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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第三章 侵略される世界
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全裸の魔王、鏡を眺めて満足す


「ベルザーグ様っ」

「わかってるとも!? くっ、トリプルマジックシールド!」


 ベルザーグはとっさに、発動までに時間がかからない防御魔法を、効果範囲指定なしで三隻の下に展開した。

 つまり、街と墜落中の巨大飛行船の間にシールドを作り、被害を抑えようとした。


 高度的には、地上数十メートル程度の余裕しかなかったはずだ。


 落下速度からしてタイミング的にはギリギリであり、強力な三重魔法防壁が展開したところへ、三隻がほぼ同時にぶち当たり、大音響が轟いた。

 その後、あちこちから破壊音がした挙げ句、ガラガラとシールド上を転がって落下した。


 街全部をカバーするシールドだったので、街そのものには被害はないが、周辺に次々に落下し、それぞれ船腹を見せて転がったり、無様にも船底を上に向けて落ちたりした。


 地響きがして大地に亀裂が幾つも入ったが、街それ自体は無事だったはずだ。

 遠目に見ても通りで人が右往左往して叫んでいるのが見えるので、大事ないだろう。




「すっ、すごいすごいっ」


 固唾かたずを呑んでいたエステルが、手を叩いて称賛してくれた。


「こんなに広範囲に、しかもあれだけの衝撃を受け止める魔法防壁なんて、エステルだって無理だと思いますっ。さすがは創造主様ですわっ」

「はは……ありがとう」


 片手を上げてエステルの笑顔に応えた後、一転してベルザーグは下界を睨んだ。


「……さて、どんな連中が侵略してきたか、見るとしようか」


 ベルザーグはエステルと共に、飛行船のそばへとゆっくりと降下していく。

 訊きたいこともたくさんあるし、今のひどい墜落にも耐えて、誰か生き残っていて欲しいものだが。





  


 

 命じられた帝都攻略を二日後に控え、魔王ヴァレリーは大峡谷地下の自分の私室で、ベルザーグから贈られた専用バトルスーツを試着するため、全裸で鏡の前に立っていた。


 バトルスーツというのは、昨晩ベルザーグが光臨した時に、こそっとヴァレリーに贈っていた品である。

 ここから帝都までは飛行しても最低半日はかかるので、ヴァレリーは念には念を入れて、今晩には出陣するつもりだ。。

 そのためにも、着心地を今から試さねばならないわけである。


 ……というのはただの言い訳で、ベルザーグに贈られた品を一刻も早く試したかったというのが本音だが。


 彼女が今いるのは、私室の奥に特別に作られた鏡の間で、壁に填め込ませた特注の巨大な鏡と、個人的な入浴設備、それにさらに化粧台のような専用の椅子まである。

 本当の意味での化粧はしないが、側近のダークエルフ達が、彼女の髪を整えたりする時に座るのだ。


 なぜ魔王の座にあってここまで己の外見に気を遣うかというと――ヴァレリーはいたく自分の外見が気に入っているため、手入れを怠りたくないので。


 ナルシスト、というのとは微妙に違う。

 なぜなら、ヴァレリーが自分の容姿を気に入っている理由はただ一つで、この身体と素顔が、元を正せば創造主の手によるものだからだ。


 仮にそうでなければ、基本的に質実剛健を地でいくヴァレリーはとうに「なんだこの、なよっとした顔と身体はっ」と自己嫌悪に陥っていたはずである。


 創造主と言えば無条件にあがめる信心深さと、巨大な愛情を秘めた彼女故に、あのお方の手によって作られた我が身さえ、大いに気に入ってしまったのである。

 それに、知力も高いヴァレリーは魔族や人間、それに他の種族を見ていて、早くに気付いている。



 ――どうも、この世界に存在する生物には、三種類あるなと。



 一番多いのが、ひどく類型的な姿をした者達。人間で言えば、普通の容姿と言うべき者達が、これに当たる。

 ずばっと言えば、平凡な「その他大勢」だ。

 一応、それぞれの区別はつくが、観察しても大きな差はさほどない。

 この世のほとんどの生物は、これに当たるだろう。


 次にぐぐっと数が少なくなって、その他大勢よりかなり個性的な者達。

 飛び抜けた美人や、男の癖に顔の整った者などが、すべてこの枠組みに入る。ただ、数は本当に少ない……びっくりするほど少ない。


 そして最後の三番目、これが最も重要なのだが――。


 誰がどこからどう見ても、「あ、こいつは絶対に他の者とは違うっ」とわかる、圧倒的な存在感を持つ者達である。

 最後にして笑えるほど数が少ないこの類型に入るのが、もしかして自分ではないか? 

 最近のヴァレリーはそう思い始めていた。

 美醜や能力の多寡たか、それに他の様々な面から判断して、自分はこの最も少ない類型に入る可能性が高いような気がっ。


 かなりの部分「そうあってほしい! そうだと嬉しいっ、いえっ、ぜひそうあってください!」という願望まじりではあるが……ヴァレリーはこの時、独自の推論で、ほぼ正解に到達していた。


 今度、創造主様にお尋ねしてみようかとすら思っているが、さすがの彼女も、まだそこまでの勇気は出ない。


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