ちょっといい奴でした
どう考えても、前はここまで美少年風の怜悧な二枚目顔ではなかったのだが、がっつり成長したようだ。
ちなみに、ベルザーグ絡みの事件が昔にあるのは、ローランドが将来的には勇者――このゲームにおける名称「ブレイブハート」と巡り会い、そのパーティーに入る運命にあるためだ。
なぜなら、ブレイブハートもまたベルザーグの信徒であり、ローランドが力を貸す伏線になっているわけだ。
ただ、現在シナリオは会議に会議を経て、グダグダのろのろと複数が検討中であり、細かい部分は多くの選択肢が存在する。
よって、本当にその基本シナリオが採用されるかは、未定の段階である。
とはいえ、デザイナーの一郎は、キャラ回想で使われる予定の「母親延命イベント」も、実際にゲーム時間を操作して、イベントチェックで見ていたはずだ。
そのチェックが既に計画初期段階の何年も前だった上に、他にも無数のチェックに追われて、今まで思い出せずにいた。
(だいたい、顔と姿もまるっと変化しすぎだろっ。――と言いつつ、なんかめちゃくちゃ責任感じるな、くそっ。ゲームのためとはいえ、こんな風にキャラが自意識持つと知っていれば、いくらイケメンでも、もっとマシな設定にしてやっただろうしな)
しかし仮に、「母親延命イベント」などを削ったりすると、今の性格を印象づける大きな事件が丸々一つ消えるわけで、プレイヤー達のローランドへの思い入れが、がたっと減る恐れも大なのだが。
それはともかく!
相手が男だろうが、苦手かつ嫌いなイケメンだろうが、こいつは俺が面倒みてやらないといけないっ。
ベルザーグは固く決心して、顔を上げた。
「ローランド、仮に私が『おまえをリーダーとして新たな組織を立ち上げる』と私が言っても、おまえの希望としては一人で活動する方が向いているかな?」
ローランドは息を詰めたような顔でベルザーグを見たが、やがて申し訳なさそうに答えた。
「そう……ですね。ご命令とあらば別ですが、私の希望を正直に申し上げるなら、一人の方が向いている気が致します」
「そうか、よくわかった」
にこやかに言った後、ベルザーグはいきなり話を変えた。
「……ところで、この世界の者はまだほとんど知らないが、このヴィオランディス大陸は今、北と西からそれぞれ、外敵が侵略してきている」
ベルザーグはつい最近、自分が魔族に手を貸し、大陸の北方で見知らぬ国の軍を撃退したことを打ち明けた。
「北から攻められたと思えば、おまえも知っての通り、今度はこの帝国西部地域だ。由々しき事態と言わざるを得ない。しかも、どうやらこの西から攻めてきた連中の方がやっかいなようだ。文明度が明らかに前の連中より上だからな」
容易ならざることを打ち明けられているのがわかったのか、ローランドは未だに跪きつつも、食い入るようにこちらを見つめていた。
それを確かめてから、ベルザーグはおもむろに言った。
「今後、あの飛行戦艦を持つ大敵にはさらなる調査が必要だし、おそらくあの三名の捕虜が最初に証言したことと異なり、あのような巨大兵器も、まだまだ彼女達の本国にあるだろう。あいにく私の創造世界外から来た異教徒達故、私の力も及ばない遠方に、大敵の国はある」
「この私にお任せください!」
打てば響くように、ローランドは語気を強めた。
「我が神よ。このローランド・フィルグラントが調査に赴き、敵の正体や軍備、弱点などの全てを探って参りますっ」
「そうしてくれると助かる。それと、別に畏まらずに一人称は『僕』でいいぞ」
優しく言ってやり、ベルザーグは細々とした注意事項を与えた。
まず、任務に就く前に三名の捕虜や大量に捕まえた一般兵士達を十分に調べ、あらかじめ敵の情報を可能な限り多く得ること。さらに、墜落した飛行戦艦を再び動かすことが可能かどうか、特にあの三名に訊いてみること……等々。
「それを済ませた後、敵国へ潜入を試みてくれ。潜入前の準備のために必要な費用や人員があれば、いくらでも与えるし、便宜も図る。足りないものは私に言えば必ず用意しよう。それと、サポート役として、見た目は人間そのままのホムンクルス達を、必要な人数だけ預ける。感情が希薄なので、気まずい思いはせずに済むぞ」
「な、なにからなにまでありがとうございます!」
本人の希望は最大限に報われたらしく、ローランドの頬はやや赤くなっていた。
「最後にお願いなのですが……」
「なにかな?」
「あの捕虜三名の脱走を僕が阻止した時、地下牢の扉の向こうでは、ベルザーグ様の信徒が警戒中でした。彼のことはよく知りませんが、どうかあの者にもご褒美を賜りますよう……伏してお願い申し上げます。この僕にもし功績があったとすれば、彼の功績は決してそれに劣るものではありません」
「うん、よくわかった!」
低頭するローランドを見て、ベルザーグは内心で大いに感心していた。
胸の中を心地よい風が吹き抜けるような思いであり、「ああ、俺はこいつをもっと早く重用すべきだったな」と大いに反省したのである。




