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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第三章 侵略される世界
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褒美は下ネタ以外で


 ハイランダーへ戻ったベルザーグは、まずエステルを彼女付きのメイドさんに引き渡した後、久しぶりに自宅へ戻り、何も考えずにベッドに倒れ込んだ。


 とうに日付が変わっている時刻である。


 ヴァレリーの帝都攻略はもう明日なのだが、今日は今日でやることがある。

 ギリギリになってしまったが、このヴィルゲリア帝国の東部地方を任せる人材に会う必要がある。

 既にダイレクトコールとマジックボイスの併用であらましは伝えたが、ヴァレリー並の大役を任せる上に、もう一年以上会っていないわけだ。


 そろそろ顔を出してやらないと、あの子の性格からして、拗ねてしまう気がする。




「……そもそも今日は、魔法学校の卒業式だしな!」


 あの子も生まれついての一人っ子だが、エステルと同じく、ベルザーグを父代わりだと思ってくれているはずだ。

 なのに、卒業式をスルーなのはまずいだろう。




 そんなわけで、朝まで眠って気力を養うつもりが――ダイレクトコールが来て、夜中に起こされた。

 これは、ベルザーグが己のサポート役に使っているキャラ達に持たせたマジックアイテムで、緊急の呼び出しがあった印である。


 自動的にステータス画面が立ち上がり、アラームが鳴るのだ。

 叩き起こされたベルザーグは、しかしすぐに浄化の魔法で己自身をリフレッシュし、回線を繋いだ。向こうからは声しか届かないが、こちらは相手の姿も見える。


 見れば……ベルザーグが念のための保険的な意味で、あの飛行戦艦にいたお笑い三人組を、密かに見張らせていた少年だった。


 狭い部屋で、マジックアイテムの水晶を手に恭しく片膝をついている

 確か、名前はローランドと言ったはず。


 正直、ベルザーグ的には苦手なイケメンキャラだったが、こんな夜中に呼び出すからには急用だろう。




「どうしたのかな?」 


 落ち着いて尋ねてやると、いきなり言われた。


『ベルザーグ様の密かなお疑い通り、あの三人は無能を装っておりました』

「……詳しく話してみなさい」


 マジかっという思いを、なんとか声に出さずに済ませ、ベルザーグはローランドを促してやった。

 少年はベルザーグがちゃんと姿を見ていることも知らないだろうに、一層低頭し、要領よく地下牢で見聞きしたことを語ってくれた。

 ルティカという食わせ物の女兵士を、逆に僕の手駒としたいのですが――という要望を含めて、全て。

 その気になれば、創造主の特権として、ベルザーグはバックログの機能を使い、問題の場面を見られるのだが――それすら必要ないほど、彼の説明はわかりやすかった。


「そうか……やはり、私の懸念は当たっていたか」


 ――当たっていたか、ではない。

 本当は「アレがギフトとかスキル的な意味での偽人格だったとはっ。女は油断も隙もないな、ちくしょうっ」と思っていたし、ローランドをこっそり彼女達につけておいたのは、あくまで保険である。


 立場の弱い派遣社員時代の、保身テクの名残なのだ。弱い者こそ、常に先を見据え、まさかのために備える必要がある。

 しかし、そんなこととは思いもしないのか、ローランドの物言いは実に素直だった。


『はっ。ベルザーグ様のご慧眼けいがんに、感服致しました』


 素直にそう述べて深々と頭を下げたのみならず、相変わらず、こっちが見ていることは知らないはずなのに、恭しい態度を崩さなかった。

 ベルザーグの臣下達は創造主である彼に対して、ほぼ全員が絶大な忠誠心を持っているようだが、イケメンだろうと、それは彼も同じらしい。


 いや、むしろ大抵の者より腰が低いように見える。




『改めての尋問はこれからですし、本来ならご報告は朝まで待つべきでしたが、万一を考え、今現在わかった部分までお知らせしました』


「いや、それでいいのだ、ローランド。外敵に関しては、例外なく重要な情報に間違いないし、むしろ躊躇なく連絡してくれたおまえの判断は見事だ。そのルティカについても、望み通りに任せよう。おまえなら、情報源として正しく使いこなせるだろう。それで……前を見なさい、ローランド」


 話しつつ、さりげなく彼のステータスを覗いたベルザーグは、内心で唸った。

 レベルの変遷を見れば明らかだが、この一年で、なんと10レベル以上も向上しているっ。

 レベル65→75というのは、凄まじい進歩ぶりと言える。

 高レベルになればなるほどレベル上げが難しいのは当然であり、レベル1から2になるのとは、全く難易度が違うのだ。


(なるほど、そこまでの向上心を持つか……イケメンだからといって、無闇に毛嫌いするものではないな)


 だいたい、今の自分だってもう一郎の肉体はないので、彼と同類である。

 感心したベルザーグは、向こうにもこちらの顔が見えるように、ステータスに出した通信パネルを「双方向」に切り替えた。


 おそるおそる顔を上げたローランドが、驚いたようにベルザーグを見る。


 キャラの方からは、確か虚空にベルザーグの顔が見えるはずだ。




「大事なことは、きちんと顔を見合わせて話さないとな。……今回のおまえの働きは見事だったし、事前に捕虜の逃亡を防いだ功績は大きい。ルティアを任せる以外に、なにか褒美をあげよう。なにを望む?」

『いえ。そもそも私を彼女達の見張りにつけたのは、ベルザーグ様です。私は労せずして、功を掴んだに過ぎません』


 大真面目な顔で述べる彼は、念のために真偽判定のスキルで試してみても、全く怪しい点はなかった。

 ますます感心したベルザーグはわざと厳めしく申し渡した。


「信賞必罰は、当たり前のことだ。それに、この一年の間の、おまえの密かな努力に対しても、私は手放しで褒めてやりたい。遠慮はいらないから、言ってみなさい」


 途端に、感激したような表情を見せ、ローランドは低頭した。意識高そうな白面の顔が、少し紅潮していた。

 そのまましばらく俯いた後、顔を上げたローランドは恐る恐る述べた。


『……どのような望みでも構いませんか?』

「妥当なものであれば、種類など問わないさ」


 いきなり、処女の女奴隷十人寄越せとか、そっち方面だけはよせよ?


 ほのかな不安を押し殺し、ベルザーグは大仰に頷いた。


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