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無名ゲームデザイナー、ゲーム世界の神となる  作者: 遠野空
第三章 侵略される世界
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エレナ、神の愛を説く

 エレナがまだ「肉体年齢十五歳」だと聞いて、ファニールはその言い方に微かな疑問を覚えたが、実際の驚きはまだまだこれからだった。


 まず、いつの間にか自分が帝都の住民として登録されていたことについては、まだわかる。創造主ベルザーグ様はお優しい方故に、人ならぬ力で手配してくださったのだろうと。


 しかし、住民登録どころか、既に自分用の教会と住居もあると知り、ファニールは驚愕した。





「教会! ですかっ」

「はい」


 エレナはなんでもないことのように頷く。


「今、ファニールさんが使う教会を建てている最中ですが、完成までには時間がかかるので、その間、主不在の空いた教会を選び、ご用意されました。後でご案内しますが、その前に、冒険者ギルドに立ち寄りましょう。――どうかなさいましたか?」


 途中で足を止めたせいか、エレナが不思議そうに首を傾げた。


「い、いえ……我が創造主は、何故にわたしにそこまでしてくださるのかと思い、少しこわくなってきました」

「創造主ベルザーグ様は、ファニールさんに過剰な責任を押しつけようというのではありません」


 通りの中央に立ち尽くしたファニールをそっと道の端に導き、エレナが言い聞かせる。


「この国で初めて、ベルザーグ教を広めようと努力されていたファニールさんに感謝し、貴女に力添えしたいと思われているだけですわ」

「まあ、感謝などど……わたくしのような市井しせいの子供に」


「生まれや身分、それに年齢などは、創造主様の前ではなんの関係もありません」


 エレナにきっぱり言われ、ファニールはふいに恥ずかしくなった。

 それは確かにその通りであり、偉大な創造主が、そんなことで人の価値を決めるはずがない。


「そ、そうですわね……」

「そうですとも!」


 エレナは大きく頷く。


「それに、貴女はこの国で初めてベルザーグ教を広め、教会を建てようとした方ではありませんか。ベルザーグ様から見れば、この国の皇帝より遙かに重要な方ですし、お力添えして当然の方ですとも」


 ベルザーグの中の人である一郎が聞いたら、「おお、なんと俺に都合のよい説明だ。ナイス、エレナ! おまえに任せて正解だったっ」と感動したことだろう。


 なにしろ、一郎は確かに生まれや身分などでは差別しないが――。


 その代わり、性別や自分が直接デザインして設定したキャラと、性格パターンの組み合わせを使って自動生成された量産キャラとでは、あからさまにがっつり差別するからだ。

 我が子が一番可愛い、というヤツである。

 もちろん、ファニールはおろか聡いエレナですら、そんなことは知らずにいる。


 そもそも一郎に創造されたキャラは、彼の愛を一身に受けているせいか、みな総じて一郎を盲信する傾向があるのだ。

 

「あ、ありがとうございます」


 ファニールは過分な言い方をされて真っ赤になってしまったが……まあ、なぜかベルザーグ教の信者を一度も見たことないので、素直に低頭しておいた。


「ちなみにエレナさんは、創造主様を信仰されているんですよね?」

「もちろんでございます」


 嬉しいことに、エレナは大きく頷いてくれた。


「文字通り、私を創造してくださった方ですもの」

「うわあ! わたし、自分以外の信徒に初めてお会いしましたっ」


 喜びのあまり、ファニールは両手でエレナの手を握ってしまった。


「それはお互いにとってようございました。ともに、創造主様の信徒を増やす努力をしていきましょう」

「はいっ。わたし、がんばります!」


 待遇がよすぎて萎縮していた気分がすっかり浮上し、ファニールは再びエレナと一緒に歩き出す。


「ところで、どうして冒険者ギルドに寄るのでしょう」

「今から寄るハイランダーというギルドで、ベルザーグ様が働いておられますので、ご紹介がてら寄ろうかと」


「……はい?」


 せっかく歩き出したのにまた足が止まってしまったファニールに、エレナは辛抱強く説明してくれた。


 創造主がベルザーグというそのままの御名で、冒険者登録していること。

 しかも、ハイランダーの実質的なギルドマスターであること。さらに言えば、この地上で人の姿を借りて光臨し、密かに世界を救うために尽力されていること、等々。


 ファニールにすれば初めて聞く話ばかりであり、まさしく寝耳に水だった。


「わたし、少しも存じ上げませんでしたっ。エレナさんは、以前からベルザーグ様の覇業をお助けしていたのでしょうか」

「いえー、私は創造主様の御手で生み出され、まだ日が浅いですから」


 神秘的な微笑と共に言われたが、おそらくそれは謙遜だろう。

 ファニールは「今後わたしも、この現実世界でもベルザーグ様をお助けできるように、精進しましょう!」と決意を新たにした。


 それに……人の姿で光臨しているベルザーグ様がそのギルドを拠点とされているなら、それはもう、ぜひとも赴かねばならない。


「納得がいかれたようなら、参りましょうか?」

「は、はいっ」


 ファニールは背筋を伸ばし、自分の粗末な服のシワを精一杯伸ばした。

 まさかとは思うが、今から立ち寄ったそのハイランダーで、いきなり光臨されている創造主様と出会うかもしれないのだ。


(仮のお姿とはいえ、いつもお祈りを捧げている創造主様をこの目で見てしまったら、わ、わたしは平静を保てるでしょうか?)


 既に足が震え始めていたし、まだ到着してもいないのに、ファニールははしたなくても生唾を飲み込んでしまった。


 も、ものすごく緊張します!


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