

 一人目の首が飛び、二人目が慌てて剣を構えようとした時には、もうヴァレリーの刀が胸部のブレスアーマーごと、そいつの心臓を貫いていた。


 素早く刀を引き抜き、確かめもせずにヴァレリーがきびすを返すと、二人の騎士は斬られた順番通りにそれぞれ芝生の上に倒れていく。


 確認するまでもなく、二人揃ってもう絶命していた。


「ぐあああああっ」


 ただし、口上を述べた一人目だけは、まだ腕が飛んだ部分を押さえて転げ回っていたが、ヴァレリーはそいつの横に立ち、背中に足を乗せて固定してしまう。

 その上で、冷えた口調で宣告した。


「あえて最初に腕だけ飛ばしたのは、仲間まで道連れにして死に追いやった、貴様の愚かさの報いだ。……しかし、安心しろ。必要以上の苦痛を与える気はない。自分で宣言した通り、虫けらのように死ぬがいい!」


 語り終えた後、ヴァレリーは無造作に背中から刀を突き刺す。


 正確に心臓を貫かれ、彼もその場で絶命し、静かになった。


「あっ」


 刀を抜いた後、ヴァレリーは目をまたく。


「……三人揃って、名前を聞くのを忘れたな」


 すぐに、まあいいかと思った。

 自分が名前を覚えるような値打ちは、全くなかったのだから。 


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